レジオネラ菌とは?感染の症状や感染経路、事例なども解説
目次
レジオネラ菌とは
レジオネラ菌とは、河川や土壌などの水に生息している細菌のことです。正しくは「レジオネラ属菌」と呼ばれています。
引用元:公益社団法人 日本冷凍空調学会「レジオネラ菌」
レジオネラ菌はアメーバなどの原生動物に寄生して20度〜50度程度で繁殖し、とくに36度前後の温度域では活発に繁殖するとされています。
レジオネラ菌にはおよそ60種類あるといわれており、なかでも「レジオネラ・ニューモフィラ」は、レジオネラ症を引き起こすレジオネラ属菌の1種とされています。
レジオネラ菌に感染した場合、レジオネラ症を引き起こします。厚生労働省と国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所で公表している「感染症発生動向調査週報」においても、レジオネラ菌による感染症が報告されているため、注意するべき細菌の1つといえます。
レジオネラ菌に感染した場合の症状と潜伏期間
レジオネラ菌に感染した場合の症状には、主に「レジオネラ肺炎」「ポンティアック熱」が知られており、それぞれで症状や潜伏期間が変わります。
ここからは、レジオネラ症の症状について、レジオネラ肺炎とポンティアック熱ごとに解説していきます。
レジオネラ肺炎
レジオネラ症の主な症状として「レジオネラ肺炎」が挙げられます。レジオネラ肺炎について、症状や潜伏期間などは下記のとおりです。
概要 | |
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主な症状 | ・初期症状 全身倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉痛 など ・次にあらわれやすい症状 痰の少ない咳、38度以上の高熱、寒気、胸痛、呼吸困難 など ・まれに起こる症状 腹痛、水溶性下痢、意識障害、歩行障害 など |
潜伏期間 | 2日〜10日程度 |
レジオネラ肺炎は、初期症状として「全身倦怠感」「頭痛」「食欲不振」「筋肉痛」などがみられます。そして、「痰の少ない咳」「38度以上の高熱」「寒気」「胸痛」「呼吸困難」など、日を追って症状が重くなっていく傾向があります。
軽症の例もありますが、適切な治療を受けなければ急速に症状が進行することがあり、場合によっては命にかかわる危険もあります。そのため、レジオネラ肺炎の症状がみられた際には、早期診断・早期治療が大切です。
ポンティアック熱
レジオネラ症の主な症状として「ポンティアック熱」が挙げられます。ポンティアック熱の名前については、1968年に米国ミシガン州Pontiacで起きた集団感染事例にちなんで命名されました。
ポンティアック熱について、症状や潜伏期間などは下記のとおりです。
概要 | |
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主な症状 | 突然の発熱、悪寒、筋肉痛 など |
潜伏期間 | 1日〜2日程度 |
レジオネラ菌によるポンティアック熱は、比較的軽度な症状がみられやすいです。突然の発熱、悪寒、筋肉痛などの症状がみられますが、肺炎はみられません。
レジオネラ肺炎とは異なり一過性の症状とされており、2日〜5日程度で自然に治癒します。
レジオネラ菌に感染する経路
レジオネラ菌に感染する経路としては、主に下記が挙げられます。
感染経路 | 概要 |
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エアロゾル感染 | レジオネラ属菌に汚染された細かい霧やしぶき(エアノゾル)を吸引することで感染する。 エアロゾル感染源の例としては、加湿器や循環式浴槽、冷却塔水などがあります。 |
吸引・誤嚥 | レジオネラ属菌に汚染された水を吸引・誤嚥したことで感染する。 吸引・誤嚥の例としては、温泉浴槽内や河川で溺れた際に汚染された水の吸引・誤嚥による感染などがあります。 |
土壌からの感染 | 水だけでなく、土壌が原因と考えられている感染例もある。 例としては、レジオネラ属菌に汚染された腐葉土の粉じんを吸い込んだことで感染したケースが挙げられる。 |
レジオネラ菌に感染する経路としては、吸引・誤嚥や土壌からの感染もありますが、エアロゾル感染が主です。なお、レジオネラ属菌がヒトからヒトへ感染することはありません。
レジオネラ症の発症状況
国立健康危機管理研究機構によるレジオネラ症の発症状況をまとめましたので、参考にしてみてください。
国内発症例 | 18,045件 ※2013年~2023年の期間 |
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発症報告の傾向 | 年中報告はあるが、とくに7月、9月、10月に発症報告が多い。 また、冬から春にかけては報告数が少なくなる傾向があるため、季節変動があるとされている。 |
患者の平均年齢 | 男性:67.6歳 女性:77.2歳 ※乳児の集団感染が報告されたこともあるため、 年齢にかかわらず注意を払う必要がある |
症状 | 肺炎型:94.3% ポンティアック熱型:4.8% 無症状病原体保有者:0.8% |
届出時死亡 | 255例 |
参考:国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイトホームページ「レジオネラ症 2013~2023年」
レジオネラ症の事例
レジオネラ菌による感染症は年中報告されています。とくに7月、9月に報告が多く、温泉への入浴や旅行と関連している傾向があります。
実際に、厚生労働省は入浴施設におけるレジオネラ症の発生事例を公表しています。この事例についてまとめましたので、参考にしてみてください。
届出時期 | 平成26年8月中旬から10月上旬 |
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届出数 | 8名 |
患者の年齢 | 24歳〜66歳 |
行政による検査結果 | 男子内風呂(大)からレジオネラ菌の検出 |
参考元:厚生労働省「入浴施設におけるレジオネラ症集団発生事例」
この報告では、入浴施設の男子内風呂からレジオネラ菌が検出され、24歳〜66歳の男性8名の患者が報告されています。
レジオネラ菌に感染しないための予防法
レジオネラ症はヒトからヒトに感染するものではありません。レジオネラ属菌に汚染されたものであれば、目に見えないほどの細かな水滴であっても感染してしまう可能性はあります。
そして、レジオネラ菌は自然界に広く分布する細菌であることから、周辺から完全に取り除くことは難しいです。そのため、レジオネラ症を予防するためには、感染源となるレジオネラ菌の増殖を防ぐことが大切になります。
家庭でも行えるレジオネラ症の予防法としては、たとえば下記が挙げられます。
- 風呂の湯は毎日入れ替え、浴槽の清掃を行い清潔に保つ
- 浴槽水をシャワーとして再使用することを避ける
- 気泡ジェットなどのエアロゾルを発生する器具の使用を避ける
- 加湿器の水はこまめに取り替え、水道水などの衛生的な水を使用する
- 加湿器は定期的にノズルの清掃やタンクの洗浄を行う
まとめ
レジオネラ菌の感染による症状は通年発生するリスクがあり、とくに7月、9月は多く報告されています。レジオネラ症の症状は主にレジオネラ肺炎とポンティアック熱であり、レジオネラ肺炎の場合は適切な治療を受けなければ命にかかわる可能性もあります。
また、主な感染経路はエアロゾル感染とされており、入浴施設や加湿器などが感染源となる可能性もあるため注意が必要です。
レジオネラ菌自体は自然界に広く分布しており、菌自体を完全に取り除くことは難しいです。「風呂や加湿器を清潔に保つ」など、家庭でも行える予防法はあるため、レジオネラ菌に感染しないための対策を講じておくことが大切です。