生理中も検便検査は受けられる?検査への影響や正しい対応を解説

健康診断や学校検査などで提出を求められる「検便」ですが、ちょうど生理と重なってしまい「提出しても大丈夫なのか」と不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

 

実際のところ、検便の種類によっては生理中の提出が検査結果に悪影響を与えることもあるため注意が必要です。

 

本記事では、便潜血検査や細菌検査などの検便が生理の影響を受ける理由や、やむを得ず生理中に提出する場合の対処法について解説していきます。

 

生理中の検便は原則として避けるべき

健康診断や学校健診などで行われる検便は、正確な便の状態を把握することが前提となっています。生理中に便を採取すると、経血が便に混入してしまい検査結果に影響を与えるおそれがあります。

 

とくに注意すべきは、「便潜血検査(大腸がん検診など)」を行う場合です。この検査では、便にごく微量でも血液が混ざっていると「陽性」と判定され、内視鏡などの精密検査を勧められることになります。

 

つまり、生理中に採取した便にわずかでも経血が混入してしまうと、実際には異常がなくても「偽陽性(誤って陽性と判定)」と判断されてしまうリスクがあるのです。

 

検便の目的や種類によっても影響の大きさは異なりますが、生理中の検便検査はできる限り避けることが基本と考えておくのが無難です。提出期限がある場合でも、医療機関や検査先に相談すれば延期や再提出が可能なケースも多く見られるため、まずは相談してみるのがよいでしょう。

 

検査内容によっては生理中でも影響が出づらいケースもある

前提として、検便にはいくつかの目的と種類があり、それぞれによって経血混入の影響の大きさは異なります。

 

生理中の検便検査は基本的に避けるのが望ましいですが、すべての検査で血液混入が影響を与えるわけではありません。ここでは主な検便検査ごとに、生理中の影響の程度を整理して解説していきます。

 

便潜血検査(便中ヒトヘモグロビン検査)

便潜血検査は、血液混入が結果に影響が出やすい検査です。

 

便に混入した微量の血液、とくにヒトのヘモグロビンを検出するため、生理中の経血混入で偽陽性となる可能性が非常に高いです。そのため、多くの医療機関や自治体でも「生理中の採便は避けるように」と明示しています。

 

サルモネラ菌・O157・カンピロバクターなどの細菌検査

検便検査はサルモネラ菌・O157・カンピロバクターなどの腸内細菌を検査する目的でも行われます。この検査は、学校や飲食関係の職場で実施されることが多いです。

 

検体を培養して病原菌の有無を調べる方法が一般的ですが、経血混入によって菌の増殖が抑制されてしまい、血液混入によって誤判定となる可能性があります。

 

ただし、便潜血検査とは異なり、血液そのものを検出対象としているわけではないため、少量であれば大きな影響が出ない場合もあります。

 

とはいえ、検査機関によっては「血液混入=再提出」となることもあるため、生理中であれば検便の提出は避けたほうが無難です。

 

生理中に検便を提出せざるを得ない場合の対処法

生理中は検便の提出を避けることが基本ですが、場合によっては「提出期限が迫っている」「職場や学校の都合で延長ができない」など、やむを得ず生理中に提出しなければならないケースもあるかもしれません。

 

そのような場合でも、できる限り正確な検査結果が得られるように対処することが大切です。具体的には下記のような対策が挙げられます。

 

対策 概要
医療機関や検査担当者に生理中であることを事前に伝える 提出先に状況を共有することで、再提出の猶予や検査方法の調整が可能になる場合があります。
また、検査の種類によっては、医療機関側で「生理中であれば再提出の必要がある」「血液混入リスクが高いなら提出しないでよい」のような独自の対応方針を設けていることもあります。
採便時は血液の混入を最小限にする工夫を行う やむを得ず生理中に採便をする場合は、以下のような対応で経血の混入リスクをできる限り下げることが重要です。
・タンポンを使用する
・採便直前に入浴またはおしりをよく洗う
・排便後、清潔なペーパーで丁寧に拭き取る
・採取後は速やかに密封・冷暗所に保管する

 

なお、採便後に「もしかしたら少し血が混ざってしまったかもしれない」と不安を感じた場合、そのまま提出せずに再採取を検討するのが望ましいです。この段階でも、検査機関や医療機関に事情を伝えれば、再検査や別日での対応が可能な場合があります。

 

生理中に誤って提出してしまった場合の対応方法

検便の提出後に「実は生理中だった」と気づいて不安になる方もいるかもしれません。とくに、便潜血検査を受けた場合、便に混入した経血が検査結果にどの程度影響するのかが気になるでしょう。

