レジオネラ属菌の濃縮法について

レジオネラ属菌の検査方法についてはレジオネラ症防止指針 第4版に示されています。
その中で試料の濃縮方法については、ろ過濃縮法または冷却遠心濃縮法によって行うことが記載されています。
 
この二つの方法を掛け流し温泉の浴槽水とその湯口水を用いて比較した文献があり、それによると、レジオネラ属菌が検出された25検体中21検体(84%)ではろ過濃縮法の方は冷却遠心濃縮法よりも検出菌数が多く、冷却遠心濃縮法がろ過濃縮法を上回ったのは4検体(16%)であったと記載があります。
 
また、冷却遠心濃縮法では不検出あったがろ過濃縮法では検出したものが4検体あり、ろ過濃縮法では不検出であったが冷却遠心濃縮法では検出したものは0検体であったと報告されています。
この結果から濃縮方法の違いが検出菌数、陽性検出率に大きな影響を及ぼすことが考えられ、上記結果から温泉水のレジオネラ属菌の検出にはろ過濃縮法が優れていると考えられると記載されています。
 
現在、公衆浴場におけるレジオネラ属菌の基準は,10CFU/100 mL未満とされ、レジオネラ症防止指針に示されている検査方法でレジオネラ属菌が検出されないことを意味しています。レジオネラ属菌が存在しているにもかかわらず、検査方法の違いにより不検出で報告されることも考えられ、適切な管理ができなくなることも懸念されます。
 
冷却遠心濃縮法には遠心時間が一定のため多数の検体処理に適しているといったメリットがあり、ろ過濃縮法には試料によりろ過時間が異なり検査に時間を要するといったデメリットがありますが、弊社では存在しているレジオネラ属菌の取りこぼしがないことを第一に考え、ろ過濃縮法を用いて検査を行っております。これまで陰性の結果で安心していた場合にも、一度検査方法を確認してみてはいかがでしょうか。
 
参考文献
森本 洋、池田 徹也、清水 俊一、山口 敬治:濃縮方法の違いによる温泉水中のレジオネラ属菌検出結果の比較 道衛研所報 Rep. Hokkaido Inst. Pub. Health, 59, 73-74 (2009)
 
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