【カカオバター】チョコレートから食の安全を考える④

カカオ豆には、40%から50%を占める、植物性油脂のカカオバター(別名:ココアバター)が含まれます。カカオバターの成分を確認すると、ほとんどが飽和脂肪酸のパルミチン酸とステアリン酸および不飽和脂肪酸のオレイン酸でできています。
 

脂肪酸成分融点(℃)比較特徴
カカオバター
飽和脂肪酸パルミチン酸62.625.8エネルギー源、細胞膜構成、動脈硬化、心筋梗塞
ステアリン酸69.334.5抗酸化作用、保湿、美肌効果、動脈硬化、心筋梗塞
不飽和脂肪酸オレイン酸1335.3善玉・悪玉コレステロールのバランスの維持に有効、肉のうま味成分

表1 カカオバターの脂肪酸組成とその特徴
 
飽和脂肪酸を過剰摂取すると、肥満や生活習慣病を引き起こし、血管が詰まることで動脈硬化が進み、脳梗塞や心筋梗塞の危険が増すと言われています。しかし、適度な飽和脂肪酸の摂取はエネルギー源や細胞膜構成、ホルモン合成、脂溶性ビタミンの吸収に重要な働きをします。同様に、不飽和脂肪酸は血中のコレステロールをコントロールする作用があります。健康な体を維持するためには、飽和脂肪酸も不飽和脂肪酸も必要な栄養素と言えます。
また、脂肪酸はチョコレートの口溶けにも大きく影響します。カカオバターの脂肪酸は、図1のように融点の高いパルミチン酸およびステアリン酸の間に、融点の低いオレイン酸が挟まれた構造で存在しています(図1)。
 
カカオバター中の脂肪酸構造イメージ
図1. カカオバター中の脂肪酸構造イメージ
 
温めると、まずオレイン酸が溶け始め、図のような構造が維持できなくなります。その温度が25℃付近であり、体温に近い35℃では完全に液体になります。このように脂肪酸を含むカカオバターは、チョコレートの口溶けをよくするために欠かせません※。
 

※脂肪酸から話がそれますが、近年、機能性を重視した高カカオチョコレートが人気ですが、カカオ含有量を示す%表示(カカオ70%など)には、カカオバターも含まれます。カカオバターには、ほとんどポリフェノールは含まれません。『高カカオ=高ポリフェノール』ではないことにご注意ください。
>>食品中のポリフェノール総量分析について

 
さらに、カカオバターは人の体温付近で溶けるという特性を利用して、食品だけでなく、ハンドクリームや座薬、化粧品の材料としても使用されています。
 
菜種油をはじめ、木の実、アボカドなど、カカオバターのような植物性油脂、牛・豚・鶏に含まれる動物性油脂。どちらにも飽和・不飽和脂肪酸が含まれ、栄養素としてのみでなく、口溶けやうま味にも大きく影響し、様々な製品へと形を変えています。脂肪酸組成を調べることで、その物性や特性を知ることができ、健康への影響のみでなく、商品の付加価値や使用用途を広げることも可能です。
 
脂肪酸の検査のご希望、ご相談はこちらまでお気軽にお問い合わせください。
 
参考HP
>>カカオバターとは?バターとは違うの?その成分と特徴について
 

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