産地判別におけるICP-MSを用いた多元素測定・多変量解析の実用性について

 近年、食品の表示に関する偽装や異物混入など、食に対する消費者の不安の声が続いています。

食品表示に関連する相談を受け付けている農林水産省の「食品表示110番」への相談件数は、ピークである平成21年度より減少しているものの、近年でも年間5000件程度と無視できない問い合わせ数があります。



 これらの相談の中には、産地偽装を懸念する消費者の声も含まれています。

産地偽装に対する消費者の不安を解決するためには、産地判別検査が必要です。

 産地判別検査の手法として挙げられる手法は、「安定同位体比分析」「遺伝子学的検査」「多変量解析」などが挙げられます。

その中で、弊社では現在「多変量解析」を用いた手法で開発を行っています。

分析方法としては、試料を分解して無機元素を抽出後、ICP-MSを用いて多数の元素を測定し、得られたデータを解析して産地判別を行う手法です。

 今後、産地判別検査の需要がさらに高まることが考えられます。消費者・メーカーの需要を満たすためには安価で、試験受託までの開発期間を短くすることも必要になると考えられます。

また、ICP-MSであれば産地判別以外でも食品メーカーにとって利用できる範囲が広く、日常の品質管理にも使用できます。品質管理にも利用しつつ、検査方法を開発し、自主的に産地偽装に対する防衛を行うことも可能です。
 


 上記の観点から、これまで弊社で行ってきた開発事例を基に、「多元素測定・多変量解析」の産地判別検査への実用性を検証していきます。

1. 地域差による産地判別の可否についての検証

まず、同一の野菜でも地域によって産地の判別に可・不可が別れるかどうかを検証するため、パプリカをモデルとして産地判別モデルの構築を行いました

パプリカは日本国内において様々な地域で栽培されスーパーマーケットなどの店頭に上りますが、季節によっては外国産のパプリカもごく一般的に販売されています。

弊社で検討に用いたパプリカの原産国は日本オランダニュージーランド及び韓国です。

まず日本産とオランダ産のパプリカを分析に供し、測定により得られた無機元素の結果から主成分分析を実施したところ、下記の図のように日本産とオランダ産で差異があることが認められました。

下図はサンプルに含まれる各元素の濃度からX・Y・Zの軸を作った三次元散布図です。


:日本 :オランダ)

同様に日本産とニュージーランド産を比較したところ、こちらも同様に差異が認められました。


:日本 :ニュージーランド)

しかし、日本産と韓国産を比較したところ、日本産とオランダ産・ニュージーランド産を比較した時と比べ、あまり差が認められないとう結果が得られました。


:日本 :韓国)

日本とオランダ・ニュージーランドにおいて含有する元素に差異が発生した理由として、地理的にも離れており、それぞれ気候も異なることから、栽培される土壌環境の差や、栽培方法の差によって差異が生まれた可能性が考えられます。

対して韓国は日本の隣国であり、気候も他の2か国と比べて日本と近い事からあまり差が無く、主成分分析を行ってもお互いに入り混じる結果になった可能性が考えられます。

 今回の検証から、距離的に遠く、気候が異なる国の野菜であれば多変量解析による産地判別の可能性が見出されました。

 次回の検証では、

①日本からは遠いが、近隣にある2か国の比較

②動物性試料の検討

についてご紹介させて頂きたいと思います。

出典

農林水産省 食品表示の110番の実績(過去の実績)

https://www.maff.go.jp/j/jas/kansi/110ban_jisseki.html


『産地判別検査』については、こちらをご確認ください。

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