ウイルスを人口的に増やす方法について(発育鶏卵接種)
発育中の鶏胚にウイルスや細菌を接種するプロセスであり、主にウイルスや細菌の研究、ワクチンの開発、病原体の分離・同定などに利用される技術です。
選択する接種部位により、卵黄嚢内接種法・尿膜腔内接種法・漿尿膜上接種法が主な手法としてあげられます。
ウイルスは生きた細胞に感染して増えるという性質がある為、培養には動物・発育鶏卵・培養細胞が用いられます。
現在は培養細胞を用いて分離・増殖させることが多くなっていますが、発育鶏卵接種は技術が確立されて歴史も古く、インフルエンザやニューカッスル病のワクチン製造には現在でも欠くことができない技術となっています。
発育鶏卵とは?
孵卵状態の受精鶏卵をさし、孵化まで大体21日間、使用する卵は通常、SPF卵でウイルスの実験に使用されるのは9日〜11日の鶏卵がよく使用されます。ウイルス接種後の培養は35〜37℃で2〜7日間。接種部位、発育鶏卵日および培養日数は、取り扱うウイルスの種類によって異なるため、研究やワクチン製造の目的に応じて、適切に選択することが重要です。
発育鶏卵接種のプロセス
受精卵の準備
受精後一定期間発育させた鶏卵(主に9~11日間孵化させたもの)を用意する。
卵の消毒
鶏卵の外部をアルコールや消毒液で消毒する。
ウイルスの接種
鶏卵の特定の部位(主に尿膜腔、卵黄嚢、漿尿膜上、羊膜腔など)にウイルスを注射する。
培養・孵化
接種された鶏卵を適切な温度と湿度条件で一定期間孵化器に置き、ウイルスを増殖させる。
収穫
指定の培養期間後、卵内部のウイルス含有液(尿膜液や羊膜液)を採取する。
ウイルスの精製
ウイルスを卵から取り出し、不純物を除去(濃縮や精製)して純粋なウイルス溶液を得る。
廃棄
使用済みの卵やゴミはバイオセーフティ規制に従って安全に廃棄
培養細胞による手法が増えている現在、発育鶏卵接種が課題を残しつつも
重用されてきました。なによりワクチン製造の礎を築いてきた技術であり、伝統的な手法でありながらも、現代のウイルス学や医学会において欠かせない技術として進化しています。
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