食品の異物混入について

春先になるにつれ、弊社への依頼件数が多くなる検査の一つに、混入昆虫の鑑定というのがあります。実際的には、建造物の密閉性が高くなっていることや、餌となる食品などが豊富にある状況から、年間を通して昆虫混入の危険性は一定の水準を保っていると考えられますが、やはり気温が上昇してくる春先から夏、秋にかけて昆虫全般の出現率、混入の危険性は高いようです。

昆虫の混入も含めて、一般的に業界で言う「異物」とは、生産、貯蔵、流通の過程での不都合な環境や取り扱いによって、食品中に侵入したあらゆる外来物を言います。ただし、外来物以外でも製造や保存過程において、内部に発生した固形物なども「異物」としての取り扱いを受けます。

例えば、加熱の際にできる「こげ」やワイン中にできる「結晶」、そして、カビが増殖しコロニーを形成した状態で発見された場合などです。つまりは、正常な製品と比較して異なるものが混入しているように判断された場合に「食品の異物混入」となります。

さて、具体的に「食品異物」となりうるものには、どのようなものがあるのでしょうか。その具体的な分類を以下に示します。

  • (1) 動物性異物:昆虫・クモ・ダニなど、動物・鳥類の体毛、動物由来の排泄物など
  • (2) 植物性異物:種子、植物の断片(木片、わらくず、もみがら等)、繊維など
  • (3) 鉱物性異物:小石・土砂など、ガラス・陶磁器・セメント・金属・プラスチック・ゴムなど

これらの中には、必ずしも有害と言えないものも含まれますが、正常な食品と比較して異なるわけですから、その製造や保存の過程に何らかの問題点があることを示し、有害ではないから問題は無いだろうと言うことは出来ないのです。

実際的な例を挙げると、ある食品に髪の毛が混入していた場合、混入後に加熱殺菌などがされている製品であれば、髪の毛を原因とする微生物の増殖は考えにくいですし、髪の毛を口にしたところで病気になることは、まずないでしょう。
しかし、いくら病気にならないからといって、食品から髪の毛が出てくることに不快感を抱かない方は、いないのではないでしょうか? また、髪の毛の混入を許した生産ラインで、より危険性の高い異物混入が発生することは、大いに考えられることです。

現在の食品業界は「安全・安心・おいしい」ということが大前提であると考えられています。異物混入に対しては、どの会社の品質管理部門も頭を悩ませていることかと思いますが、もしも自分が食べたときに・・・という消費者の側に立った考え方を、従業員に徹底し、一つでも異物混入を減らす努力をしなければならないのではないでしょうか。

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