カビの害

  皆さんはカビの害についてどう感じているでしょうか。意外にそれほどの被害はないよと思っている方や、カビの害なんて夏季だけでその以外の季節は関係ないよと思っている人もいるかもしれません。しかしはたしてそうでしょうか?

今年は湿度も高く、カビや細菌や害虫などにとっては非常に過ごしやすい気候になっています。又、異常気象と言われることも珍しくなくなった気候変化やウインドレス畜舎の普及、畜舎の老朽化などもあり、確実に全ての季節に影響を与えている存在となっています。今回は生産成績の影響に無視できない存在となっているカビの害についてお話させて戴きたいと思います。

 

サイレンサ―としての認識(いつの間にか汚染が広がっている)

 

 カビやカビ毒の汚染は臭いや腐敗で判断できると思っていたら危険です。当然、如何にも腐敗や変敗している飼料なら当たり前ですが、このレベルになってからの判断では遅過ぎます。カビの害で厄介なのはそのカビが生成する”カビ毒”による影響です。このカビ毒自体は無味無臭のため農場内で気が付かないうちに、飼料タンク、飼料ライン、飼料ホッパー、給餌器、畜舎など至る所に汚染の輪を張り巡らします。カビ毒に汚染されると、生産成績の低下や薬剤やサプリメントなどの効果も表れにくい状態に陥る危険があります。

 

豚へ影響するカビとは

 

豚は主に赤かびが生成するカビ毒の影響を受けやすくなっています。

赤かびが産生するカビ毒にはトリコテセン(デオキシニバレノ―ル等)、ゼアラレノン、フモニシンがあります。

 

カビ毒が豚に与える影響とは

 

トリコテセン(デオキシニバレノ―ル等)は食欲低下、嘔吐、下痢、免疫障害、壊死、耳介の出血などに影響すると言われています。ゼアラレノンは外陰部腫大(母豚、子豚)、流産、乳腺の腫れ、乳頭発赤(子豚)、股開き症(子豚)に影響すると言われています。フモニシンは肝機能障害、肺水種などに影響すると言われています。

 

カビ毒の対応とは

 

対応

    ①購入飼料の再確認。トランスバックで購入している飼料は注意が必要。 

      配合飼料に混合する資材で、水分含有量の多い商品や水分を引き込  

      み易い商品の投入にも注意が必要。

②購入ローテーションの再確認。2タンクある農場は必ず1つを空にしてか 

  ら購入する。1タンクの農場はタンク内に飼料がなるべく残らない状態で

   購入する。(タンク内での消費期限は1週間以内)

③飼料タンクはこまめに清掃、消毒を行う。ただし、行う前には必ずメーカ

   ー(飼料販売の会社、飼料ラインの販売会社)に問い合わせて下さい。

   行い方が異なると却って被害が増大します。

     ④飼料タンクへの工夫。太陽光高反射遮熱塗料の利用、遮光カバーシー

             ト(銀色)の利用など。

   ⑤飼料ライン、ホッパー、給餌器のこまめな清掃管理。分娩舎は行えてい

      る農場は多いが、その他の畜舎(特に育成舎、♂舎、ストール舎など)に

      ついては不備が見られる場合が多い。飼料ラインや天井部の洗浄も行

      っている農場や細霧システムなどを採用している農場は実施後のライン

      内飼料(特にホッパーの接続部とカーブ部分)と給餌器内飼料の湿気に

      も注意。

      ⑥ウエット式になっている給餌器は飼料の腐敗や変敗が加速しやすいの

             で要注。食べ残しのチェックや水圧・水量とのバランスも重要。

   ⑦カビ対策用の資材を利用する。

   有機酸資材:有機酸を使用する農場が多く見られますが、カビ毒が生成

    された後の対応では間に合いません。有機酸の使用は①~⑥を実行し

    た後の予防目的で行うことが良いと思います。又、有機酸はその資材

    レベルや投入量によっては却って飼料中に水分を呼び込んでしまい、

    飼料がタンクやライン内で固まってしまうトラブルを引き起こす場合も有

    ります。カビ毒吸着剤:複数のメーカーからカビ毒吸着資材は販売され

   ています。採食した飼料中の栄養素はそのままに、カビ毒のみを吸着し

   外へ排出するシステムですが、コストが高めな点や資材によってはトリコ

   テセン(デオキシニバレノ―ル等)の吸着効果が見込めない資材も有り

   ますので注意が必要です。使用する際には農場の状況を踏まえて、購

   入メーカーと良く話し合って決めることが重要です。

     ⑧カビ毒によって肝機能障害が起こってしまっている農場については、強

            肝剤の飼料添加も1つの方法になります。管理獣医師やアドバイスなど

            を依頼されている機関に相談して見て下さい。

 

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