日和見感染症の考え方

全国的に日和見感染症と言われる病原体が原因の慢性疾病が増加している傾向にあります。

このこともあってかこの頃よく質問されることがあります。『連鎖球菌とかパスツレラって特に問題になる菌では無いよね?』

確かにどちらの菌も発病や感染には日和見的な要素があり、PRRS、サーコ、オーエスキー、ヘモフィルスなどに比べると発病に対する派手さはないかもしれませんがはたして問題は無いと侮っていいのでしょうか?

今回は実際に質問のあった事例を踏まえながら、連鎖球菌やパスツレラについて考えて見たいと思います。

不安定な気候が継続していた時期にとある農場主から連絡が入りました。『死亡原因と対応方法がわからないので来て欲しい』との内容でした。

農場に伺ったときに検査結果報告書(途中経過)をもとに質問を受けました。その検査結果には『パスツレラA型、連鎖球菌陽性』となっていましたが、コメントには『未だ明確な死亡原因が分離されていません。もうしばらくお待ちください。』と記載されていました。実際にこの農場では初回の検査を行ったときからすでに1ヶ月以上の月日が経過し被害も続いていました。

とりあえず被害を止めることが急務になりますので、経過中の検査結果と農場の管理状況から判断して連鎖球菌感染症とパスツレラ性肺炎症状と判断して対応を組みました。その後の経過も良く事故も止まったとのことでしたので安心しています。 

 

農場の概要

100頭一貫経営。LWD生産。労働は家族3人。連続生産方式。開放豚舎。生後50~60日齢頃の事故が多発。昨年の12月頃から徐々に事故が目立ち今年の春先に急増。PRRSは陰性農場。サーコ2型は陽性農場で子豚へのワクチン接種は行っている。定期的な検査は行った事が無く、その都度様々な機関に依頼していた。

 

取り組んで戴いた対応

   種豚群へのワクチンプログラムと薬剤プログラムの手直し。

   子豚群へのワクチンプログラムと薬剤プログラムの手直し。

   分娩舎管理プログラムの手直し。

   洗浄・消毒プログラムの手直し。

   子豚舎の環境管理(保温、保湿、飼料、飲水)の改善。

 

最終の検査結果が届いたのはそれから1週間後で、結果には『明らかな死亡原因は確認できませんでした。』と記載されていました。

 

今回の事例で思うことは如何に早い判断と対応が出来るかだと思います。今後も優秀な管理技術やワクチンなどが取り入れられて大きく派手な疾病の発生は少なくなってくると思いますが、その一方で日和見的にジワリジワリと蔓延ろうとしている連鎖球菌やパスツレラなどの感染症も忘れずに”怖い存在”として認識していくことが重要なのだと思います。

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