トリアデノウイルスの分類について解説!
前回のコラムでは鶏アデノウイルス由来の封入体肝炎、筋胃びらん、心膜水腫症候群についてご紹介
しましたが、今回はトリアデノウイルスの分類についてお話しします。
トリアデノウイルスの分類
アデノウイルス科は遺伝子的相違によりAtadenovirus属、Aviadenovirus属、Ichtadenovirus属、Mastadenovirus属、Siadenovirus属の5つの属に分類されます。
Mastadenovirus属はヒトやその他の哺乳類(サル、ウシ、ウマなど)に感染するウイルスです。ヒトがかかる咽頭結膜炎(プール熱)や流行性角結膜炎、腸管アデノウイルス胃腸炎などの原因となり、Siadenovirus属は魚類が自然宿主です。
Atadenovirus属、Aviadenovirus属、Siadenovirus属が鳥類に感染するアデノウイルスであり、トリアデノウイルス(AAV)はこれらの総称です。
以前ご紹介した鶏アデノウイルス(FAV)は上記トリアデノウイルスの3つの属のうち、Aviadenovirus属による感染症です。Aviadenovirus属はFAdV-AからFAdV-Eの5種に分かれており、FAdVは中和試験によりFAdV-1からFAdV-11(-8aおよび-8bを含む)12種類の血清型に区別されます。主な病型は封入体肝炎(IBH)、アデノウイルス性筋胃びらん(AGE)、心膜水腫症候群(HPS)です。
Atadenovirus属は産卵低下症候群(EDS)を引き起こす産卵低下症候群ウイルスです。ニワトリ、アヒル、ガチョウを宿主とし、3-8週に渡る一過性の産卵低下、卵殻形成不全卵がみられます。予防は主に不活化ワクチンによって行われます。
Atadenovirus属に分類されるウイルスにはヒツジアデノウイルスD、ウシアデノウイルスD、オポッサムアデノウイルスがあります。
Siadenovirus属は鶏のトリアデノウイルス性巨脾症(CAS)、七面鳥の出血性腸炎、キジの大理石脾病の原因ウイルスです。トリアデノウイルス性巨脾症は死亡や臨床症状が無く、脾臓のみに肥大、大理石模様、白斑などの病変がみられ、食鳥検査にて発見されます。
Siadenovirus属に分類されるウイルスにはカエルアデノウイルスも含まれます。
トリアデノウイルスと鶏アデノウイルス、ややこしですが紐解いてみるとそのややこしさが面白いですね。
参考資料
Diseases of Poultry, 13th Ed. (Swaine, D.E. et al. eds.) John Wiley & Sons, Inc. Publication, Ames, Iowa, 290-300 (2013)
鶏病研究会 鶏のアデノウイルス感染症の現状と対策 鶏病研究会報 55 1-11
鶏病研究会 鶏アデノウイルスの感染症 鶏病研究会報 46 85-94
中村菊保 最近のトリアデノウイルスによる鶏の病態 鶏病研究会報 46 9-14