トキソプラズマ症の症状と影響について詳しく解説
目次
トキソプラズマ症について
トキソプラズマ症は、トキソプラズマ原虫という寄生虫による感染症で、ヒトを含む哺乳類や鳥類、げっ歯類などが罹患します。
ブタが発症した場合、以下の症状が見られることがあります。
※稽留熱・・・最高体温と最低体温との差が1℃以内で、高熱が持続するもの
寄生虫の分類
寄生虫は大きく分けて「内部寄生虫」と「外部寄生虫」に分けられます。
「内部寄生虫」はさらに肉眼で見ることのできる「ぜん虫類」と肉眼で見えない「原虫類」に分けられます。
トキソプラズマ原虫はこの「原虫類」に属します。
トキソプラズマ原虫の3つの形態
トキソプラズマは環境に応じてタキゾイト・シスト・オーシストの3つの形態をとります。
成熟したシストには、数百~数千のブラディゾイド(タキゾイトの前駆体)が内包されています。
外界で成熟して感染力を持つようになります。
成熟したオーシスト内には計8つのスポロゾイト(タキゾイトの前駆体)が含まれます。
また、土壌中で1年以上感染性を維持することができます。
トキソプラズマ原虫の生活環
主に5つの感染経路が存在します。
①終宿主から終宿主へ
②終宿主から中間宿主へ
③中間宿主から終宿主へ
④中間宿主から中間宿主へ
⑤胎盤感染
①終宿主から終宿主へ
トキソプラズマの場合は感染が成立しにくい。
②終宿主から中間宿主へ
中間宿主に摂取されたオーシストは、小腸上部でスポロゾイトを排出し、スポロゾイトは小腸粘膜に侵入する。
侵入後は分裂を行い、1つのスポロゾイトから2つのタキゾイトが出てくる。
タキゾイトは盛んに分裂を繰り返して増殖する。
宿主の免疫を逃れたタキゾイトは組織内でシストを形成し、次の感染に備える。
③中間宿主から終宿主へ
終宿主に摂取されたシストは、小腸で脱シストして内部のブラディゾイトを排出する。
ブラディゾイトは腸管粘膜に侵入し、有性生殖を行い未成熟オーシストを形成する。
未成熟オーシストは糞便とともに排出され、外界で成熟して感染力を持つ。
④中間宿主から中間宿主へ
中間宿主が他の中間宿主を摂取した場合、シストが含まれていると起こる。
シストが小腸に到達すると、シスト内のブラディゾイトが脱出し腸管内に侵入する。ブラディゾイトは分裂によりタキゾイトとなり、腸管から各臓器組織に拡散し増殖する。
⑤胎盤感染
全身の臓器組織で増殖中のタキゾイトが胎盤を通して胎仔に侵入して起こる。
診断
①病理組織学的検査、②血清学的検査、③遺伝子検査によって調べます。
急性感染期では、血液・腹水・胸水から検出されることがあります。
①ギムザ染色または蛍光抗体染色によりタキゾイトを検出します。
②蛍光抗体試験(IFA)、ELISAなどがあります。
③リアルタイムPCRにて定性・定量的に調べることができます。
生死まではわかりませんが、検体中に含まれるトキソプラズマの有無を調べることができます。
対策
ワクチンはありません。
オーシストおよびシストはエタノールや塩素に耐性がありますが、熱や乾燥に弱いです。
終宿主であるネコを入れないことが大切です。
終宿主から排出されたオーシストが感染性を持つまでは24時間程度かかるため、それまでに糞便の処理を行うことで感染リスクを抑えることができます。
罹患したげっ歯類や汚染された水・飼料を摂取した場合も感染につながるので、日々の衛生管理も予防につながります。
治療
スルファモノメトキシン製剤やスルファモイルダプソン製剤の注射をを1日1回、1週間続けることが有効です。