卵は賞味期限切れで食べられなくなる?安全な見分け方や保存方法も解説

「賞味期限が切れた卵は食べられない?」と考えることもあることでしょう。

 

結論から述べれば、賞味期限切れの卵が絶対に食べられないというわけではありません。

 

そもそも賞味期限とは、「その食品をいつまで安全に食べられるか」を示す期限ではなく、定められた保存条件のもとで、品質が十分に保たれるとされる期限を指します。卵の場合、この賞味期限は「生で食べられる期間」を基準に設定されている点が特徴です。

 

そのため、冷蔵保存が適切に行われていれば、賞味期限を過ぎたからといって、ただちに食べられなくなるわけではありません。ただし、賞味期限を過ぎた卵は、生食ではなく十分に加熱して食べることが前提となります。

 

一方で、保存状態が悪かった場合や、見た目・においに異変がある場合には、賞味期限内であっても食べるべきではありません。卵はサルモネラ菌による食中毒の原因となることもあるため、賞味期限だけで判断するのではなく、正しい知識をもとに安全性を見極めることが重要です。

 

賞味期限切れの卵について、基本的な考え方を一覧でまとめましたので参考にしてみてください。

 

項目 内容
基本的な考え方 卵の賞味期限は「生で安全に食べられる期間」を基準に設定されている。賞味期限を過ぎた卵は、生食は避け、必ず十分に加熱して食べることが前提となる。
推奨される調理法 ゆで卵、炒り卵、オムレツなど、中心まで火が通る調理法が適している。
・卵単体:中心温度70度で1分以上
・他の食材と一緒に調理する場合:中心温度75度で1分以上
避けるべき調理法 賞味期限切れの卵を生または半生で食べることは、食中毒のリスクが高まる。そのため、半熟卵、温泉卵、卵かけご飯など、加熱が不十分な調理法は避けるべき。
保存方法・保存期間の目安 冷蔵庫(10℃以下)で適切に保存されていれば、賞味期限後1〜2週間程度は加熱調理を前提に食べられることが多い。ただし、保存状態や経過日数が長くなるほどリスクは高まるため十分に注意が必要。
食べられない卵の見分け方 ・割った瞬間に強い腐敗臭(硫化水素臭)がする
・黄身が平たく崩れ、白身が水っぽく広がるなど明らかな見た目の異変がある
・殻の内側や白身に黒い斑点(カビ・菌)が見られる
※期限内でもひび割れがある卵は必ず十分に加熱し、期限切れでひび割れがある場合は廃棄を検討する

本記事では、賞味期限の正しい意味を整理したうえで、賞味期限切れの卵が「いつまで」「どのような条件なら」食べられるのか、また安全に食べるための注意点について、専門的な観点からわかりやすく解説します。

 

賞味期限が切れた卵は食べられない?

卵の賞味期限は「品質が保たれた状態でおいしく食べられる期間」を目安に設定されています。そのため、賞味期限が切れた卵であっても、保存状態が良ければ加熱調理をすることで食べられないわけではありません。

 

一方で、賞味期限が切れた卵を生で食べることは避けてください。卵には、まれにサルモネラ菌などの食中毒菌が含まれていることがあり、時間の経過とともにそのリスクは高まります。

 

また、賞味期限を過ぎた卵を使うかどうかを判断する際は、以下のようなポイントも確認してみてください。

 

  • 殻にヒビがないか
  • 割ったときに異臭がないか
  • 黄身や白身の状態に異常がないか

 

とはいえ、賞味期限内の卵は、生で食べても安全かつ品質が保たれているとされた状態です。逆に言えば、賞味期限が切れた卵は品質が保たれているとは言えない状態であるため、少しでも不安を感じる場合は、無理に食べずに廃棄する判断も大切です。

 

卵の賞味期限切れは「およそ2週間前後」が一般的

市販されている卵には、パッケージに「賞味期限」が表示されています。

 

多くの場合、卵の賞味期限は採卵日からおよそ2週間から3週間以内に設定されています。

 

そもそも卵に表示される「賞味期限」とは、品質が保たれ、おいしく食べられる期間を示すもので、生での摂取を前提にした目安です。安全に食べられる期限である「消費期限」とは異なり、あくまで品質保持に重点が置かれています。

 

日本卵業協会の「鶏卵の日付等表示マニュアル」では、生食用卵の賞味期限について、冷蔵(10℃以下)を前提としたうえで「産卵日から21日以内を限度」とすることが推奨されています。

 

卵の殻は一見硬そうに見えますが、「気孔」と呼ばれる小さな穴が多数あり、保存期間が長くなると水分が失われたり、空気中の微生物の影響を受けたりして、殻が割れていない状態でも品質が徐々に低下していきます。

 

とくに注意が必要なのが、食中毒の原因となるサルモネラ菌のリスクです。稀ではあるものの、卵の内部に菌が含まれている可能性もあるため、生で安全に食べられる期間を適切に設定することが重要です。

 

