豚熱について|原因・症状・対策・発生状況など解説

豚熱(CSF・旧称:豚コレラ)は豚の急性・熱性ウイルス伝染病で、強い伝染力と高い致死率が特徴です。養豚産業に甚大な被害をもたらし、世界各地で恐れられてきました。日本では1992年以降一旦発生がなくなり清浄化を達成しましたが、2018年に再度発生しました。近年はイノシシへの感染拡大も問題となっている病気です。
 

原因ウイルスと特徴

項目内容
ウイルス名豚熱ウイルス(CSFV: Classical Swine Fever Virus)
分類フラビウイルス科ペスチウイルス属、直径40~50nm、RNAウイルス
自然宿主豚、およびイノシシ
消毒・耐性消毒薬や加熱・煮沸で死滅。冷凍・燻製・塩漬け肉中では長期間生存

 
血清型や病原性が多様で、亜種によって急性~慢性型の発症幅があります。BVD・MDウイルス(牛ウイルス性下痢)等と類似性・交差反応を示します。
 

症状と経過

主な症状・経過
潜伏期は3~21日(多くは3~6日) です。
 
急性型では

  • 高熱(41~42℃)、食欲不振、元気消失
  • 目やに(結膜炎)、便秘→下痢
  • 皮膚(耳・腹部・四肢等)に紫斑
  • 進行すると運動障害、後躯麻痺など
  • 高い致死率(2~3週間で多くが死亡)
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    慢性型や遅発型もあり、1ヶ月以上で死亡する場合や、ウイルスを長期間持つ不顕性感染豚の存在も報告されています。
     

    病理学的特徴

    重要な肉眼所見:リンパ節腫大、全身性の点状~網状出血(肺・心筋・消化管など)、脾臓辺縁の血腫状出血性梗塞 が認められます。
     

    診断方法

    1. 臨床診断:年齢不問の高発熱・高致死率、抗生物質無効例で疑う
    2. 血液検査:白血球(リンパ球)・血小板の顕著な減少
    3. ウイルス検出法:扁桃などの組織から
     ・蛍光抗体法(迅速;黄緑蛍光で検出)
     ・RT-PCR(遺伝子検出;補助診断)
     ・ウイルス分離(結果まで2日程度)
    4. 類症鑑別疾患
    豚丹毒、オーエスキー病、PRRS、アフリカ豚熱、トキソプラズマ病など
    防疫策・ワクチン
     

    ワクチン

    日本で開発されたGPE株生ワクチンが主流 で、3日で免疫成立する特徴があります。
    野外ウイルスと識別可能(遺伝的マーカー有) で、高い安全性と有効性(接種豚に発症無し、水平・垂直感染無し)が知られています。
    接種プログラム は、肉豚で生後30~40日齢で1回接種(移行抗体の影響を考慮) 、繁殖候補豚:6ヶ月後、1年後と追加接種(計3回) を行います。
    全国的な感染拡大の懸念から、2019年以降地域限定的にワクチン再導入(2019年10月~)されました。
     

    ワクチンの特徴内容
    接種豚への安全性病原性・副作用ほぼ無し
    免疫効果3日で発揮。抗体は10~14日後生成、2年以上持続
    ワクチンと野外株の識別性遺伝的・培養特性で識別可能

     

    バイオセキュリティ対策

    豚熱対策では、バイオセキュリティーの強化が一番大事になってきます。
    具体的には、下記のような手段が一般的です。

  • 農場の消毒、イノシシ侵入防止(フェンス設置等)、飼料車両等の衛生
  • 持ち込み豚の隔離・観察、精液供給元の衛生確認
  • 豚以外動物由来や人からのウイルス持ち込み防止
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    歴史と発生状況

    世界各国で清浄化・撲滅計画が進められ、発生減少傾向もありますが、今なお脅威です。日本では2018年岐阜県で再発(イノシシ経由・新ウイルス侵入が示唆)して以降、散発的に各地で発生しております。発生時は感染豚の緊急淘汰・通報、移動制限がとても重要です。
    【公式防疫指針・詳細】
    農水省 家畜伝染病防疫指針(豚熱)
     
     

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