性器クラミジア感染症の解説|男女別の症状の違い・感染経路・治療について
クラミジアとは
クラミジアとは、「Chlamydia trachomatis (クラミジア トラコマチス)」という細菌のことです。クラミジアは性感染症の一つである「性器クラミジア感染症」の原因菌となります。
性器クラミジア感染症の感染者は世界で年間120万人以上といわれており、日本でも感染者数が多く報告されています。
国立感染症研究所が公表するデータを参考にすると、性器クラミジア感染症の報告数は2002年をピークとして年々減少していましたが、2016年から増加している傾向があります。
□クラミジアの感染者報告数
男女・年齢別のクラミジアの感染者
国立感染症研究所が公表するデータによると、性器クラミジア感染症の報告数は男性・女性ともに20代の人が多い傾向があります。
□男性の年齢別性器クラミジア感染症の報告数
□女性の年齢別性器クラミジア感染症の報告数
引用元 国立感染症研究所「性器クラミジア感染症の発生動向、2021年」
性器クラミジア感染症の報告数は2016年から増加している傾向があると述べたように、20代の人の感染者報告数も2016年から増加している傾向にあります。
クラミジアの感染経路
クラミジアは、主に性行為や性交類似行為によって感染します。
□クラミジアに感染する場所の例
- 性器
- のど
- 肛門や直腸
- 結膜
クラミジアは感染した部位の粘膜や分泌物が接触することで、ヒトからヒトに感染します。そのため、クラミジアに感染している人との口腔性交や、クラミジアを含む粘膜に直接触れた手で目を擦るなどの行為によっても感染する可能性があるのです。
あくまで一般的な目安ですが、1回の性行為でクラミジアに感染するのは30%〜50%と言われています。また、妊婦がクラミジアに感染した場合、分娩時の産道感染で新生児にも感染するリスクもあります。
なお、トイレや風呂、温泉、プールといった間接的な接触でクラミジアに感染することはありません。
クラミジアの潜伏期間
クラミジアに感染した場合、だいたい1週間〜3週間が潜伏期間といわれています。しかし、男性の場合は50%、女性の場合は70%〜80%が無症状といわれているように、いつ感染したのかが明確にわからないケースが少なくありません。
そして、無症状であってもクラミジアに感染している場合は、体内にクラミジアが存在します。そのため、症状がみられない人からクラミジアに感染してしまうリスクもあります。
クラミジアに感染した場合の症状
クラミジアに感染したとしてもいずれも軽度のことが多く、無症状であることも少なくありません。特に女性は、男性に比べて症状が出ないことが多い傾向があります。
感染していることに気が付きにくいため、無自覚のうちに感染していてパートナーにクラミジアを移してしまうことも少なくありません。
クラミジアに感染した場合にみられる症状の例には、下記が挙げられます。
症状の例 | |
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男性にみられる症状 | ・軽度の尿道のかゆみや不快感 ・排尿時の軽度の痛み ・尿道から少量の分泌液 ・睾丸全体の腫れや痛み |
女性にみられる症状 | ・おりものの増加 ・排尿時の軽度の痛み ・生理以外での出血 ・下腹部の痛み ・性交時での痛み |
のどに感染した場合の症状 | ・のどの腫れ ・のどの痛み ・発熱 |
直腸に感染した場合の症状 | ・軽度の下痢 ・肛門周辺の痛み ・肛門からの少量の出血 |
クラミジアが感染した場所ごとの性感染症の例
クラミジアによる感染症は、クラミジアが侵入した場所によって症状が異なります。
男性の場合は尿道やのど、女性の場合は膣や子宮頸管やのどに感染するリスクがあるため注意が必要です。また、男女ともに目の結膜からクラミジアに感染するリスクもあります。
- 尿道:クラミジア性尿道炎
- 膣や子宮頸管:クラミジア性子宮頸管炎
- のど:クラミジア咽頭感染症(咽頭クラミジア)
- 目の結膜:クラミジア性結膜炎
クラミジア性尿道炎
男性の場合、性行為によって尿道からクラミジアに感染するリスクがあります。尿道にクラミジアの感染が起きた場合の性感染症を「クラミジア性尿道炎」といいます。
クラミジア性尿道炎が起きると、排尿時の痛みや違和感があるほかに、尿道から分泌液が少量出るケースもあります。また、性器のかゆみや不快感が起きることも少なくありません。
さらに、クラミジアの感染を放置すると尿道から精巣上体に達してしまい、睾丸全体の腫れや痛みがみられるリスクもあります。
クラミジア性子宮頸管炎
女性の場合、膣や子宮頸管からクラミジアに感染するリスクがあり、これを「クラミジア性子宮頸管炎」といいます。多くの場合は無症状ですが、おりものの増加や不正出血、かゆみといった症状がみられるケースもあります。
また、クラミジアの感染に気づかず放置していると、卵管までに炎症がおよんでしまい、不妊症の原因となるリスクもあります。
クラミジア咽頭感染症(咽頭クラミジア)
男女ともにのどからクラミジアに感染するリスクがあり、これを「クラミジア咽頭感染症」といいます。咽頭クラミジアと呼ばれることもあります。
クラミジア咽頭感染症が発症した場合、喉の痛みや腫れ、発熱といった症状がみられますが、多くは症状に気づきづらいです。
クラミジア性結膜炎(トラコーマ)
「クラミジアを含む粘膜に触れた手で目を擦る」のような行為があると、目の結膜からクラミジアに感染するリスクがあります。これを「クラミジア性結膜炎」といい、トラコーマとも呼ばれることもあります。
クラミジア性結膜炎の初期症状は結膜炎に近いため、クラミジアに感染していることに気付けないことも少なくありません。初期症状としては充血や瞼の腫れ、めやにの増加などがみられますが、症状が進行すると結膜にぶつぶつが現れることがあります。
クラミジアによる感染症の治療
クラミジアの治療には、飲み薬(抗菌薬)を使用します。クラミジア結膜炎が発症している場合には、抗生物質を含む点眼液も用いられます。
なお、クラミジアは薬への耐性があるものも増えており、薬を飲んだだけでは改善しないことも少なくありません。そのため、抗菌薬を内服した後は、クラミジアが消滅しているかを確かめるために、医療機関での検査を行ってもらうことも大切です。
仮に薬の内服によって症状がみられなくなったとしても、医師の指示にしたがって治療を行うようにしましょう。
クラミジアによる感染症の予防法
クラミジアによる感染症を予防するためには、避妊具を使用するのが大切です。必ず予防できるわけではありませんが、クラミジアに感染するリスクを抑えられます。
また、クラミジアによる感染症は無症状であることも多いため、不特定多数との性行為や性交類似行為は避けるようにしましょう。
なお、クラミジアによる感染症は治っても免疫を獲得しないので、再度感染することもあります。男女間でお互いに感染させるいわゆる「ピンポン感染」が起きるリスクもあるため、パートナーとの同時治療が重要になります。
クラミジアによる感染症の疑いがある場合には、医療機関で定期的に検査を受けることで感染拡大の防止につながります。