 

便潜血検査は、腸管からの微細な出血を検出するための検査です。そのため、生理中の経血がわずかにでも混ざっていれば、本来は腸管からの出血がないにもかかわらず「陽性」と判定される可能性が高まります。これを「偽陽性」と呼びます。

 

提出後に生理中だったことに気づいた場合には、できるだけ早く病院・学校・職場などに連絡し、その旨を伝えることが大切です。

 

多くの検査機関では、血液混入の可能性があると判断されれば「再提出」や「再検査」を案内してくれることがあります。また、学校健診や企業健診では、体調変化を想定して予備の検体容器や再提出の期間を設けているケースもあるため、自己判断せず、まずは相談するようにしましょう。

 

一方で、すでに検査結果が返却されたあとに「実は生理中だった」と気づいた場合でも、医療機関にその旨を伝えるのがよいでしょう。便潜血検査の陽性は、経血混入による偽陽性の可能性があると医師も理解しているため、状況を説明することで、再検査の提案や医師の判断に影響を与えることがあります。

 

誤って提出してしまったときに最も避けたいのは、「もう提出してしまったから仕方がない」とあきらめてしまうことです。検便は健康状態を正確に把握するためのものであり、検査の信頼性を守るには、あとからでもきちんと状況を報告することが重要です。

 

生理中の検便に関するよくある誤解

生理中に検便を行うかどうか迷った際、誤解や思い込みによって不適切な判断をしてしまうこともあります。

 

とくに、提出期限が迫っていると「とりあえず出してしまおう」と考えがちですが、検便検査の正確性を確保するためにも、いくつかの誤解を正しく理解しておくことが大切です。

 

タンポンを使えば必ず血液混入を防げるわけではない

生理中に検便を提出する際、「タンポンを使えば血液の混入は完全に防げるだろう」と考える方は少なくありません。

 

確かにタンポンは、経血の外部への流出を抑える点では有効であり、検便時に採便スティックへ血液が直接付着するリスクを軽減する効果が期待できます。

 

しかし、排便時には腹圧がかかるため、タンポンを使用していてもわずかな経血が漏れ出ることは十分にあり得ます。<./span>また、経血が肛門周囲に付着している場合には、便を採取する過程で血液がスティックに付着してしまう可能性も高くなります。

 

つまり、タンポンは「血液混入を防ぐための補助的な手段」でしかなく、完全な防止策とは言えません。「タンポンを使ったから大丈夫」と考えていると、検査結果に影響を与える原因となりかねないため、十分な注意が必要です。

 

出血が少量だとしても検便の検査結果に影響する可能性がある

「出血が少しだけだから、検査には影響しないだろう」と考えてしまう方も多いのですが、これは誤解です。

 

便潜血検査は、主に大腸がんの早期発見を目的として行われる検査で、便に含まれる「ヒトヘモグロビン(血液の色素成分)」を非常に高感度で検出します。

 

そのため、肉眼では確認できないほど微量の血液であっても、陽性反応が出る可能性があるのです。

 

つまり、出血の量に関係なく、生理中の経血がわずかにでも混入していれば、検査結果が「陽性」と判定されるリスクが高くなるのです。

 

偽陽性の結果によって、必要のない精密検査を受けることになる可能性もあり、身体的・精神的な負担につながります。「少しだから大丈夫」という自己判断は避け、検査の性質を理解した上で慎重に対応することが大切です。

 

まとめ

便潜血検査をはじめとする多くの検査では、経血が混入することで検査結果に誤差が生じる可能性があるため、基本的には生理中の検便は避けるのが原則です。

 

とくに便潜血検査は、わずかな血液でも陽性と判定されることがある高感度な検査です。経血が混ざってしまうと、本来出血がないにもかかわらず「偽陽性」となり、不要な精密検査を受ける原因になってしまうことがあります。

 

やむを得ず生理中に提出する場合は、「タンポンを使用する」「肛門周囲を清潔に保つ」など、できる限りの工夫を行って、経血の混入リスクを最小限にとどめることが大切です。

 

また、提出前後を問わず、生理中であったことに気づいた場合には、提出先の医療機関や検査機関に事情を正直に伝えることで、再提出などの適切な対応を受けられることもあります。

 

「少しくらいなら大丈夫」といった自己判断は、正確な検査結果を得るうえで妨げになります。正しい知識をもとに、落ち着いて対処することで、自分の健康を正確に把握し、不要な不安や負担を避けることができます。

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