食中毒が何時間後に発症するかは原因によって変わる
前提として、食中毒が何時間後に発症するかを断言することはできません。
食中毒はさまざまな細菌・ウイルスなどが原因で起こります。この原因によって「体にどのような症状を起こすのか」「いつ頃発症するのか」が異なります。
たとえば黄色ブドウ球菌では、菌が食品中で作った毒素を食べることで症状が起こるため、食後1〜6時間と比較的早く吐き気や嘔吐が現れます。セレウス菌の嘔吐型も同様に、食品中で作られた毒素が原因となるため1〜5時間ほどで発症します。
一方、カンピロバクターや腸管出血性大腸菌では、体内に入った菌が腸管で作用するまでに時間がかかるため、発症が数日後になることがあります。ノロウイルスも潜伏期間は24〜48時間です。
そのため、症状が出た直前の食事だけで食中毒の原因を断定してしまうと、実際の原因食品を見落とすことにつながりかねません。
食環境衛生研究所では、食品の微生物検査としてサルモネラ、腸管出血性大腸菌O157、カンピロバクター、リステリアなどの検査を行っています。
検査の観点でも、発症時間は原因候補を考える手掛かりの一つにすぎません。食品の種類、加熱・保存状況、症状、同じ食品を食べた人の状況など、複数の情報を組み合わせて考える必要があります。
時間がたっているからといって食中毒の可能性は否定できない
「食後数時間たって症状がなければ安心できる」と考えるのは適切ではありません。数時間以内に発症する食中毒もありますが、数日後に症状が出る食中毒もあるためです。
たとえば、夜に食べた弁当が黄色ブドウ球菌に汚染されていれば、その日のうちに嘔吐や腹痛が出ることがあります。一方、週末に加熱不十分な鶏肉を食べてカンピロバクターに感染した場合、症状が出るのは数日後になることがあります。
そのため、下痢や腹痛などが始まったときは直前の食事だけでなく、少なくとも数日前までさかのぼって「何を食べたか」「生ものや加熱不十分な食品はなかったか」「作り置きを食べなかったか」を振り返ることが大切です。
食中毒を疑うきっかけになりやすいケース
下痢・嘔吐・腹痛などは、食中毒以外の胃腸炎や体調不良でも起こります。そのため、症状だけで食中毒とは断定できません。
ただし、次のような状況が重なっている場合は、食中毒の可能性を考える材料になります。
- 生肉・鶏刺し・刺身などを生または加熱不十分な状態で食べた
- 作り置きの料理や弁当を長時間常温に置いてから食べた
- 牡蠣などの二枚貝や生鮮魚介類を食べた
- おにぎり・弁当・サンドイッチなど、加熱後に手で触れる工程が多い食品を食べた
- 食後数時間〜数日以内に、下痢・嘔吐・腹痛・発熱などが出た
- 同じ食品や料理を食べた複数人に、似た症状が出ている
特に、「同じ料理を食べた複数人に同じような症状が出た」というケースは、共通の食品が原因で食中毒が起きている可能性があります。
一方、自分だけ症状が出た場合でも、食べた量や体調、食品内の汚染の偏りによって発症の有無が分かれることがあるため、食中毒を否定はできません。
また、食品が腐っているかどうかと、食中毒を起こすかどうかは別問題です。腐敗によるにおいや味の変化がなくても、病原菌や毒素が健康被害を起こす量に達していることがあります。
「見た目もにおいも普通だから安全」と判断せず、保存温度や加熱状況も確認するようにしてみてください。
食中毒は何時間後に症状が出るかを食べ物別で紹介
食べ物によって起こりやすい食中毒は変わります。
ここからは、食べたもの別に「起こりやすい原因」「主な症状」「発症までの目安」を紹介していきます。食べたものから食中毒の原因や発症までの目安を確認したいときの参考にしてください。
鶏肉・焼き鳥・鶏刺しで起こりやすい食中毒と発症までの時間目安
鶏肉を食べた後の食中毒では、カンピロバクターなら食後1〜7日、サルモネラなら6〜48時間ほどで下痢・腹痛・発熱・嘔吐など症状が出るのが目安です。
そのため、鶏刺しや加熱不十分な焼き鳥を食べて数日後に症状が出ることもあります。食べた当日に何もなかったからといって、食中毒を否定はできません。
牛肉・豚肉・ハンバーグ・焼肉・レバーで起こりやすい食中毒と発症までの時間目安
牛肉やハンバーグなどで腸管出血性大腸菌が原因の場合、症状が出るまで3〜8日ほどかかることがあります。激しい腹痛や水様便、血便などが主な症状です。
