密かに進行中?−見直してみよう!コクシジウム感染症−

近年は飼料代金の高騰、ワクチン関係の充実、ポジティブリスト制度等の関係も有り、農場での薬剤の使用量が減少して来ています。又、薬剤を使用して絶大な効果があった以前とは異なり、病原性の強いウイルスや薬剤耐性を持った細菌群等による複合感染症の出現も、養豚現場での薬剤の効果を鈍らせて、薬剤に頼っていた養豚業界の再編を後押ししているものと思います。
安心、安全な豚肉を生産する上で、なるべく薬剤に頼らない養豚経営を目指す事は大変良い事なのですが、近頃は薬剤を使用する時は無造作且つ無神経に使用し、薬剤を中止する時には考えなしに行う農場が見られる事に、一抹の不安を感じています。

さて、この事も有り、私は各地の農場へ伺っていて思う事があります。
飼養母豚数の増加や畜舎設備の老朽化、管理者の高齢化、使用飼料の能力減、使用水の水質悪化、使用敷材の不衛生化等によるものなのかは明確でありませんが、今まではたいして何も気にもしなかった疾病群の感染が増加しているのでは?と感じています。

今回はその中の一部の事例を紹介しようと思います。

皆さんの農場で中々治癒出来ない、下痢症状、衰弱症状、関節炎症状、又はそれらが伴う死亡事故等の発生は無いでしょうか。もし当てはまる症状がある場合については、コクシジウム感染症の存在も疑って見て下さい。
このコクシジウム感染症には、アイメリア属(Eimeria)9種、イソスポラ属(Isospora)3種、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)2種が存在します。

Isospora suisは哺乳子豚に重篤な下痢を起こす病原体で、その発生は生後5から14日目(近年は3日目での発生報告もある)にほぼ限定されます。

Eimeriaは離乳直後の子豚に多く発生し、下痢症状やカタル性腸炎等が認められます。

Cryptosporidiumは、豚での発病はまれで、哺乳類に共通に感染する2種類によって下痢症状が発生することが発見され、人畜共通感染病として注目されています。

クロストリジウムは常在細菌の部類に入り、常に腸管にいてストレスや条件が重なる時に異常に増殖し、発病します。
どちらにしても昔はサルファ剤等の薬剤によるコクシジウム感染症の予防や治療がなされていましたが、今はほとんどの農場でこの手の薬剤の利用は見かけなくなっています。又、他にコクシジウムが増加した要因としては、長年に渡る敷地内(土壌中)での増殖、オガ屑等の敷材中への混在や繁殖、地下水への混入(汚染)も、農場でのコクシジウム感染症の発生を助長していると思います。

今までの常識や、事故が起こっている場所のみに囚われず、広い視野と知見で事故原因をさぐる努力をする事は、農場側や私たち指導する側の両方で必要になる事と思います。

< 初出:ピッグジャーナル/菊池雄一 >

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