ミツバチの寄生虫について
普段私たちが目にする花や口にする野菜・果物などの受粉にとても重要な役割を持っているみつばち。
今回はみつばちの寄生虫についてご紹介していきます。
現在、日本において下記3種類の寄生虫症があり、監視伝染病となっています。(監視伝染病:畜産の振興を図ることを目的として発生を予防し、まん延を防止する疾病)
目次
ノゼマ症
ノゼマ症とは微胞子虫門ノゼマ科のNosema apis/Nosema ceranae の2種類が原因となり下痢や腹部充満などを引き起こす病気です。
経口摂取後、成蜂の腸管内で発芽・増殖し新たな芽胞が消化管内に放出された後、糞と共に体外へ放出された胞子が花粉や貯蜜を汚染して感染源となります。
疫学
胞子は巣箱内を汚染した乾燥排泄物中で数か月に渡り生残するため、蜂群における個体数減少を引き起こす主要な疾病の1つです。
特徴としてN apis/N ceranaeそれぞれ温度に対する耐性が異なっています。
N.apisは熱処理で感染力を失いますが、N.ceranaeの感染力は失われません。
冷凍するとN.ceraneは感染力を失いますが、N.apisの感染力は失われません。
臨床症状
腹部充満、糞詰まり、下痢、体表面異常、飛翔不能、寿命短縮、巣門周辺徘徊等が見られます。
感染は中腸上皮に限局するため、他の臓器に広がることはないと言われています。
検査方法
中腸内容の細胞をギムザ染色し、400~1000倍で鏡検することで診断します。
予防・治療
現在日本で認可されている治療薬・予防薬はないため、飼育管理と衛生管理の徹底での予防が基本となっています。
バロア症
ダニ目 中気門目 ヘギイタダニ科 ミツバチヘギイタダニ(Varroa destructor)が原因となり、蜂児の発育障害や成蜂の腹部萎縮などを引き起こす病気です。
ミツバチヘギイタダニは横長楕円形の大型でカニに似たへぎ板状の構造をしており、ハチへの寄生は肉眼で確認出来ます。
疫学
春~夏は雄蜂の蜂児に寄生・繫殖するが、秋になると雄蜂の蜂児の生産が止まるため、一斉に働き蜂の蜂児に寄生します。その結果、吸血の影響によって成虫の体重減少や労働能力の低下が見られます。
雄蜂の蜂児に寄生すると生育期間が働き蜂よりも長くなるため、雄蜂の蜂児への選択性が高い傾向があります。また、生育期間が長くなるため、子ダニの生産数が増えると言われています。
メスダニは羽化する蜂に付着し、しばらくは腹部や胸部から体液を吸っていますが、産卵できるようになると蜂児巣房を匂いで見つけて成虫から脱落して侵入します。
雄蜂では吸血による体重減少から飛翔能力の低下や精子生産の減少を招くと言われています。
また、働き蜂では記憶能力に支障をきたし、方向感覚や帰巣性が損なわれると言われています。
臨床症状
蜂児の発育障害、成蜂の腹部萎縮、翅の奇形、脚の変形、飛翔能力の低下、精子生産の減少、記憶能力の低下が見られます。
検査方法
成蜂からのダニの検出で診断します。
予防・治療
ピレスロイド系殺虫剤フルバリネート製剤 アスピタン
有機窒素系殺ダニ剤アミトラズ製剤 アピバール
上記、2種類が日本で認可されている薬剤となっています。
また、ダニを雄蜂の蜂児に寄生させた後に、その巣板を除去する生物学的防除法もあると言われています。
アカリンダニ症
ダニ目 ケダニ亜目 ホコリダニ科 アカリンダニ(Acarapis woodi)が成蜂の前胸部気管に寄生して繁殖することで発生する疾病です。
感染しても多くは無症状だが、重度寄生があると呼吸困難や飛翔不能などが出現すると言われています。
疫学
春~夏にかけての働き蜂の寿命が短い時期は増えることが難しいため、大きな被害はないと言われています。
しかし、働き蜂の寿命が延びる冬季では、気管内で多世代を経て増殖するため、特に重度寄生があると越冬期の蜂数の激減が見られます。
原因としてはアカリンダニの世代時間が21日間と長いため時期によって被害の差が出ると考えられています。
メスダニは気管壁に5~7個の卵を産み、孵化した幼虫は11~15日位で成虫になり、気管が開いている蜂児や若い成虫に寄生します。気管に侵入すると口吻を気管壁に刺すことで、体液を吸います。
10数匹程度の寄生であれば特に影響は見られないと言われていますが、100匹以上に増殖すると働き蜂は飛ぶことが出来なくなり、最終的に死亡すると言われています。
検査方法
病蜂の気管内を直接鏡検して診断します。
予防・治療
現在日本で認可されている治療薬・予防薬はないため、飼育管理と衛生管理の徹底での予防が基本となっています。