セレウス菌食中毒とは?食中毒の事例や原因食品、予防法を解説

セレウス菌とは

セレウス菌は、自然界に広く分布している細菌です。空気中や土の中、河川といった自然環境だけでなく、農産物や水産物、畜産物の食料・飼料などにも潜んでいます。

 


引用元国立感染症研究所「セレウス菌感染症とは」

 

セレウス菌は10度〜50度程度の温度で増殖し、とくに28度〜35度ほどの温度域では活発に増殖をします。そして、耐熱性がある芽胞を形成する細菌であるため、90度で60分加熱しても生存する特徴があります。

 

簡単にいえば、セレウス菌は通常の加熱調理で失活しない熱に強い細菌です。

 

セレウス菌による食中毒は、主に食品中またはヒトの小腸で生成された毒素によって引き起こされます。生成された毒素によって食中毒の症状は変わり、セレウス菌は「嘔吐毒」「下痢毒」を生成します。

 

日本国内では嘔吐型の食中毒が多く見られ、セレウス菌の嘔吐毒に関しては126度で90分加熱処理をしても失活しません。

 

令和5年食中毒発生状況」では、令和5年の食中毒のうち0.2%と比較的少ない数値ではありますが、家庭でも発症する可能性があることから、セレウス菌は注意するべき細菌の1つです。

 

セレウス菌による食中毒の症状

セレウス菌による食中毒の症状には、「嘔吐型」「下痢型」があります。それぞれで症状や潜伏期間、食中毒の原因になりやすい食品例などが変わります。

 

ここからは、セレウス菌による食中毒について、嘔吐型と下痢型で症状などを解説していきます。

 

嘔吐型

セレウス菌による嘔吐型の食中毒について、症状や潜伏期間などは下記のとおりです。

 

毒素の生成場所 食品中
潜伏期間 30分~6時間程度
発症期間 6時間~24時間程度
食中毒の主な症状 嘔吐、吐き気、下痢、腹痛など
※いずれも軽症であるのが一般的
食中毒の原因になりやすい食品例 米飯や麺類 など

 

セレウス菌による嘔吐型の食中毒の症状としては、主に嘔吐や吐き気が挙げられます。また、下痢や腹痛といった症状がみられることもありますが、通常はいずれも軽症です。

 

下痢型

セレウス菌による下痢型の食中毒について、症状や潜伏期間などは下記のとおりです。

 

毒素の生成場所 ヒトの小腸
潜伏期間 8時間~16時間程度
発症期間 12時間~24時間程度
食中毒の主な症状 腹痛、水様下痢
※抵抗力が弱い場合には、急性肝不全を起こすおそれもある
食中毒の原因になりやすい食品例 肉類、野菜類、乳製品 など

 

セレウス菌による下痢型の食中毒の症状としては、腹痛、水様下痢がみられます。ただし、抵抗力が弱い場合には、急性肝不全を起こすおそれもあるため注意が必要です。

 

セレウス菌による食中毒の事例

セレウス菌による食中毒は例年発生しています。厚生労働省が公表しているデータを参考にすると、令和元年〜5年までのセレウス菌による食中毒の患者数と死者数は下記のとおりです。

 

患者数 死者数
令和5年 22人 0人
令和4年 48人 0人
令和3年 51人 0人
令和2年 4人 0人
令和元年 219人 0人

参照元:厚生労働省「食中毒統計資料

 

令和元年〜5年では、セレウス菌による食中毒による死者数は0人でしたが、患者数は毎年報告されているのがわかります。

 

セレウス菌による食中毒の発生時期

セレウス菌による食中毒は、主に夏場に起こりやすい傾向があります。実際に、厚生労働省が公表するデータをまとめると、セレウス菌による食中毒の発生時期について下記のような結果となりました。

 


参照元:厚生労働省「食中毒統計資料

 

