【JFS-B規格】HACCP 手順8(原則3)許容限界の設定

>>【食品コンサルティング】
 
本要求事項は、各重要管理点について妥当性確認された許容限界を設定しなければならない。となっております。
 
各重要管理点(CCP)で「ここを下回る(外れる)と安全を保証できない」という境界線=許容限界を決めることを求めています。許容限界は“安全かどうかを分ける線”で、日々の目標値やアラーム値とは別物です。
 

1. 許容限界は何を根拠に決める?

基本は次の三つを組み合わせます。

  • 科学的根拠:病原体の低減条件、pHや水分活性(aw)の増殖抑制域など。
  • 法令・ガイドライン:日本の基準や公的資料、業界標準。
  • 自社データ:原料のばらつき、製品サイズ、設備のクセ、過去の製造実績。
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    この三つを使い、妥当性確認(バリデーション)を行って「その数値で本当に安全が守れるか」を確かめてから採用します。
     

    2. 表し方は“だれが見ても同じ解釈に”

    許容限界は、どの場所・どの段階・どの単位で成り立つ数値かを明確に書きます。
    例)「製品中心温度75.0℃以上で60秒」「充填直後のpH4.6以下」「トンネル出口の品温90℃以上」など。
    測定の誤差や工程のばらつきがあるため、現場では余裕が出るよう安全側に寄せた値にしておくのが実務的です(例:規範75℃1分なら、77℃1分を許容限界に採用する等)。
     

    3. 単独条件で足りなければ“組み合わせ”で決める

    製品や設備の特性によっては、一つの数字だけだと安全余裕が不足することがあります。そんな時は複合基準を使います。

  • 時間×温度:90℃×10分 または 95℃×5分
  • pH×aw:pH≦4.6 かつ aw≦0.92
  • 濃度×接触時間:有効塩素0.2-0.4mg/Lで〇秒以上
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    同等の殺菌量(F値・z値等)の考え方を使い、「どちらかを満たせばOK」と定義します。
     

    4. 前提が変われば、許容限界も見直す

    原料産地や季節、配合やサイズ、設備更新、規格改定など前提条件が変わったときは、設定した許容限界を再評価します。新しい科学情報や自社データを取り込み、必要なら数値を更新します。許容限界は一度決めたら終わりではなく、最新の知見に合わせて磨き続ける“設計値”です。
     

    まとめ

  • 許容限界はCCPの安全境界。
  • 科学・法令・自社データで根拠を固め、妥当性確認して採用。
  • 場所・段階・単位を明記し、安全側に設計。
  • 必要に応じて複合基準を用い、前提が変われば見直す。
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    これがJFS-B規格のHACCP手順8に適合した、実務で使える許容限界の決め方です。
     
    次回はHACCP 手順9 (原則4) モニタリング方法の設定になります。
     

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