【有機酸】酢酸とは?
有機酸とは
有機酸は酸性の有機化合物の総称として使われています。酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸など炭素原子を含むものが有機酸です。それに対し、塩酸、硫酸、硝酸などの炭素原子を含まないものが無機酸です。
有機酸のなかでも酢酸は、生活に身近な成分で、体に良いことが知られています。今回は酢酸について紹介します。
酢酸の効能
酢酸は、お酢の主成分(すっぱさである酸味)として知られています。
お酢(酢酸)にはたくさんの効能があることも報告されています1)。
① 食後の血糖値上昇を抑制する
② 内臓脂肪減少(肥満対策)
③ 高血圧予防
④ 運動後疲労感の軽減
食品添加物としての酢酸
酢酸は、食品添加物としても使用されています。
そのまま「酢酸」として使用されることもありますが、「酢酸ナトリウム」や「氷酢酸」の状態でも使用されています。
酢酸
酢酸濃度が約30%の水溶液。
酢酸ナトリウム
酢酸と水酸化ナトリウムで作られ、無水物と三水和物があり、どちらも水によく溶けます。弱酸と強塩基による塩のため、水溶液は弱アルカリ性を示します。
氷酢酸
一般に酢酸濃度が90%を超えるものを氷酢酸と呼びます。食品添加物として使用されるものは酢酸濃度が99%を超え、低温で凍ります。
添加物としての酢酸は、主に下記の用途で使用されています。
ソース類、マヨネーズ類、酢漬け、魚介練り製品、パン、おにぎりなど多くの加工食品に利用されています。
法令により、複数の機能を持つ食品添加物については主な使用目的のみを表示することになっています。そのため、日持ち向上剤として使われる場合は物質名の「酢酸」または「酢酸ナトリウム」と表示され、酸味料およびpH調整剤の場合は一括表示が認められているため、物質名は表示されません。
また、酢酸には細菌の繁殖を抑える効果がありますが、一般的な保存料より効果は低く、保存料として分類されません。そこで保存料を使用せず、酢酸を使用することで「保存料不使用」と表示することができます。商品イメージの向上が図れるため、酢酸が使用されることが多くあります。
酢酸の製造
酢酸はアルコールを原料とし、カティバ法2)と呼ばれるイリジウム触媒を使用した合成法で造られます。このアルコール原料に使用されるトウモロコシや廃糖蜜(サトウキビの搾りかす)は、遺伝子組み換え作物である輸入品の可能性があります。市販で安く売られている食酢には、この合成法で作られた酢酸が使用されています。
食酢の製造
天然醸造の米酢は、お米を原料に発酵・熟成させて製造し、酢酸の他にもさまざまな有機酸が含まれます。この米酢から酢酸のみを単離、精製することは困難です。
通常米酢はお米100%で作ったお酢を純米酢といい、1リットルにつきおおよそ120グラムのお米が必要となります。しかし、日本農林規格により、米酢の定義は1リットルあたり40グラムのお米を使用していればよいと定められています。この規格に近い条件下で、安価な合成酢を混ぜれば低コストでお酢として販売することができます。これが市販のお酢が安価で販売されている理由です。米酢の原料にアルコールが含まれている場合、合成酢が混ぜられ、遺伝子組み換え作物を使用していると考えられます。
純米酢と合成酢の違い
遺伝子組み換え作物を使用している合成酢は、安全面で不安に感じる方もいると思います。しかし、合成酢をつくるには、遺伝子組み換え作物からアルコールを抽出・精製し、さらに化学反応を経て合成・精製されます。この過程で遺伝子(DNA)が残存することは考えにくいです。実際に『酒類におけるとうもろこし由来DNA の残存分析に関する研究』3)では、残存DNAが検出されないことが確認されています。遺伝子組み換え作物使用ということで、安全面にはさほど心配する必要はないように思います。
しかし、麹菌でアルコール発酵し、酢酸菌で酢酸発酵して造られる純米酢は、酢酸のみではなくクエン酸、リンゴ酸など多くの有機酸をはじめ、うまみ成分が加わっています。味や効能といった面では、純米酢にはかなわないでしょう。
そのため、合成酢で造られた安い酢には、化学調味料など別の添加物を加えることがあります。これは酢酸とはまた別の点で気にする必要があるかもしれません。
>>1.運動後に感じられる身体的な疲労感の自覚の軽減│酢の力│ミツカングループ企業サイト
>>2.カティヴァ 酢酸合成プロセス Cativa Process for Acetic Acid Synthesis | Chem-Station (ケムステ)
>>3.酒類におけるとうもろこし由来DNA の残存分析に関する研究
有機酸を含む栄養成分検査はこちら → 『栄養成分分析・検査』
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