厚生労働省が公表している令和元年〜5年のデータをまとめたところ、セレウス菌による食中毒は7月と10月に最も多く発生していることがわかります。

 

これは「28度〜35度ほどの温度域では活発に増殖する」というセレウス菌の特徴が関わっていると考えられます。とくに夏場はセレウス菌による食中毒のリスクがあるため注意が必要です。

 

セレウス菌による食中毒の発生場所や原因食品

セレウス菌は自然界に広く分布している細菌であるため、どのような場所でも食中毒が起きるリスクはあります。食品で毒素を生成するため、とくに飲食店ではセレウス菌による食中毒が起こりやすいです。

 

厚生労働省が公表している令和3年〜5年の統計データを参考に、セレウス菌による食中毒の発生場所や原因食品をまとめましたので参考にしてみてください。

 

発生場所 食中毒の原因食品
飲食店(東京都) 飲食店で調理された食事
飲食店(愛知県) 飲食店で調理された食事
仕出屋(東京都) 中華弁当
飲食店(大阪府) 飲食店で調理された食事
飲食店(沖縄県) 飲食店で調理された弁当
飲食店(大阪府) 飲食店で調理された食事
飲食店(徳島県) 弁当
飲食店(香川県) 焼きめし
製造所(沖縄県) 鶏めし弁当

参照元:厚生労働省「食中毒統計資料

 

令和3年〜5年の統計データを参考にすれば、セレウス菌による食中毒のほとんどが飲食店で発生していることがわかります。

 

なお、セレウス菌による食中毒は、チャーハンやピラフ、パスタ、焼きそばなどが原因食品になりやすいといわれています。家庭で調理する場合でもセレウス菌による食中毒が起きるリスクはあるため注意が必要です。

 

セレウス菌による食中毒の予防法

前述したように、セレウス菌は室温で放置をすると増殖する細菌です。熱に強い特徴があるため、セレウス菌の毒素が生成されてしまえば、家庭での加熱調理では失活させるのは難しいです。

 

そのため、セレウス菌による食中毒を予防するには、「食品を室温で放置しない」「調理した食事はすぐに喫食する」の2つが大切になります。具体的には、下記のような対策をとることで、セレウス菌による食中毒の予防につながります。

 

  • 必要最低限の量だけを調理して、調理後はすぐに喫食をする
  • 保存をするのであれば55度以上または8度以下で保存をする

 

ここからは、セレウス菌による食中毒の予防法について解説していきます。

 

必要最低限の量だけを調理して、調理後はすぐに喫食をする

セレウス菌は加熱調理された食品であっても増殖します。必要以上に調理をすると、セレウス菌が増殖してしまい、食中毒が起きてしまうリスクがあるため、調理の際には必要最低限の量にすることが大切です。

 

また、調理後に放置をした場合もセレウス菌が増殖する可能性があるため、調理後はすぐに喫食をするようにしましょう。

 

保存をするのであれば55度以上または8度以下で保存をする

セレウス菌は28度〜35度ほどの温度域で活発に増殖をします。食品や料理を放置をすると、セレウス菌が増殖してしまい、食中毒が発生するリスクがあるため注意が必要です。

 

食品や料理を保管する必要がある場合、55度以上または8度以下の冷蔵保存をするようにしましょう。また、7度以下の低温でも増殖をする菌株も存在するため、冷蔵保存をする場合には保存期間をなるべく短くすることも大切です。

 

まとめ

セレウス菌による食中毒は、通年発生するリスクがあります。通常は嘔吐や吐き気、下痢といった軽い症状ですが、稀なケースとして死亡例も報告されています。

 

セレウス菌は熱に強く、通常の加熱調理で失活しません。

 

食品や料理を室温放置をすると菌が増殖していまい、セレウス菌による食中毒を招いてしまうリスクがあるため、「必要最低限の量だけを調理して、調理後はすぐに喫食をする」「55度以上または8度以下で保存をする」といった予防法を実施しましょう。

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