一方、豚肉・豚レバー、イノシシ・シカなどを介するE型肝炎ウイルスでは、潜伏期間は2〜9週間(平均6週間)とさらに長くなります。肉を食べた後の体調不良は、直前の食事だけでなく数日前〜数週間前までさかのぼって確認する必要があります。
卵・卵料理で起こりやすい食中毒と発症までの時間目安
卵で代表的な食中毒原因はサルモネラです。卵や卵料理でサルモネラが原因の場合、食後6〜48時間ほどで嘔吐・腹痛・下痢・発熱などが出ることがあります。
生卵や半熟卵だけでなく、自家製マヨネーズや洋生菓子など、卵を十分に加熱せずに使う食品も原因になることがあります。症状が出た時間とあわせて、卵をどのような状態で食べたかを振り返ってください。
牡蠣・二枚貝で起こりやすい食中毒と発症までの時間目安
牡蠣や二枚貝を食べた後に症状が出るまでの時間は、原因によって大きく異なります。ノロウイルスは24〜48時間、腸炎ビブリオは4〜96時間、貝毒では30分〜数時間程度が目安です。
1〜2日後に嘔吐・下痢・腹痛が出た場合はノロウイルス、比較的短時間でしびれや麻痺が出た場合は貝毒などが考えられます。「牡蠣を食べた」という情報だけでなく、発症までの時間と症状をあわせて確認することが重要です。
刺身・寿司・魚介類で起こりやすい食中毒と発症までの時間目安
刺身や寿司などの魚介類では、原因によって症状が出るまでの時間が大きく変わります。ヒスタミン食中毒は摂取直後〜数時間以内、胃アニサキス症は数時間〜10数時間、腸炎ビブリオは4〜96時間が目安です。
食後まもなく顔のほてりやじんましんが出たのか、数時間後に激しい腹痛が出たのか、半日〜数日後に下痢が出たのかによって原因候補が変わります。発症時間と症状をセットで確認してください。
おにぎり・弁当・サンドイッチ・調理パンで起こりやすい食中毒と発症までの時間目安
おにぎり・弁当・サンドイッチ・調理パンなどでは、黄色ブドウ球菌による食中毒が起こると食後1〜6時間ほどで吐き気・嘔吐・腹痛・下痢などが出ることがあります。
食べてから比較的短時間で急に嘔吐などが始まった場合は、黄色ブドウ球菌が原因候補の一つです。特に、調理後に常温で長時間置かれていた食品や、手で触れる工程が多い食品では注意が必要です。
カレー・シチュー・煮込み料理で起こりやすい食中毒と発症までの時間目安
カレー・シチュー・スープなどでウェルシュ菌が原因の場合、食後6〜18時間ほどで腹痛や下痢が出ることがあります。
夕食に食べた煮込み料理が原因なら、夜中〜翌日に症状が出るケースも考えられます。作り置きした大鍋料理を食べた後にこの時間帯で症状が出た場合は、ウェルシュ菌も原因候補になります。
ご飯・チャーハン・パスタ・焼きそばで起こりやすい食中毒と発症までの時間目安
ご飯・チャーハン・パスタ・焼きそばなどでセレウス菌が原因の場合、嘔吐型は食後1〜5時間、下痢型は8〜16時間ほどで症状が出るのが目安です。
食後数時間以内に吐き気や嘔吐が目立つ場合は嘔吐型、半日ほどして腹痛や下痢が出た場合は下痢型が考えられます。同じセレウス菌でも発症時間が異なる点に注意してください。
生野菜・サラダ・もやし・スプラウトで起こりやすい食中毒と発症までの時間目安
生野菜・サラダ・もやし・スプラウトなどでは、サルモネラなら食後6〜48時間、腸管出血性大腸菌なら3〜8日ほどで症状が出ることがあります。
野菜を食べた直後に何もなくても、数日後の腹痛や下痢が食中毒による可能性はあります。特に激しい腹痛や血便がある場合は、早めに医療機関へ相談してください。
牛乳・チーズなどの乳製品で起こりやすい食中毒と発症までの時間目安
乳製品による食中毒は、原因によって発症までの時間に大きな差があります。未殺菌乳などによるカンピロバクターでは1〜7日、リステリアでは発熱を伴う胃腸炎なら24時間以内、全身性リステリア症では通常20〜30日以内(1日〜3か月)が目安です。
そのため、乳製品を食べた直後だけを確認しても原因を判断できない場合があります。特に妊娠中の方、高齢者、免疫機能が低下している方はリステリア症が重症化しやすいため、体調に異変がある場合は医療機関へ相談してください。
食中毒かもしれないときの対処法
食中毒が疑われるときは、原因を自分で特定しようとするよりも、「脱水を防ぐ」「受診が必要な症状を見逃さない」「原因調査に役立つ情報を残す」の3点を優先してください。
原因菌によっては潜伏期間が数日あるため、記録があると医療機関や保健所が状況を把握しやすくなります。