卵の賞味期限は、消費者が安心して卵を取り扱うための、大切な判断材料のひとつです。日常的に使う食品だからこそ、表示内容を正しく理解し、適切に扱うことが求められます。

 

ヒビの入った卵は賞味期限内でも注意が必要

卵は賞味期限内であっても、殻にヒビが入っている場合は特に注意が必要です。

 

卵の殻にヒビがあると、通常であれば外部からの微生物の侵入を防ぐ「クチクラ層(膜)」が破損し、外部からの菌や異物が内部に侵入しやすくなるためです。その場合、サルモネラ菌などの食中毒菌が入り込むリスクも高まります。

 

農林水産省や厚生労働省も、ヒビの入った卵は生で食べないよう注意喚起しており、賞味期限内であっても安全性が保証されるわけではありません。

 

また、ヒビの部分から卵内部の水分が失われやすくなるため、鮮度や風味の劣化も早まりやすいです。見た目に異常がなくても、すでに傷んでいる場合もあるため注意が必要です。

 

卵の賞味期限の決まり方

卵に表示される賞味期限は、品質が保たれた状態で、おいしく食べられる期間として、食品表示法に基づき表示が義務付けられています。ただし、その日数や設定方法については、法律で一律に定められているわけではありません。

 

実際には、各事業者が採卵後の保存温度、流通時間、衛生管理の体制などを総合的に判断し、自主的に賞味期限を設定しています。この判断には、卵の劣化速度に関する科学的なデータや、サルモネラ菌などの食中毒リスクの評価が重要な要素となります。

 

現在の賞味期限の設定方法が確立された背景には、1990年代に発生したサルモネラ菌による食中毒事故が大きく関係しています。これをきっかけに、農林水産省や業界団体が中心となって、洗卵・殺菌・温度管理を含む衛生対策の強化が進められました。

 

この流れの中で、賞味期限の設定基準も見直され、かつては採卵日から30日以上とする例もあったものが、冷蔵保存を前提として21日以内とするガイドラインが示され、現在ではおおよそ14日〜16日程度を目安にする事業者が多くなっています。

 

賞味期限の設定には、たとえば以下のような要素が影響します。

 

  • 保存温度が10℃以下で管理されているか
  • 洗卵後の殺菌処理が行われているか
  • パッキング・流通までの時間
  • 衛生管理がきちんと行われているかどうか

 

このような要素に基づき、各事業者は自社の体制に応じた期限を設けており、同じ商品でも期限が異なる場合があります。つまり、卵の賞味期限に決まった日数はなく、事業者の衛生管理レベルや物流環境などを考慮して決められるのです。

 

卵が傷んでいるかを確認する方法

卵は一見して鮮度や状態がわかりにくい食品ですが、家庭でも比較的簡単に傷み具合を確認できる方法があります。

 

「卵の賞味期限が切れているかわからない」「賞味期限が切れても食べていいのか判断しづらい」といった場合、下記のような卵が傷んでいるかを確認する方法を試してみるのもよいでしょう。

 

  • 卵を水に入れて確認する
  • 卵を割ってにおいを確認する
  • 黄身と白身の状態を確認する
  • 手で触れたときの感触

 

なお、これらの確認方法は、家庭で判断する際の目安にはなりますが、あくまで絶対的な安全性を保証するものではありません。少しでも異常を感じたら、無理に使用せず、迷わず廃棄することが重要です。

 

卵を水に入れて確認する

卵が傷んでいるかを確認する方法として、ボウルなどに水を張り卵を入れる方法が挙げられます。卵が沈むか浮くかによって、傷んでいるのかどうかを判断する目安になります。

 

  • 底に沈んで横になる→新鮮な状態
  • 底に沈んで立つ→やや古くなっているが、加熱調理なら使用可能
  • 浮き上がる→傷んでいる可能性が高い

 

この方法が卵が傷んでいるかを確認する手段になるのは、卵の中にある「気室(空気の層)」が時間の経過とともに大きくなるためです。

 

卵の殻には目に見えない小さな穴があり、そこから少しずつ水分が蒸発して空気が入り、浮力が増していきます。浮く卵は内部の変化が進んでいるサインと考えられます。

 

卵を割ってにおいを確認する

卵が傷んでいるかを確認する方法として、卵を割ってにおいを確認する方法が挙げられます。

 

  • 正常な卵→ほとんど無臭
  • 傷んだ卵→硫黄のようなにおい、酸っぱいにおい、明らかな異臭

 

卵の中が腐敗すると、たんぱく質が分解されて硫化水素などのガスが発生し、それが強い悪臭となって現れます。においは傷みを示す最も確実なサインのひとつで、特にサルモネラ菌などのリスクもあるため、異臭を感じたら迷わず破棄するようにしましょう。

 

黄身と白身の状態を確認する

卵を割ったときの見た目の変化からも、鮮度や傷み具合をある程度判断できます。

 

  • 新鮮な卵→黄身が盛り上がっていて、白身がしっかりまとまっている
  • 傷んだ卵→黄身が平らで崩れやすく、白身が広がって水っぽい

 

