定量分析の実際①|機械にかけるだけで分析値が得られる訳じゃない。

はじめに

みなさまが食品や生体試料中の特定の成分の濃度を知りたいとき、弊社のような検査機関は定量分析を行い、含まれる濃度を決定して検査結果としてお届けします。
「分析」と聞くと、機械のボタンを押せば自動的に結果が得られるようなイメージを持たれるかもしれません。ですが、より正確な分析値をお届けするためには、意外と多くの地道な過程があります。いつもみなさまご利用いただいている定量分析がどのように成り立っているのか、4つのテーマでご紹介いたします。
 
第1回は、機器の管理についてです。
定量分析をするためには、数値を取り扱うための機器を多く使用しますが、それらは適切な状態で可能な限り一定に運用される必要があります。試料の採取から目的物質の測定までの一連の作業について、それに使用する機器の状態が不明であれば、不確定な要素を増やすことになりますので、気づかないうちに誤差が多くなるなんてこともあります。そのため私たちは点検を日常的に行い、一定の水準を維持しております。
 

①秤量の機器

分析する検体を秤量するための「電子天秤」は、目的の重量(g)を正確に秤量できるように維持されなければなりません。質量が正しいことが保証されている分銅を用いて、電子天秤の状態を確かめます。例えば100 gの分銅を秤量して、100.00 gと表示される=電子天秤の状態は問題なし。といった具合です。
もしも、これがズレていて100 gを秤量した場合に99.00 gと表示される状態で運用してしまえば、1 %が定量結果に直結する誤差として発生してしまいます。
 
秤量の機器
 

②温度管理の機器

分析を行ううえで温度管理は非常に重要です。例えば、私たちが扱っている多くの化学物質の中には、熱で状態が変化してしまうものがあり、特にメーカーが保管条件の温度設定をしている場合は厳守です。その多くのは冷蔵庫や冷凍庫で低温保管していますが、保管温度は一定の範囲で維持されなければなりません。作業者が使用する際には当然、温度確認を行いますが、無人のときに保管庫に異常が発生し温度が一定でなくなる可能性があります。そのため、温度を常時モニタリングし記録する装置を設置して、異常を検知したり、遡って確認したりできる体制を構築しています。もちろん、分析を行う作業場所の室温も管理されています。
 
温度計
 

おわりに

定量分析でより正確な分析値を得るための過程として、数値を取り扱うための機器を多く使用しますが、それらは適切な状態で可能な限り一定に運用される必要があることをお伝えしました。機器の管理なしには良い分析はできません。第2回では、定量分析において数値を決定するしくみについてご紹介いたします。
 
 

youtube