「ヒスタミン」による食中毒とは?
「ヒスタミン」とは?
ヒスタミン食中毒は、ヒスタミンが高濃度に蓄積された食品、特に魚類及びその加工品を食べることにより発症する、アレルギー様の食中毒です。
ヒスタミンは、食品中に含まれるヒスチジン(タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の一種)に、ヒスタミン産生菌の酵素が作用し、ヒスタミンに変換されることにより生成します。
ヒスタミン食中毒の原因となる食品は?
マグロ類、カツオ類、サバ類等の赤身魚には、ヒスチジンが多く含まれています。これらの魚を常温で放置する等、不適切な状態で保管することにより、ヒスタミン生成菌が増殖し、この細菌によってヒスチジンからヒスタミンが生成されます。魚以外では、チーズ、鶏及びザワークラウト(ドイツの定番料理でキャベツの漬物のようなもの、ソーセージの付け合わせとしてよく使われている)などによるヒスタミン食中毒も報告されています。この他、ワイン、ビール等のアルコール類、ソーセージ及びサラミ、味噌、醤油、納豆、トウチ、キムチ等の発酵食品からもヒスタミンが検出されています。
ヒスタミンは熱に安定であり、また調理加工工程(煮る、焼く等)で除去できないため、一度生成されてしまうと食中毒を防ぐことはできません。
ヒスタミンのヒトに対する影響
ヒスタミンを多く含む魚やその加工品を食べることにより、アレルギー様のヒスタミン食中毒を発症することがあります。通常、食後数分~30 分位で顔面、特に口の周りや耳たぶが紅潮し、頭痛、じんま疹、発熱などの症状を呈しますが、たいてい6~10 時間で回復します。
重症になることは少なく、抗ヒスタミン剤の投与により速やかに治癒します。一般的には、食品100g当たりのヒスタミン量が100mg 以上の場合に発症するとされていますが、実際には摂取量が問題であり、食中毒事例から発症者のヒスタミン摂取量を計算した例では、大人一人当たり22~320mg と報告されています。
過去5年間(平成25年~平成29年)の日本国内の食中毒として報告されている件数及び患者数は、表1のように、件数に対して患者数が多い状況です。家庭における発生もありますが、保育園や学校が関係する給食施設を原因とする大規模な食中毒が発生しています。(消費者庁調べ)
表1 ヒスタミン食中毒の発生状況
平成2年 (201)年 | 平成2年 (201)年 | 平成2年 (201)年 | 平成2年 (201)年 | 平成2年 (201)年 | |
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件数 | 7 | 7 | 13 | 15 | 8 |
患者数 | 190 | 61 | 405 | 283 | 74 |
ヒスタミン食中毒の予防法
・ 魚を購入した際は、常温に放置せず、速やかに冷蔵庫で保管するようにしましょう。
・ ヒスタミン産生菌はエラや消化管に多く存在するので、魚のエラや内臓は購入後できるだけ早く除去しましょう。
・ 鮮度が低下した恐れのある魚は食べないようにしましょう。調理時に加熱しても分解されません。
・ ヒスタミンを高濃度に含む食品を口に入れたときに、くちびるや舌先に通常と異なる刺激(ピリピリした刺激)を感じることがあります。この場合は、食べずに処分して下さい。
ヒスタミンの各国リスク管理(基準値)
国・組織 | 基準値 |
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国内(日本) | 国内での規制値はない |
Codex委員会 | ・ マグロ、イワシ等の缶詰や急速冷凍水産加工品等 腐敗基準:検体のヒスタミン濃度の平均値が100mg/kgを超えないこと 衛生及び取扱基準:検体のヒスタミン濃度がいずれも200mg/kgを超えないこと |
・ 魚醤 衛生及び取扱基準:検体のヒスタミン濃度がいずれも400mg/kgを超えないこと | |
EU | ヒスチジン含有量が多い魚類由来の魚介類食品 ・ 1ロット当たり9検体について検査を行い、以下の基準で判定 ・ 全ての検体の平均値が100mg/kgを超えない ・ うち2検体は100mg/kg以上200mg/kg未満でも可 ・ 全ての検体が200mg/kgを超えない |
ヒスチジン含有量が多い魚類を塩水中で酵素による熟成工程を経た魚介類製品(魚醤を除く。) ・ 1ロット当たり9検体について検査を行い、以下の基準で判定 ・ 全ての検体の平均値が200mg/kgを超えない ・ うち2検体は200mg/kg以上400mg/kg未満でも可 ・ 全ての検体が400mg/kgを超えない | |
米国 | 腐敗しているか否かを判断するための基準 ・ マグロ、シイラ:少なくとも2検体でヒスタミン濃度が50mg/kg以上 ・ マグロ、シイラ以外の魚:少なくとも2検体でヒスタミン濃度が50~500mg/kg |
健康への有害影響 ・ 1検体が500mg/kg以上 | |
カナダ | ・ アンチョビー、魚醤、発酵させた魚ペースト:200 mg/kg ・ その他魚類及び魚製品:100 mg/kg |
オーストラリア ニュージーランド | 魚及び魚製品中のヒスタミン濃度の上限値:200mg/kg |
参考文献
1. ヒスタミン食中毒:消費者庁
2. ヒスタミンによる食中毒について:厚生労働省
3. ヒスタミン(概要):内閣府 食品安全委員会
ヒスタミン検査について
ヒスタミンはHPLCやLCMSMSで検査される事が多いですが、直接ヒスタミンを検出出来るのはLCMSMS法となっております。
また、LCMSMS法では検出器の特性から測定成分の選択性が高く、偽陽性成分が検出されずらいという特徴が有ります。
更に高感度という特徴から低濃度まで測定を行う事ができるため、弊社ではLCMSMS法にて測定を行っております。
※ ヒスタミン検査に関する詳細はこちら ※
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