食べたものと症状が出た時間を記録する
食中毒の原因を考えるときは、症状だけでは十分ではありません。何をいつ食べ、何時間後にどの症状が出たかが分かると、原因候補を絞る手掛かりになります。
できる範囲であっても、次の内容を記録しておくのがよいでしょう。
- 食べた食品や料理
- 食べた日時
- 症状が出始めた日時
- 最初に出た症状と、その後の経過
- 下痢や嘔吐の回数、発熱や血便の有無
- 同じ食品を食べた人にも症状が出ているか
食品の包装や購入店のレシートが残っていれば、捨てずに保管しておくと原因をたどる手掛かりになることがあります。農林水産省も、食べたものの情報に加えて、食品の包装やレシートなどを残しておくよう案内しています。
嘔吐・下痢がある場合は脱水を防ぐ
嘔吐や下痢が続くと、水分だけでなくナトリウムなどの電解質も失われます。そのため、のどが渇いていなくても脱水が進むことがあります。
飲める状態であれば、経口補水液などを一度に大量に飲むのではなく、少量ずつこまめに摂ってください。
一度に多く飲むと、吐き気が強いときには再び嘔吐してしまうことがあるためです。水分がまったく取れない、尿が極端に少ない、ぐったりしているなどの場合は、家庭での水分補給だけで対応しようとせず、医療機関を受診してください。
また、原因によっては下痢止めなどの薬が適さない場合があります。症状が強いときや判断に迷うときは、自己判断で薬を追加せず医師や薬剤師に相談しましょう。
症状がある場合は医療機関を受診する
食中毒の多くは下痢・嘔吐・腹痛などの消化器症状ですが、原因によっては重症化したり、消化器以外の症状が出たりします。
次のような場合は早めに医療機関を受診してください。
- 血便が出ている
- 我慢できないほどの強い腹痛がある
- 嘔吐が続いて水分を取れない
- 尿が極端に少ない、口の中が乾く、ぐったりするなど脱水が疑われる
- しびれ、麻痺、呼吸しづらいなどの神経症状がある
- 高熱が続く、または症状が強くなっている
乳幼児、高齢者、妊娠中の方、免疫機能が低下している方などは、同じ食中毒でも重症化しやすい場合があります。症状が軽く見えても、体調の変化が大きい場合や不安がある場合は早めに医師へ相談してください。
食中毒予防のために細菌などを「持ち込まない」「増やさない」「死滅させる」を心がける

前述したように、食中毒はさまざまな食品が原因で起こります。そのため、特定の食材や料理を避けることだけでは十分な食中毒対策にはなりません。
食中毒を予防するためには、細菌やウイルスなどを「持ち込まない」「増やさない」「死滅させる」という3つを心がけることが大切です。
食中毒を引き起こす細菌などを持ち込まなければ食中毒は発症しません。仮に持ち込んでしまったとしても、細菌などを増やさずに死滅させることで食中毒を予防できます。
ここからは、食中毒予防になる「持ち込まない」「増やさない」「死滅させる」の3つの対策について、具体例を紹介しながらそれぞれを解説していきます。
なお、「今後の予防策」を動画で確認したい方は、こちらをご覧ください。
細菌などを持ち込まないためにできること
食中毒予防として、細菌やウイルスなどを持ち込まないことが大切です。実際に、内閣府大臣官房政府広報室が運営する「政府広報オンライン」でも食中毒予防の1つとして細菌などを持ち込まないことを挙げています。
細菌などを持ち込まないためにできることとしては、具体的に下記が挙げられます。
- 食べる時に消費期限や賞味期限が過ぎないものだけを買う
- 他の食材に細菌などがつかないように、肉や魚などは最後に買う
- 他の食材に細菌などがつかないように、肉や魚はビニール袋に入れる
- 帰宅後は必ず手を洗う
家庭において、細菌などを持ち込まないためには食品の買い物時に注意が必要です。とくに肉や魚は食中毒を起こしやすい食品であるため、ビニール袋に入れて買い物の最後に買うようにしましょう。
細菌などを増やさないためにできること
食中毒予防として、細菌などを増やさないことも大切です。細菌などを増やさないためにできることとしては、下記の対策が挙げられます。
- 持ち帰った食品はすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れる
- 冷蔵庫は10度以下、冷凍庫は-15度以下に保つ
