夏場の食中毒予防方法とは?|腸管出血性大腸菌 O157について

 

はじめに

私たちの生活に欠かせない「食」。笑顔で「食」を楽しむには安全であり安心できるものであることが必要不可欠です。
特に日本の夏は高温多湿な気候のため、食中毒の発生が多いことが知られています。そこで今回は夏に特に注意すべき「食中毒」についてお話ししようと思います。
 

夏場の食中毒

夏の食中毒は、細菌によるものが多く見られます。代表的な原因菌にカンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌などがあげられます。
本コラムでは、その中でも特に注意が必要な「腸管出血性大腸菌 O157 」について詳しくお話しいたします。
 

腸管出血性大腸菌 O157 とは

大腸菌は、動物や人の腸の中にいて、ほとんどのものは無害です。
しかし、その中には下痢などをおこす病原性大腸菌も存在します。病原性大腸菌は、患者の症状と菌の病原因子(毒素を作る、細胞に侵入するなど)により6つに分類されます。このうち毒素を作って出血をともなう下痢をおこすものを腸管出血性大腸菌といいます。
また大腸菌は、細菌の表面の型などでも分類されており、 O157 とは、157番目に発見された細胞の表面の型を持っていることを意味します。腸管出血性大腸菌には、 O157のほかに、O111、O26などがあります。感染すると、食後3~8日で、激しい腹痛・下痢・下血などの症状が現れ、重篤化すると、溶結性尿毒症を引き起こし、死亡する場合があります。
 

主な感染源は?

主な感染源として以下が挙げられます。

  • 加熱不十分の肉類
  • 殺菌されていない井戸水や湧水
  • 生野菜
  • 生肉を扱った調理器具で調理された食品
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    腸管出血性大腸菌 O157 の歴史と発見

    腸管出血性大腸菌 O157 が初めて注目されたのは、1982年に発生したアメリカでの集団食中毒の時でした。日本では、1996年に大阪府堺市の小学校で発生した大規模な集団食中毒事件により、広く知られるようになりました。また、2011年に焼肉店で発生した腸管出血性大腸菌 O157 による集団食中毒も記憶に新しいところです。
    このように、世界中で猛威を振るう腸管出血性大腸菌 O157 ですが、菌の詳細が報告されたのは1983年でした。
    大腸菌に志賀毒素(赤痢菌が保有する毒素)を産生する因子が入り込んだことで誕生したとされています。つまり、志賀毒素を産生する大腸菌が、腸管出血性大腸菌 O157 です。
     

    食中毒予防のポイント

    腸管出血性大腸菌 O157 を含む細菌性食中毒を防ぐには、以下の基本的な対策が必要です。

  • 調理前に必ず手洗い
  • 生鮮食品はすぐ冷蔵庫へ
  • 食材を中心までよく加熱(腸管出血性大腸菌は75℃で1分以上の加熱により死滅)
  • 生肉と加熱後の肉とで調理器具を使い分ける
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    おわりに

    このコラムを通して、科学が身近な存在になってくだされば幸いです。
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    参考文献
    >>1.腸管出血性大腸菌O157等による食中毒|厚生労働省
    >>2.腸管出血性大腸菌(細菌)[Enterohemorrhagic Escherichia coli] (O157、O111など):農林水産省
    >>3.腸管出血性大腸菌(EHEC):その発見と研究の壮絶な道のり【新しい食中毒細菌研究史3部作・第2話】 | 食品微生物学(検査と制御方法)|基礎と最新情報を解説|木村 凡
     

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