アスベストはどのようにできるのか|気になる疑問を解説します

アスベストという言葉やアスベストの有害性について見聞きする機会は多いと思います。
では、アスベストがどのようにしてできるのか知っていますか。代表的なアスベストであるクリソタイル、アモサイト、クロシドライトの産状を下記にまとめました。
 

クリソタイルの産状

橄欖石や輝石などの有色鉱物から成る橄欖岩(Peridotite)が変成作用によって蛇紋岩化し、蛇紋石ができます。クリソタイルは、蛇紋岩化で橄欖岩内に生じた割れ目に霜柱のように結晶成長してできたものです。
 
2Mg2SiO4 + 3H2O → Mg3Si2O5(OH)4 +Mg(OH)2
橄欖石            蛇紋石       ブルース石
 
3MgSiO3 + 2H2O → Mg3Si2O5(OH)4 + SiO2
輝石            蛇紋石    石英
 
蛇紋岩地域はプレートテクトニクスで生じた褶曲山脈に広く分布しています。橄欖岩などの海洋地殻下のマントル物質が上昇して海底近くで海水と反応して蛇紋岩化します。地表に露出した褶曲山脈として、日本列島、地中海のキプロス島、イタリア・アペニン山脈、アルプス山脈、ロシア・ウラル山脈、北米・コースト山脈やシエラネバダ山脈、カスケード山脈などがあり、それらの地域にはクリソタイル鉱山も頻繁にあります。
 
一方、プレートテクトニクスとは関係なく、苦灰岩質大理石から蛇紋石ができる場合もあります。そこでは、まず苦灰石から橄欖石ができて、その蛇紋石化作用で蛇紋石が形成されます。こうしたクリソタイル鉱山が、南ア・トランスバール地方、米国、インドなどに見られます。
 
2CaMg(CO3)2 + SiO2 → Mg2SiO4 + 2CaCO3 + 2CO2
苦灰石       石英    橄欖石    方解石
2Mg2SiO4 + 3H2O → Mg3Si2O5(OH)4 + Mg(OH)2
橄欖石            蛇紋石       ブルース石
 

クロシドライトとアモサイトの産状

角閃石石綿のクロシドライト(リーベック閃石)とアモサイト(グリュネ閃石)は、先カン
ブリア時代の縞状鉄鉱層中に豊富に産出します。ほとんどのクロシドライトとアモサイトは、南アフリカの北ケープ地方とトランスバール地方の先カンブリア紀の縞状鉄鉱層から産出されました。この縞状鉄鉱層は地球大気に酸素が無かった頃、バクテリア類の棲息する浅い還元環境の海でゲル状の水酸化鉄とシリカが反応して沈殿・堆積してできたと考えられています。岩石中でNa+の逃散が起ると、クロシドライトはアモサイトに変成します。Na+の逃散は温度上昇とともに大きくなるので、クロシドライトのアモサイトへの変成は温度の上昇で促進されます。
 
橄欖石
橄欖石
 
蛇紋石
蛇紋石
 
蛇紋石
石英
 
苦灰石
苦灰石
 

参考文献

>>PDF:⽯綿に関する基礎知識(環境省)
>>PDF:鉱物及び石綿含有材料等に関する基礎的な知識(厚労省)
 

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