ペットフード安全法について
全国犬猫飼育実態調査結果(一般社団法人ペットフード協会2019年)によると、犬・猫推計飼育頭数全国合計は1857万5千頭です。これは日本の子どもの数(15歳未満人口)が1533万人(総務省2019年)と比べても多いことがわかります。そして近年ペットは単なる飼育動物ではなく家族の一員として扱われる傾向が強まっています。
このような中で、米国において平成19年にプラスッチックの原料であるメラミンが混入した中国産植物性たんぱく原料を用いたペットフードが原因となり、多くの犬や猫に健康被害が生じました。 また国内でも、平成16年と19年にカビ毒やヒスタミンに汚染されたペットフードの自主回収も発生しました。これらを受けて農林水産省と環境省の共管で「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」が公布されました。
ペットに関連する法律としては、動物の愛護及び管理に関する法律である「動物愛護法」があります。これは動物の所有者または占有者の責務や、動物取扱業(動物の販売業等)の登録義務を課していますが、愛がん動物用飼料についての基準や、愛がん動物用飼料の製造業者、販売業者、輸入業者に対する規制は設けていません。
もう一つ飼料に関連する法律として「飼料安全法」があります。これは飼料の製造等に関する規制や、これを担保するための製造業者等に対する立ち入り検査等の措置について規定していますが、同法は飼料が原因となって人の健康が損なわれる畜産物が生産されることの防止及び畜産物等の生産の安定という観点から規制を行っているものであり、愛がん動物用飼料についてはその目的が異なることから規制の対象とはなっていません。
「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」はペットフードの安全確保に特化したものです。「愛がん動物」とは愛玩する目的で飼う動物を意味し、犬、猫、魚、鳥、うさぎなど多様な動物が含まれますが、法の対象となる動物として犬及び猫が指定されています。また「愛がん動物用飼料」とは「愛がん動物の栄養に供することを目的として使用されるもの」であることから、ミネラルウォーター、生肉、スナック、ガム等も含まれます。薬事法で規制される医薬品、口に入れるが飲み込まないおもちゃ、香りづけや遊具として使用されるまたたび、毛づくろいで飲み込んだ毛と一緒に吐き出されてしまう猫草、店内で飲食されるフードなどは法律の対象とはなりません。
ペットフードの製造・販売にかかる基準・規格は、法第5条に基づき「愛玩動物用飼料の成分規格等に関する省令」により定められました。国内で販売されるペットフードは、次の基準および規格が設定されています。
【成分規格】
分類 | 物質等 | 上限値(µg/g) |
---|---|---|
農薬 | グリホサート | 15 |
クロルピリホスメチル | 10 | |
ピリミホスメチル | 2 | |
マラチオン | 10 | |
メタミドホス | 0.2 | |
汚染物質 | アフラトキシンB1 | 0.02 |
デオキシニバレノール | 2(犬用)、1(猫用) | |
カドミウム | 1 | |
鉛 | 3 | |
ヒ素 | 15 | |
BHC | 0.01 | |
DDT | 0.1 | |
アルドリン及びディルドリン | 0.01 | |
エンドリン | 0.01 | |
ヘプタクロル・ヘプタクロルエポキシド | 0.01 | |
添加物 | エトキシキン | 150(合計量) (犬用にあっては、エトキシキン75µg/g以下) |
ジブチルヒドロキシトルエン(BHT) | ||
ジブチルヒドロキシアニソール(BHA) | ||
亜硝酸ナトリウム | 100 | |
その他 | メラミン | 2.5 |
汚染物質のアフラトキシンB1はトウモロコシなどの穀類に繁殖するカビが産生する物質で、発がん性があります。農薬のうちメタミドホスは、日本での使用は認められておりませんが、海外では使用されることもあり、輸入食品等から検出されることもあります。添加物のエトキシキン、BHT、BHAはペットフードが空気に触れて、酸化劣化することを防ぐために使用されます。
【製造方法基準 】
(1) 有害な物質を含み、若しくは病原微生物により汚染され、又はこれらの疑いがある原材料を用いてはならない。
(2) 販売用ペットフードを加熱し、又は乾燥するにあっては、微生物を除去するのに十分な効力を有する方法で行うこと。
(3) プロピレングリコールは、猫用の販売用ペットフードには用いてはならない。
【表示基準 】
販売用ペットフードには、次に掲げる事項を表示しなければならない。
(1) 販売用ペットフードの名称(犬用又は猫用)
商品名のことですが、犬用は猫用か分かりにくい場合は、「犬用」や「ドッグフード」などと併記します。
(2) 原材料名(原則的に添加物を含む全ての原材料を表示)
添加物以外の原材料は「小麦、ビーフ、トウモロコシ」のような個別名、または「穀類、肉類」のような分類名により表示します。添加物は、ペットフードの製造時に使用したものをすべて表示します。
(3) 賞味期限
「2010 08」のように年月日または年月を表示します
(4) 事業者の氏名又は名称及び住所
(5)原産国名(最終加工工程を完了した国)
なお包装・詰め合わせの作業は最終加工工程には含まれません。
上記項目について日本語で表示しなければなりません。
弊社では成分規格の検査も行っておりますので、お気軽にご相談ください。ペットの健康が守られるためには、上記の規格や基準が守られることはもちろんですが、ペットフードの与え方や取り扱いも非常に重要です。賞味期限の切れたものや、与えすぎや不衛生な食器を使用することのないように、飼い主が正しい知識や情報を得て、ペットの健康が守られることを願っています。
参考資料
ペットフード安全法の解説 ペットフード安全法研究会 大成出版社
ペットフード安全法のあらまし 環境省パンフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000595368.pdf
『ペットフード検査』については、こちらをご確認ください。
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