LC/MS/MSを使って複数化合物を同時分析

弊社の食品検査や医薬品分析では、LC/MS/MSによる複数化合物同時分析を行うことがあります。

物質ごとの化学的性質の違いから、分析条件に対しても多様なレスポンスを示します。
今回は、化合物A、B、C、Dの4物質同時分析法開発における条件検討の例をご紹介いたします。

①まずは汎用的条件で分析
まずはLC/MS/MS分析の移動相として汎用的な選択といえる、酸性水溶液と有機溶媒の組み合わせでグラジエント分析を行ってみました。

LCMS画像1

すると、Aの保持が非常に弱く、他の化合物に比べて早く溶出してしまいました。また、ピーク形状に注目してみるとA、Bは幅が広く、この条件での分析は困難といえます。
原因として、Aが塩基性化合物であることが考えられます。酸性条件下で正に帯電しやすく、極性が高くなり、保持されにくいようです。


②移動相pHの変更
Aの保持を改善するために、グラジエント条件は変えずに、移動相を中性に変更してみました。

LCMS画像2

中性条件への変更で、Aの保持が改善しました。他の分析対象にはそれほど影響せず、Aの溶出を2分以上遅らせることができました。
しかし、Aのピーク幅の広さが目立つため、次はシャープなピーク形状を目指します。


③注入溶液の変更
移動相有機溶媒組成(%)に対して、試料溶液自体の有機溶媒組成(%)が高い場合、カラム到達時の有機溶媒組成が不均一になりピーク幅が広くなる場合があります。両者の組成の差を小さくしてみます。

LCMS画像3

組成の調整により、Aがシャープになり良好なピーク形状が得られました。
ここまで改善すれば、実用的な条件であるといえます。


④溶出時間の調整更
分析法にとって再現性は最も重要です。長期的な使用では、汚染の蓄積が結果に悪影響を及ぼす可能性があるため、検出器への導入時間は短い方が好ましいといえます。③の条件では、A~Dのピークが全て出現するまで約3.5分を要しましたが、より短い時間でピークが出現する条件を目指します。

LCMS画像4

グラジエント条件の調整等を行い、約2分間でA~Dのピークを出現させることができました。1回分析あたりに検出器に導入する時間を3.5→2分間に短縮することで、検出器に到達する汚染を最小限に抑え、劣化を抑制する効果があるので高い再現性をキープすることができます。


まとめ
多角的な視点で改良を行い、分析条件を確立することができました。

LCMS画像5

弊社では、分析機器の取り扱いに特化したスタッフが妥協ナシで構築した方法で、信頼できる検査結果をご提供しております。
今回ご紹介いたしましたLC/MS/MSは、主に食品検査や医薬品分析で活用しております。
ご興味頂けましたら下記リンクよりご詳細を確認ください。

youtube