農場に発生した異常子豚(一例)の報告

今回、ある農場で初産母豚から異常子豚が発生したとの連絡を受け、その対応と原因について相談を受けた事例の紹介をしたいと思います。


発生農場の概要

母豚150頭の一貫農場。
ハイブリッド系種豚を導入。畜舎の関係で導入月齢が高い。馴致期間が殆ど無く交配。子宮内膜炎、無乳症状、乳房炎等の発生も目立つ。

発生数

今回の発生は1グループの初産母豚へ集中し、1腹の子豚全頭に発生した。

発生症状

分娩後の子豚に全身性の浮腫症状、チアノーゼ症状が見られ、分娩直後〜2日以内に殆どが死亡した。死産も認められた。

検査結果

弊社に依頼された異常産胎子の脳や諸臓器からベロ毒素産生大腸菌、K88因子が多量に分離された。


今回の症例で考えられる他の原因

(1)心疾患や腎疾患異常
(2)リボフラビン欠乏症
リボフラビン欠乏症の母豚から生まれた子豚は先天性の皮下浮腫を示すことがあり、主に前肢にみられます。妊娠時の栄養素の摂取不足が考えられます。
リボフラビンの養分要求量 3.75mg/kg
(3)クラミジア症
通常は発症を伴わない不顕性感染を呈しますが、ストレスが加わると呼吸器系の異常、発熱、消化器系の異常、運動器系の異常、神経系の異常、泌尿・生殖器系の異常(流産胎子の皮下浮腫、死産、虚弱胎子)など多様の症状を示す伝染病です。
流産胎子には顕著な皮下浮腫や粘膜の点状出血および多量の腹水がみられます。治療にはテトラサイクリン系薬剤がもっとも有効で、再発防止や排菌阻止のためには、21〜45日間の長い投与が必要です。
(4)子宮内膜炎
大腸菌などにより起こる子宮内膜炎により、胎子からの水分等の吸収が不完全で、胎子期に浮腫が起こることも考えられます。


指示した対応方法について

①導入入計画を見直し、6ヶ月の導入月齢を5ヶ月齢頃に早める。
(2)初回交配月齢を見直し、7ヶ月齢の初回交配月齢を8ヶ月齢以降(体重140kgを目安)の交配に延長する。
リボフラビンの養分要求量 3.75mg/kg
(3)今まで行っていなかった馴致プログラムの実施。(導入豚舎内、ワクチン、薬剤を含む)
(4)冬季間の寒さや夏季間の暑熱被害が著明であり、床面の不衛生も目立っていた導入豚舎の飼養環境を改善する。
(5)飼料こぼし、床面の水濡れ、通路や飼槽の汚れが目立っていた妊娠ストール舎の飼養環境を改善する。
(6)初産母豚グループを飼養している豚房スペースが、畜舎の端になりやすい構造になっていて出入口やカーテン側からの風当たりによる影響を受けやすくなっていたので、出入口やカーテン下側の風除けの設置と、初産母豚の飼養スペースの移動を行って貰った。
(7)未経産豚、初産母豚への大腸菌ワクチンの使用。
(8)大腸菌ワクチンを接種した群の分娩までには時間がかかるので、当分の間は初産産出子豚へのニューキノロン系薬剤の注射を実施。(生後1日齢頃)
(9)種豚群への大腸菌対策用機能性資材の採用。


現在の状況について

今回農場側の協力で上記対応の(1)〜(9)まで行って貰った結果、今回の症例の発生は治まった。
又、今まで発生していた初産母豚の様々なトラブルもその発生数が明らかに減少しているとの報告を受けました。

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