レジオネラ属菌のろ過濃縮法~ろ過濃縮に用いるメンブランフィルターの材質による回収率の違い~

以前、レジオネラ属菌検査を行う際の試料の濃縮方法に「ろ過濃縮法」と「冷却遠心濃縮法」があり、温泉水のレジオネラ属菌の検出には冷却遠心濃縮法に比べてろ過濃縮法が優れているという内容の報告1)をご紹介しました3)。今回はろ過濃縮法に用いるメンブランフィルターの材質の違いによりレジオネラ属菌の回収率が異なる報告2)をご紹介いたします。
 

実験には直径47 mm、孔径0.20-0.22 μmのオートクレーブ滅菌可能なメンブランフィルター、製造メーカー4社(A、B、C、D)の6材質10種を使用した。
 
①ポリカーボネート3種(A、B、C)
②混合セルロース3種(A、B、C)
③セルロースアセテート
④親水性PTFE
⑤親水性ポリエーテルスルホン
⑥親水性ポリスルホン
 
レジオネラ試料水にはLegionella pneumophila ATCC33152を使用し、ろ過濃縮は防止指針に準じて実施した。材質別の回収率はポリカーボネートAが最も高く、続いてポリカーボネートB、ポリカーボネートCとポリカーボネートが高い回収率を示した。セルロース系はポリカーボネートに比べて回収率が低く、最も低かったのは混合セルロースBであった。

このことから弊社では検査精度を高めるためレジオネラ属菌のろ過濃縮に用いるメンブランフィルターはポリカーボネート製を用いております。セルロース系に比べ高価ではありますが、存在しているレジオネラ属菌の取りこぼしがないことを優先しております。これまで陰性の結果で安心していた場合にも、一度検査方法を確認してみてはいかがでしょうか。
 
参考文献
1)森本洋、池田徹也、清水俊一、山口敬治:濃縮方法の違いによる温泉水中のレジオネラ属菌検出結果の比較 道衛研所報 Rep. Hokkaido Inst. Pub. Health, 59, 73-74 (2009)
2)枝川亜希子、木村明生、三輪由佳、田中榮次、足立伸、宮元比呂志:レジオネラ検査ろ過濃縮法におけるメンブランフィルター材質の回収率比較 日本防菌防黴学会誌(2187-431X)41巻2号 Page63-66(2013.02)
>>3)【コラム】レジオネラ属菌の濃縮法について
 
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