魚類に潜む寄生虫の種類について

海水や淡水中の魚にも、多種多様な寄生虫が存在します。
今回はその一部を挙げていきます。
 

①鞭毛虫類

病名アミルウーディニウム症
病原体Amyloodinium ocellatum デンプンベンモウチュウ
宿主宿主特異性低い
概要鰓、体表、鰭に寄生し、肉眼的に微小な白点状の虫体が認められる。
コショウをまぶした様な点として虫体が見られる。
古くから知られ、水族館など陸上飼育施設での被害が大きいが、海面養殖場でも発生する。鰓に多く寄生し、組織造成や炎症、壊死を引き起こすため、魚は酸欠により死亡する。

 

②繊毛虫類

病名白点病(海水魚)
病原体Cryptocaryon irritans シオミズハクテンチュウ
宿主宿主特異性低い
概要鰓、体表、鰭に寄生し、肉眼的に白い点として認められる。罹病魚は、体を物に擦りつけるといった行動がみられる。重篤になると遊泳が不活発になり、水底で動かなくなり死亡する。
病名スクーチカ症
病原体Miamiensis avidus マイアミスクーチカセンモウチュウ
Pseudocohnilembus spp.  Tetrahymena spp. Uronema spp.
宿主ヒラメ、イシビラメ、マグロ、ハタルイ 他
概要病原体が体表や体内で増殖するため、時に多くの被害を出す。一度蔓延すると自然に終息するまで死亡が続く厄介な疾病である。原因寄生虫は複数種存在し、同定がなされていない種も多い。
病名トリコジナ症
病原体Trichodina spp. トリコジナ属
宿主宿主特異性低い
概要体表・ヒレ・鰓の上皮面に寄生。生体防御機能が低下した際に大量繁殖し、急激な遊泳や跳躍などの異常行動を起こす。また、粘液が大量に分泌される。
病名グルゲア症
病原体Glugea plecoglossi  アユグルゲアビホウシチュウ
宿主アユ
概要腹腔内にシストが形成され、重篤感染の場合は腹部膨満を呈する。死亡率は高くないが、商品価値を失わせるため、問題となる。
病名べこ病
病原体Microsporidium属 ビホウシチュウ
宿主ブリ、マダイ、クロマグロ、ホシガレイ 他
概要体側筋肉中に形成されたシストが出荷時まで残存すると商品価値を低下させる。近年、特にブリ類で重篤感染が発生しており、稚魚では死亡する場合もある。病名はシスト形成後の一時期にみられる体表の凹凸に由来する。
病名やせ病
病原体Enteromyxum leei  ハチノジホウシムシ
Sphaerospora fugu  フグタマホウシムシ
宿主宿主特異性低い
概要トラフグ他多くの海産魚でみられる疾病である。腸管に粘液胞子虫が寄生することで、罹病魚は急激にやせて死亡する。魚から魚へと水平感染するため、一度発生すると大きな被害を起こす事もある。
病名クドアセプテンプンクタータ
病原体Kudoa septempunctata ナナホシクドア
宿主ヒラメ
概要ヒラメの筋肉に寄生する粘液胞子虫で、感染魚の生食による食中毒事例が発生したため、大きな社会問題となった。粘液胞子虫が人体に害を及ぼす事が本虫により初めて明らかとなり、現在様々な研究がなされている。
病名ハダムシ症
病原体Benedenia
宿主宿主特異性低い
主にブリ、ヒラメ、トラフグ、マダイなど
概要海水魚類の体表に寄生するカプサラ科の単生類を一般的にハダムシと呼ぶ。古くから知られており、海面養殖の慢性的疾病となっているが、ハタ類などの陸上飼育施設でも被害がある。
二次感染なども引き起こすため、万病の元ともいえる。
病名エラムシ症
病原体Bivagina tai マダイソウチツムシ  Heteraxine heterocerca ブリエラムシ
Zeuxapta japonica ニホンフセイチュウ Microcotyle sebastis クロソイコガタツカミムシ
宿主マダイ、ブリ、カンパチ、クロソイ
概要元々はブリに寄生する Heteraxine heterocerca をエラムシと称していたが、現在では鰓に寄生する多後吸盤目の単生類の総称として用いられる。魚種によって寄生する種が異なり、種類も多い。死亡率は高くないが、多数寄生すると肥満度の低下につながる。
病名ギロダクチルス症
病原体Gyrodactylus
宿主500種以上の淡水魚・海水魚 ※宿主特異性高い
概要体表・鰭・鰓に寄生する。目立った外観症状はなく、大量寄生されなければ問題にならない。
大量に寄生されば場合、粘液分泌量の増大や上皮細胞の増生を引き起こし、鰓の斑点状うっ血や体表の出血を伴って死亡する。
胎生で繁殖し、成虫の子宮内で仔虫が繁殖し、仔虫の子宮内にさらに孫虫が見られることがある。(別名「三代虫」とも呼ばれる)
病名吸虫性旋回病
病原体Galactosomum sp. ナガサキウミネコキュウチュウ
宿主イシダイ、ブリ、トラフグ
概要脳に吸虫のメタセルカリア幼虫が寄生するため、魚が水面付近で旋回する異常遊泳を引き起こす。寄生した魚を、終宿主である海鳥に捕食されやすくするための寄生虫の操作によるものと考えられる。発生海域が限られる風土病的な疾病である。
病名住血吸虫症
病原体Cardicola orientalis クロマグロジュウケツキュウチュウ
C. Opisthorchis   ホソナガマグロジュウケツキュウチュウ
Paradeontacylix grandispinus オオトゲカンパチジュウケツキュウチュウ
P. Kampachi  カンパチジュウケツキュウチュウ
Psettarium sp. シナフグジュウケツキュウチュウ
Psettarium sp. ニホンフグジュウケツキュウチュウ
宿主マグロ類、ブリ類、トラフグ類
概要血管内に寄生する吸虫類を住血吸虫(血管内吸虫)と呼ぶ。血管内で産卵するため、虫卵が毛細血管に詰まって血行障害を引き起こす。複数魚種で知られているが、未同定種も多い。近年ではマグロ養殖で大きな問題となっている。
病名アニサキス感染症
病原体Anisakis spp.
宿主宿主特異性低い
概要様々な海産魚に寄生するが、魚への外観症状や病害性は低い。アニサキス幼虫が寄生している魚やイカを人が生食すると、虫が胃壁等に潜りこみ、急性胃腸炎を引き起こす。
また、アニサキスによるアレルギーも知られており、この場合は食材を加熱、冷凍しても発症する。
病名ブリ紐線虫
病原体Philometroides seriolae ブリヒモセンチュウ
宿主天然ブリ 養殖ブリはまれ
概要春先の大型天然ブリの筋肉中にみられる、50cm にも達する大型の寄生虫である。ブリ糸状虫またはブリ皮膚線虫とも呼ばれ、魚肉中の異物として問題になる。

 
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参考資料

  • 「魚病情報資料令和3年3月」 公益社団法人日本水産資源保護協会 p46-113
  • 「魚病学」監修者:児玉 発行者:森田 2015年4月1日 第2刷発行 p114-140
  • 「新魚病図鑑」監修者:畑井、小川 発行者:森田 2011年12月10日 第2版第1刷発行
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