出荷時期を分割することによる出荷豚への影響

(ピッグジャーナル2013年9月号掲載)

出荷時期を分割することによる出荷豚への影響

Effect of split marketing on the welfare, performance, and carcass traits of finishing pigs

1.序論
 出荷方法によって、ペンの中で個々の豚の社会的立場が変化する可能性がある。
 オールアウト方式では、出荷近くになるとペンのスペースが狭くなることで、豚同士が空間を奪い合い、攻撃性が増加することがある。一方で、体重の重い豚から順次出荷する分割出荷方式では、出荷が進むに従って行動空間は広がるものの、ペンのなかの社会構造の変化が豚の行動に影響を与える可能性がある。
 本研究は、制限給餌の農場において、分割して豚を出荷する方法が、豚の行動と成長にどのような影響を及ぼすか検討するために行った。

2.材料・方法
 1日3回給餌の、アイルランドの農場で実験を行った。
 19週齢の豚を1ペン14頭ずつで飼育し、次の2群に分けた。
オールアウト方式:6週後(25週齢時)に14頭全頭を出荷した。
分割出荷方式:4週後(23週齢時)に各ペンで体重の重い3頭を先に出荷した。残り11頭はオールアウトと同時に出荷した。
 分割出荷の前後で、かみつき、頭突き、ケンカなどの攻撃行動を記録した。また、ペンごとに出荷後の枝肉重量も記録し、群間で比較した。

3.結果
 分割出荷をしたペンでは、オールアウト方式のペンに比べて、攻撃行動が有意に減少した。この攻撃性の減少は、特に雌豚で顕著に見られた。
 両方式で枝肉重量に差はみられなかった。また、枝肉重量のバラつきは分割出荷の方が有意に小さかった。

4.考察
 分割出荷方式には、豚の攻撃性を減少させる効果があることがわかった。この要因としては、最も体格の良く攻撃性の高い豚がいなくなることが考えられる。また、制限給餌という餌を取り合う状況にある豚にとっては、空間が広がることで、攻撃行動をとらなくても空間を確保できるようになったことも大きな要因であると考えられる。
 今回の研究で「分割出荷の場合、枝肉重量は変わらず枝肉重量のばらつきが抑えられたこと」という結果は、生産者が狙った価格で豚を売るための助けになるだろう。

5.一言
 分割出荷方式は、手間がかかりますが、動物福祉に配慮した飼育方法といえるのかもしれません。豚同士の餌の取り合いやケンカを減らすことは、出荷前の事故の予防となる可能性があります。
 豚の行動やペンの中での社会構造に配慮した空間づくりも、使用管理において重要なポイントです。豚のストレスを少しでも軽減するような飼養を目指して、小さな工夫から始めてみませんか。

Conte,S., lawlor,P. G., O’Connell,N., and Boyle,L.A.
J. Anim. Sci 2012, 90: 373-380

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