リソソーム添加剤を付与した離乳子豚におけるEscherichia coli K88経口投与に対する影響

(ピッグジャーナル2013年10月号掲載)

リソソーム添加剤を付与した離乳子豚におけるEscherichia coli K88経口投与に対する影響

Weaned pig responses to Escherichia coli K88 oral challenge when receiving a lysozyme supplement

1.序論
 抗生剤(Antibiotic ,AB)を飼料添加することで、豚の下痢発生をコントロールしたり成長促進したりすることが行われている。しかし、国によって家畜飼料への飼料添加抗生剤の使用を中止する公的圧力がかけられているため、代替方法が注目されている。リソソームは抗生剤の特性を持つ低分子量蛋白質である。
 本研究はEscherichia coli(ETEC)を経口投与させた後で、水溶性リソソーム添加剤エンテガード(EG)を付与した離乳子豚への影響を調査するために行われた。

2.材料・方法
 全36頭の離乳子豚を各9頭ずつ以下のように群分けした。
CONT群;添加剤なし
試験区AB群:クロルテトラサイクリン、スルファメタジン、ペニシリンを0.1%濃度で飼料添加
試験区EG1群:0.1%濃度EGを飲水添加
試験区EG2群:0.2%濃度EGを飲水添加
 また、条件として抗生剤を添加した飼料を給餌されている豚を除いて、全ての豚が同じ性質と栄養素の標準飼料を与えた。豚は導入後7日間馴致させた。導入後8日目に採血して血清を採材し、さらにETEC溶液6ml(2×109cfu/mL)を経口投与し感染させた。豚は下痢の発生と成長成績を評価するために感染後7日間臨床観察し、採血および剖検して腸組織と消化器内容物を採材した。

3.結果
 試験期間を通して試験区間での成長成績に影響しなかった。
 腸組織における大腸菌数は回腸および結腸においてCONT群に比べてAB区、EG1区およびEG2区は有意に減少した。しかし、試験区間での有意差は見られなかった。腸組織消化物pHや脾臓・肝臓の重量も同様に試験区間での有意差は見られなかった。
 また、AB区EG1区はCONT群に比べて高い腸重量と腸絨毛の高さを示した。

4.考察
 腸粘膜におけるETEC数の減少はもちろん、高い腸の成長と発達が認められEGが抗生剤として十分な子豚の腸の健康と機能を維持できることを示唆した。
 しかし、用量試験において理解しがたい結果が得られたことからリソソームの子豚への影響をさらに調査する必要がある。

5.一言
 日本においては飼料添加抗生剤に規制する動きは見られないため、あまり関心がもたれない内容であるかもしれません。それでも、世界ではこのような動きもあることを確認するうえで参考になればと思います。

Nyachoti.,C. M. ,Kiarie., E., Bhandari.,S. K., Zhang.,G. and Krause., D. O.
J ANIM SCI 2012, 90:252-260

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