アスベストの見分け方 「伸長の符号」とは?
偏光顕微鏡でアスベスト繊維を同定する際には以下の項目を観察します。
- 形態
- 色、多色性
- 複屈折
- 消光特性
- 伸長の符号
- 屈折率
今回はこのなかの「伸長の符号」について解説します。
「伸長の符号」とは?
伸長の符号とは、偏光顕微鏡でアスベスト繊維を観察する際に用いられる光学的な特性の一つです。
これは、繊維の一番長い方向と、光が繊維の中をどのように進むか(光の進む速さの違い)によって、異なる色の干渉色(かんしょうしょく)が現れる現象を利用しています。
アスベストの繊維は、一番長い方向に沿って特別な性質を持っていて、それが光と反応して特定の色を出します。
この色の変化から、その繊維がどの種類のアスベストであるかを識別する手がかりとなります。
鋭敏色検板と呼ばれる特殊な板を顕微鏡に挿入することで、繊維が特定の干渉色を示します。
「伸長の符号」の正負
伸長の符号は、繊維の一番長い方向と、光が繊維の中をどのように進むかの関係によって「正」または「負」に分類されます。
伸長の符号の正負で、それぞれの色は以下のようになります。
《伸長の符号が正》
アスベスト繊維の一番長い方向が、光のもっともゆっくり進む方向と平行になる場合です。
クリソタイル(白石綿)が該当します。
《伸長の符号が負》
アスベスト繊維の一番長い方向が、光のもっとも速く進む方向と平行になる場合です。
クロシドライト(青石綿)が該当します。
「伸長の符号」正負の色
伸長の符号の正負で、それぞれの色は以下のようになります。
《伸長の符号が正の繊維》
北東―南西方向(視野の右下から左上に向かう斜め45度の方向)
に繊維が傾いている場合
⇒青緑色
北西―南東方向(視野の左下から右上に向かう斜め45度の方向)
に繊維が傾いている場合
⇒橙黄色
《伸長の符号が負の繊維》
北東―南西方向(視野の右下から左上に向かう斜め45度の方向)
に繊維が傾いている場合
⇒橙黄色
北西―南東方向(視野の左下から右上に向かう斜め45度の方向)
に繊維が傾いている場合
⇒青緑色
このように、アスベストの種類によって「伸長の符号」が異なるため、偏光顕微鏡と鋭敏色検板を用いることで、肉眼では判別が難しい非常に細いアスベスト繊維を正確に同定することが可能になります。
【実際の偏光顕微鏡写真】
画像左:伸長の符号が「正」
画像右:伸長の符号が「負」