獣医師会年次大会(宮崎)

豚の細菌性肺炎に対するツラスロマイシンの2次選択薬としての有効性について

1次選択薬(フロルフェニコール注射剤:FFC、硫酸カナマイシン注射剤:KM、塩酸リンコマイシン注射剤:LCM、アンピシリン注射剤:ABPCまたは塩酸オキシテトラサイクリン注射剤:OTC)による治療が無効であった肺炎発症豚に対して、ツラスロマイシン(TLM)注射剤による治療試験を行い、良好な結果を得たので報告する。

本試験は、2008年1月から2月にかけてActinobacillus pleuropneumoniaeおよびPasteurella multocidaによる細菌性肺炎の発症が確認されている群馬県下の計3農場で実施した。直腸体温39.5℃以上を呈し、呼吸状態スコア(0,1,2,3の4段階)、発咳スコア(0,1,2の3段階)、活力スコア(0,1,2の3段階)、食欲スコア(0,1,2,3の4段階)および体温スコア(0,1,2,3の4段階)の合計(合計臨床スコア)が5以上を呈した豚60症例を5群に割付し、1次選択薬(FFC、KM、LCM、ABPCまたは OTC)を2日間投与し、最終投与翌日の合計臨床スコアにおける評価(投与前と比較し70%以上の減少を有効と判定)において有効性の認められなかった豚で、かつ直腸体温39.5℃以上かつ合計臨床スコア5以上であった32頭に対してTLM 2.5mg/kg用量を単回筋肉内投与し、投与前(0日目)と投与3あるいは7日後の合計臨床スコアの比較により評価を行った。

その結果、TLM投与3日後の臨床評価において、FFC群37.5%(8頭中3頭)、KM群28.6%(7頭中2頭)、LCM群71.4%(7頭中5 頭)、ABPC群80.0%(5頭中4頭)およびOTC群60.0%(5頭中3頭)が有効と判定され、平均有効率は53.1%(32頭中17頭)、 7日後の臨床評価では、FFC群50.0%(8頭中4頭)、KM群57.1%(7頭中4頭)、LCM群71.4%(7頭中5頭)、ABPC群100%(5 頭全頭)およびOTC群80.0%(5頭中4頭)が有効と判定され、平均有効率は66.7%(32頭中22頭)であった。

以上の成績から、豚の細菌性肺炎においてFFC、KM、LCM、ABPCおよびOTCの無効症例に対し、TLM注射剤が二次選択薬となり得ることが確認された。

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