温度と有害ガス及び豚の生産性と育成豚の行動反応の相関

(ピッグジャーナル2013年8月号掲載)

温度と有害ガス及び豚の生産性と育成豚の行動反応の相関
 The Correlation between Thermal and Noxious Gas Environments, Pig Productivity and Behavioral Responses of Growing Pigs

1、序論
 温度や湿度は、様々な発育時期の豚における空気環境を評価するための指標として用いられている。
 温度は、生産性に直接影響するため、豚にとって最も重要な環境指標である。適温域を超えると、豚の飼料摂取量は減少し、発育が悪くなる。
 湿度は、高温時に重要となる。30℃を超える高温時の高湿度は病気を蔓延させることもある。 また、アンモニア(NH3)や二酸化炭素(CO2)のような有害ガスは、動物の健康や生産性に影響を及ぼす。暴露時間、濃度レベル、そして他の汚染物質や環境因子が同時に存在するときに健康被害を与える可能性がある。
 本研究では温度や湿度および有害ガスが豚の生産性や行動反応に与える影響を検討することが目的である。

2、材料・方法
 この研究は、韓国のソウル国際大学の家畜試験場にて行った。実施期間は2003年7月1日~2003年7月31日および2004年2月10日~2004年3月3日であり、それぞれ夏環境・冬環境と設定した。
豚の行動については、各週の3日目と6日目にAM10:30~PM6:30の間、1時間ごとに観察した。
 1日平均増体量(ADG)と飼料効率(FE)は、生産性を評価するために測定した。
 試験中の空気環境は、換気調節にて行った。
 また、血液サンプルから得られた血漿を用いてストレスの指標となるACTH測定を行った。
 試験中の空気環境は以下の通りに設定した。

  A.夏環境
    試験群1(換気による温度調節)
    試験群2(換気なし)
  B.冬環境
    試験群1(換気による温度調節)
    試験群2(過度の換気調節)

3、結果
 夏環境において、試験群1に比べて試験群2では高温・高湿度・高ガス濃度の飼育環境となった。
 冬環境において、試験群1に比べて試験群2では低温・低湿度の飼育環境となった。
 ADGについては、夏環境では試験群2に比べ試験群1のほうが67%高かった。冬環境では、試験群2よりも試験群1のほうが10%高かった。
 ACTHについては、夏環境では試験群2は26.27pg/mlであり、試験群1の15.97pg/mLよりも64.5%高かった。冬環境では、試験群2の36.97pg/mLは試験群1の30.24pg/mLよりも21%高かっった。
 行動反応では、夏環境の試験群2では多くの豚が横臥姿勢をとった(P<0.01)。また、飼料摂取する割合が試験群1に比べて減少した(P<0.01)。
 冬環境では、試験群2では寒さのためか起立状態や飲水をしている状態のもの試験群1に比べて少なく、うずくまりの状態のものが多かった。

4、考察
 ADGの結果から、不適切な飼育環境では豚の生産性が低下することが考えられる。また、ACTHの結果から、不適切な飼育環境は豚に多大なストレスを与えていることが考えられる。よって、気温や湿度、そしてガス環境はADGやFEなどの生産性や、豚へのストレスに影響を与えていることが考えられる。このことは、豚の行動変化からも認められる。

5、一言
 厳しい環境では生産性が落ちる、病気が蔓延しやすくなるなど、デメリットがたくさんある。ここで改めて、飼育環境を見直し、豚にとっての適度な環境づくりをしてみてはどうだろうか。

Choi,H.L.,Han,S.H.,Albright,L.D and Chang,W.K.
Int.J.Environ.Res. Public Health
2011,8,3514-3527

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