- 他の食材に細菌などがつかないように、肉や魚はビニール袋や容器に入れて保管する
- 冷蔵庫で保管する食べ物も早めに食べる
食中毒を引き起こす細菌の多くは、温度と湿度が高い環境で活発的に増殖します。そのため、細菌を増やさないために、持ち帰った食べ物はすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れるようにしましょう。
冷蔵庫と冷凍庫の温度にも気をつけておくべきであり、目安としては冷蔵庫の場合は10度以下、冷凍庫の場合は-15度以下にしておくと細菌の増殖を抑えられます。
なお、冷蔵庫で保管したとしても、細菌の増殖を完全に止めることはできません。ゆっくりと増殖してしまうため、冷蔵庫で保管する食べ物は早く食べることが食中毒予防となります。
細菌などを死滅させるためにできること
食中毒予防として、細菌などを死滅させることも大切です。細菌などを死滅させるためにできることとしては、下記の対策が挙げられます。
- 調理や食事の前は必ず手洗いをする
- 生野菜は十分に洗う
- 肉や魚は中心部を75度で1分間以上を目安に十分に加熱する
- 包丁やまな板は食材を変えるたびに洗剤で洗う
- 使用した調理器具は洗った後に熱湯をかけて殺菌する
食中毒予防としては、手洗いは有効です。そのため、帰宅した際や調理前、食事前には必ず手を洗うようにしましょう。
また、食中毒の原因食品になりやすい肉や魚を調理する際には、十分な加熱処理が大切です。中心部を75度で1分間以上を目安として、調理するようにしてみてください。
食中毒と食あたりの違いは?
日常会話では「食あたり」と「食中毒」はほぼ同じ意味で使われることが多いです。一方、行政や医療では、食品を原因として細菌・ウイルス・寄生虫・自然毒などによる健康被害が起きた場合に「食中毒」という言葉が使われます。
「食あたり」は病名や原因を特定する言葉ではないため、「食あたりだから軽い」とは限りません。強い腹痛や血便、脱水、しびれなどがある場合は、言葉の違いにかかわらず医療機関へ相談してください。
食後すぐに腹痛が出たら食中毒と考えるべき?
食中毒の可能性はあります。黄色ブドウ球菌やセレウス菌の嘔吐型のように、食品中ですでに作られた毒素が原因となる食中毒は、食後1〜数時間ほどで症状が出ることがあります。
アニサキスやヒスタミン食中毒でも比較的短時間で症状が現れます。
ただし、食べ過ぎ、胃腸炎、食物アレルギーなど別の原因でも食後すぐに腹痛が出ることはあります。「すぐ痛くなった=食中毒」「すぐではない=食中毒ではない」と時間だけで判断しないことが重要です。
昨日や一昨日に食べたものが原因になることはある?
あります。ノロウイルスは24〜48時間、カンピロバクターは1〜7日、腸管出血性大腸菌は3〜8日ほどたってから症状が出ることがあります。今日症状が出たからといって、今日食べたものだけが原因とは限りません。
原因を振り返るときは、直前の食事だけではなく、数日前までの生肉・魚介類・作り置き食品・外食などを思い出してみてください。
同じものを食べても自分だけ食中毒になることはある?
あります。同じ料理でも、食品の中で菌や毒素が均一に広がっているとは限らないため、口にした量に差が出ます。また、年齢、体調、基礎疾患、免疫状態などによっても発症しやすさや症状の重さは変わります。
そのため、同じものを食べた人が元気だからといって、自分の症状が食中毒ではないとは言い切れません。症状が強い、長引く、血便や脱水などがある場合は医療機関に相談してください。
まとめ
食中毒を引き起こす細菌やウイルスなどにはさまざまな種類があり、その原因によって症状は変わります。食中毒の主な症状としては吐き気・おう吐・腹痛・下痢・発熱が挙げられますが、症状が出るまでの期間もその原因によって変わります。
そして、食中毒が疑われる場合、自己判断で薬を服用することは避けてください。薬の服用によって体内の細菌やウイルスが留まってしまい、症状が長期化してしまうリスクもあります。
食中毒の症状が出た際には下痢止めや吐き気止めといった薬を自己判断で服用するのは避けて、必ず医療機関を受診するようにしましょう。
なお、株式会社食環境衛生研究所では、細菌検査やノロウイルス検査を行っています。「症状は出ていないが検査をしたい」「発症から回復に向かっているため検査をしたい」という場合には、当社の食中毒検査を行うことも検討してみてください。


