血球計算について| ②白血球・血小板・採血時の諸注意編

前回に引き続き、血球計算についての記事を書かせていただきます。
今回は、白血球、血小板と血算の検体を採血する際の諸注意についてまとめさせていただきました。
「そもそも血球計算とは何か」、「赤血球について知りたい」という方は、前回のコラムをご覧ください。
 

白血球系

白血球は免疫にかかわる細胞で、主に体内に侵入した細菌や異物を取り込み、消化・分解を行う働きをしています。白血球は一種類の細胞の名前ではなく、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球などの総称です。
 
それぞれの役割を詳しく見ていきましょう。
 
好中球(NEU)…細菌、ウイルスなどの感染が引き起こされると、速やかに感染部位に移動し、病原微生物を貪食(異物を取り込み、消化する。食作用とも言う。)する働きを持っています。感染初期の病原微生物の増殖を抑えるために非常に重要な細胞です。
リンパ球(LYM)…免疫グロブリン産出にかかわるB細胞や、細胞性免疫にかかわるT細胞、細胞障害作用をもち、ウイルス感染細胞やがん細胞などを攻撃するNK細胞などを含む、免疫の全般に重要な役割を持つ細胞たちです。
単球(MONO)…貪食作用を持つ細胞の一つです。好中球ほどの迅速性を有していませんが、血液中から組織内に遊走すると、寿命が比較的長いマクロファージに分化するため、慢性的炎症時に有用です。さらに、抗原情報の提示など多彩な役割を持っています。
好酸球(EOS)…寄生虫感染が起こった時に、この細胞が増えて寄生虫を攻撃します。アレルギーにも関係があるとされています。
好塩基球(BASO)…細胞内にヒスタミン・セロトニンなどの血管の拡張・収縮を起こすアミノ酸を含んでいます。アレルギーにも関係があるとされています。
 
この白血球が増減する場合、どのようなことが考えられるかというと…
 

白血球数増加の場合

①炎症・細菌感染
好中球、単球、リンパ球が特に増加します。動物種・個体差・原因菌の種類・感染部位などにより上昇の程度は異なります。牛では、乳房炎・子宮炎の際に好中球が感染部にあつまることで、血中濃度が減少する場合もあるそうです。
また、牛の伝染性リンパ腫では感染牛の約30%でリンパ球数の増加が起こり、その一部(感染牛の5%以下)が発症してしまうようです。
牛伝染性リンパ腫については過去のコラムでより詳しく解説されているので、ご興味ある方は是非ご覧ください↓
>>牛伝染性リンパ腫って??(コラム)はこちら
 
 
②ストレス
犬では、好中球・単球が激しく増加し、猫では、加えてリンパ球の増加も見られるそうです。牛ではあまりみられないとされています。
実際に数が増加しているというよりも、ストレスにより白血球が血液の外に働きに出るのが阻害されてしまうことで、血液中の濃度が高くなったことによる影響だと考えられています。
 
③寄生虫感染
特に好酸球の増加がみられます。
 

白血球数減少の場合

①血球の破壊、消費亢進>生産
ウイルスやリケッチア(ダニ媒介感染症)が好中球を直接障害してしまいます。また、甚急性細菌感染や急性ウイルス感染、エンドトキシンなどにより、消費が生産を上回ってしまう場合にもみられるそうです。豚では、通常健常な豚の白血球数は12,000~30,000個/mm³であるとされていますが、豚熱発熱期には、2,000~8,000個/mm³ぐらいまで低下してしまうという報告もあります。
 
②生産低下
ビタミンB12や葉酸欠乏、中毒・薬剤・放射線などによる骨髄やリンパ組織の障害などで起こります。牛ではワラビ中毒の際などにみられるそうです。
 

血小板

主に出血を止める働きをしています。出血がおこると血小板は傷口で凝集し、血栓をつくります。
 
血小板数の増加はあまり見られません。一方、減少の場合は、失血、骨髄造血細胞の破壊、播種(はしゅ)性血管内凝固症候群(DIC)、先天性血小板減少症・異常症などが考えられます。
 
この内の播種性血管内凝固症候群(DIC)とは、小さな血栓が全身の血管のあちこちにできてしまい、細い血管を詰まってしまう、さらには、出血の抑制に必要な血小板と凝固因子を使い果たしてしまうため、過度の出血を引き起こしてしまう恐れのある病気です。
大腸菌などの全身性の炎症性疾患(敗血症)に続発することがあるそうです。
 

最後に、血算の検体の採血時の注意点

血算の検体は適切に取り扱わないと、測定までの間に、血球が壊れてしまったり、形が崩れてしまったり、固まってしまったり、といったトラブルが発生してしまいます。
そのようなことを防ぐためには、主に、次のようなことが挙げられます。
 

  • 血液が固まらないように抗凝固剤(EDTA)の入った採血管で採材すること。
    抗凝固剤は色々な種類がありますが、血算にはEDTAが最適とされています。
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  • 1本にかける採血時間を短くすること
  • 上手く血が出なくて時間がかかってしまうことがありますが、時間をかけすぎると凝固してしまいます。ポイントを変えてみたり、保定をしっかりするなど、素早く採血を終えられるように工夫してみましょう。
     

  • 採血直後に適切に転倒混和すること
  • 凝固しないように、採血が終わり次第速やかに、かつ、溶血させないように静かに5~10回程度転倒混和(手首を返して上下を反転させるようにまぜる)をしてください。
     

  • 液量に気を付けること。
  • すでに抗凝固剤入りの採血管の場合は陰圧で止まったところまでしっかり入れましょう。自身で調製する場合は、量に気を付けて下さい(抗凝固剤適正量<血液だと凝固を止めきれません)。
     

  • 温度に気を付ける
  • 冷凍は溶血してしまうので、絶対にしないようにしてください。常温or冷蔵はどちらにもメリット・デメリットがあり、検査機関や状況によって推奨の方法が異なります。弊社では、常温での発送を推奨しております。
     
    検体に不具合があった場合は、ご相談させていただくことがございます。
    取扱いがやや難しい検体となりますが、より早く皆様のもとに結果をお届けできるようにご協力いただければ幸いです。
     
     

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