これは、時間の経過とともに卵の中のたんぱく質が分解され、粘性が低下することによって起きる変化です。とくに白身は、濃厚卵白と水様卵白に分かれますが、劣化が進むと全体がシャバシャバになり、広がりやすくなります。

 

手で触れたときの感触

卵白を指先で触れてみると、粘りの強さから鮮度を見分けることができます。

 

  • 新鮮な卵→ねばりが強く、まとまりがある
  • 傷んだ卵→とろみがなく、液体のようにすぐ流れてしまう

 

新鮮な卵は、白身にしっかりとした粘りとまとまりがあり、ゆっくりと流れます。

 

一方、時間が経つと卵白のたんぱく質が変化し、水っぽくなって簡単に流れてしまいます。これは、主成分であるアルブミンが分解され、粘性が失われているためです。

 

指で直接触れる方法のため、実践する際は必ず手を清潔にし、使用後は石けんでしっかり手洗いを行いましょう。他の食材に触れる前には特に注意が必要です。

 

卵を安全に食べるための保存方法

卵は「常温でもある程度日持ちする」と考えられがちな食品ですが、実際には取り扱いや保存環境によって安全性が大きく左右されます。とくに日本では、生食を前提とした品質管理が行われているため、生で食べられる状態を保つことが衛生管理上の大きな前提条件となります。

 

卵の品質や衛生状態に影響を与えるのは、保存温度、殻の保護状態、微生物の侵入経路など複数の要素が絡み合っています。また、賞味期限の設定自体も「10℃以下で保存された場合」を前提に定められており、保存環境がその前提を満たしていなければ、期限内であっても生食には適さなくなる可能性があります。

 

このような背景を踏まえ、卵を安全に扱うためには、単に「冷蔵庫に入れる」だけではなく、科学的根拠に基づいた正しい保存方法を理解することが欠かせません。ここでは、家庭でも実践できる4つの方法を紹介していきます。

 

  • 10℃以下の冷蔵保存を徹底する
  • パックのまま保存する
  • とがった方を下にして保存する
  • 洗わずに保存する

 

10℃以下の冷蔵保存を徹底する

卵の保存において最も基本かつ重要なのが、10℃以下での冷蔵保存です。この温度は、卵殻内で万が一存在するサルモネラ菌の増殖を抑える臨界点とされており、賞味期限の設定もこの保存条件を前提としています。

 

とくに家庭用冷蔵庫では、ドアポケットは開閉によって温度が不安定になりやすいため、庫内の奥など温度変化が少ない場所での保管が望まれます。購入後はできるだけ早く冷蔵庫に入れ、常温に長時間放置しないことが重要です。

 

パックのまま保存する

市販の卵は、衛生管理されたパックに入れて流通されています。パックには、卵を衝撃から守るだけでなく、外部の雑菌やにおいの侵入を防ぐバリアのような役割もあります。

 

また、パックに記載されている「賞味期限」や「採卵日」などの情報もそのまま確認できるため、個別に取り出して別の容器に入れることは、衛生管理上むしろリスクを高めることになりかねません。

 

調理のたびにパックから必要な数だけ取り出す方法が、最も安全といえるでしょう。

 

とがった方を下にして保存する

卵には「気室」と呼ばれる空気のたまりが丸い方にあり、とがった方を下にして保存することで、この気室が安定し、内部の水分やガスの移動が抑えられます。

 

この保存姿勢は、卵黄の中心保持や黄身の浮上防止にもつながり、鮮度の維持や見た目の劣化防止にも有効です。産卵直後の鮮度をより長く保つために、標準的な保存方法として推奨されています。

 

洗わずに保存する

卵の表面には「クチクラ層」と呼ばれる天然の保護膜があり、この層が殻の微細な気孔を覆い、細菌の侵入を防ぐ働きをしています。洗卵処理を施さない欧米の一部地域では、このクチクラを保持することが生食衛生の前提とされています。

 

日本では流通段階で洗卵済みの製品が一般的ですが、家庭であらためて洗うと表面に微細な傷が入り、細菌の侵入リスクを高める原因となります。見た目に汚れがある場合でも、使用の直前までは洗浄を避けるのが安全です。

 

まとめ

卵の賞味期限は品質が保たれた状態で、おいしく食べられる期間を示した目安であり、保存状態や個体差によっては、期限を過ぎても必ずしもすぐに腐敗するわけではありません。ただし、賞味期限を過ぎた卵を生食するのは避け、加熱調理での対応が基本です。

 

見た目やにおい、水に浮かべるなどの方法で状態を確認することもできますが、少しでも異常を感じたら使用を中止する判断が重要です。また、日頃から正しい保存方法を実践することで、卵の安全性をより確保することができます。

 

賞味期限切れの卵を扱う際には、「食べられるかどうか」だけでなく、「どのように判断し、どう対応するか」という視点が大切です。安全のためには、過信せず慎重な対応を心がけましょう。

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