毎年必ず発生!腸管出血性大腸菌感染症!

腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症とは

腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli: EHEC)は、ベロ毒素(Verotoxin)を産生する大腸菌感染症です。1)ベロ毒素には、VT1とVT2があり、それぞれ構造が異なります。EHEC感染症では、強い毒素のベロ毒素(志賀毒素群毒素)を出し溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの合併症を引き起こすのが特徴です。ベロ毒素を産生する大腸菌は、3類感染症に指定されているため、検出されたら直ちに保健所に届け出が必要な感染症です。腸管出血性大腸菌の代表的なものは、「腸管出血性大腸菌O157」があり、他にも「O26」や「O111」などがあります。この番号は、菌の表面にあるO抗原(細胞壁由来)とH抗原(べん毛由来)により細かく分類されています。「O157」とは、O抗原として157番目に発見されたものを持つという意味で、現在約180に分類されています。O157でも、ベロ毒素を産生し溶血性尿毒症症候群(HUS)等の重篤な症状を起こすものは、H抗原がH7(O157:H7)とH-(マイナス)のもの(O157:H-)の2種類です。2)
 

致死率1~5% 溶血性尿毒症症候群(HUS)

HUSとは、溶血性尿毒症症侯群(Hemolytic Uremic Syndrome)の略で以下の3つの症状が特徴的です。
1)破砕状赤血球を伴った貧血
2)血小板減少
3)腎機能障害
HUSの初期には、顔色不良、乏尿、浮腫、意識障害等の症状が見られます。HUSは腸管出血性大腸菌感染の重症合併症の一つであり、子どもと高齢者に起こりやすいので特に注意が必要です。
 

腸管出血性大腸菌(EHEC)の感染経路

感染経路は、経口感染です。ヒトを発症させる菌数は、50個程度と考えられており、少ない菌量で二次感染が起きます。また、この菌は強い酸抵抗性を示し、胃酸の中でも生残します。1)このほか、高齢者施設での浅漬けを原因とした集団食中毒事件も報告されており、高齢者・若齢者など抵抗力が弱い方に食事を提供する施設等では、衛生管理に気を付けなければなりません。
 

発生状況

下記の表は、1998年から2022年に腸管出血性大腸菌による食中毒事件として、厚生労働省に報告があったものを集計した表です。この表から腸管出血性大腸菌による食中毒事件は、毎年起こっていることが分かります。
 
腸管出血性大腸菌による食中毒の発生状況
 

腸管出血性大腸菌(EHEC)に感染しないための対策

腸管出血性大腸菌に感染しないための対策は、生肉を使った肉料理を避けることや、肉の中心部まで十分に加熱することが重要です。腸管出血性大腸菌は加熱により死滅するため、肉の中心温度は75℃で1分以上熱を入れることが重要です。また、腸管出血性大腸菌は、少ない菌数でも感染が成立することから生肉を掴んだ箸で焼けた肉を取り分けることも感染に繋がります。そのため、箸を使い分けることで感染のリスクを下げることができます。また、海外では、生鮮野菜を食べて感染した事例も発生しています。渡航先の衛生状態を把握することも感染のリスクを下げることができます。
 
食環境衛生研究所では、検便検査のご依頼を承っております。特に調理従事者は、検便検査の実施義務はありませんが、保健所から検便検査の結果を求められることがあります。弊社の検便検査では、腸管出血性大腸菌O157を含め、腸管出血性大腸菌7項目をご依頼いただけます。1検体770円(税込み)からご依頼いただけますので、二次感染予防のために是非、ご活用ください。
 
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参考文献
>>1)国立感染症研究所,はこちら
>>2)厚生労働省, 腸管出血性大腸菌Q&A,はこちら

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