「野菜のジメチルスルフィド」に関与する異臭について

ブロッコリーやキャベツなどのアブラナ科植物には、「イソチオシアネート」という辛み成分が含まれており、カットや加熱などの加工処理をすることでイソチオシアネートが分解されてジメチルスルフィド(ジメチルジスルフィドやジメチルトリスルフィド)が発生することが知られています。ジメチルスルフィドは、濃度が低いと硫黄臭や腐ったキャベツ臭を感じ、濃度が高いと「石油のようなにおい」を感じることが報告されています。これらはアブラナ科植物由来の臭いであり、食べても問題ないとされていますが、臭いが強く、劣化や腐敗が進行している場合には食さない方がいいかもしれません。1)2)
キャベツは、モンシロチョウ幼虫による食害を防御するためにイソチオシアネートを産生することが知られています。さらにイソチオシアネートは分解されジメチルスルフィドとなり、大気中に放出されます。周辺で栽培されているキャベツは、このジメチルスルフィドのシグナルを受信し、防御のためにモンシロチョウ幼虫にとって有害なイソチオシアネートの産生を促進するようになります。これらの行動は植物間コミュニケーションと呼ばれ、危険を周囲に知らせるだけでなく、モンシロチョウ幼虫の天敵昆虫を呼び寄せる手段としても使用されます。3)4)
このように人間が異臭を感じる臭気成分は、(アブラナ科)植物の生存戦略に必要不可欠な物質であり、植物の生理現象が人間の「異臭」に影響することはとても興味深い話題です。アブラナ科植物は、元来硫黄化合物を含有していますが、栽培環境や加工の有無により、それらの物質含有量が変動するため、異臭問題は完全には解決しないかもれません。
 
【参考文献】
>>1)ブロッコリーから石油のようなにおいがする
>>2)東都生活共同組合
>>3)京都大学生態学研究センターHP
4)植物の香気成分が媒介する生物間相互作用ネットワークの解明、塩尻かおり(京都大学 生態学研究センター)

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