特にApp1型に注意

みなさんは、豚胸膜肺炎よりもヘモフィルスと言われていた頃の病名の方が親しみやすい方も多いと思いますが、ここではあえて豚胸膜肺炎(App)とさせていただきたいと思います。近頃また豚胸膜性肺炎(Appと略す)の発生が増加傾向にあります。
App2型の被害率が多く占めていますが、その中でApp1型の被害も目立ってきています。様々な型が存在するAppですがその種類(型)や農場の状態によっては病原性が変化し、種豚群の体調不良、繁殖障害(流産、早産、再発など)、生後まもない哺乳子豚から出荷間際の肥育豚での事故など、幅広い日齢での被害が報告されています。
今回はそんな豚胸膜肺炎の中でも病原性が強く、進行性が早く、事故率の高いApp1型について考えてみたいと思います。


App1型の特徴

  • (1) 発病速度、被害率が最も高い。
  • (2) 死亡率が最も高い。
  • (3) 薬剤効果が見えない又は見えにくい。(病変形成と進行率が早い事も理由)


発生事例

  • (1) 出荷直前での被害。体重測定後の死亡。出荷トラックの輸送中の死亡。出荷屠場係留場での死亡など。
  • (2) 4ヶ月齢〜5ヶ月齢での被害。飼料の切り替え前後頃に急性発生。
  • (3) 3ヶ月齢頃の被害。肥育舎への移動直後〜1ヶ月目頃の急性発生。肥育舎の乾燥、寒暖差、移動時のワクチン接種ストレスなどが原因?。
  • (4)1ヶ月齢〜2ヶ月齢頃の被害。子豚舎の早期に発生。Appワクチンを行っている農場にも発生が多い。この時期の発生にはAppワクチンの子豚接種は効果を出しにくい(接種反応による逆影響もある)。
  • (5)哺乳期間中の被害。生後3日目〜離乳頃に発生。一見App肺炎と判断しにくい。咳き込みが見えない場合も多い。母豚の保菌状態、泌乳状態に1つの要因がある。
  • (6) 母豚、雄豚への被害。体調不良、食欲不振、熱発、早産、流産など。


注意点と対応

  • (1) 早期の診断。従来のApp肺炎の概念では考えられない時期での発生や症状などが見られている。
  • (2) 薬剤に頼り過ぎない。Appはその型や病原性によっては飼料添加薬剤の効果が出にくい。
  • (3) Appのワクチン接種を行っていても安心しない。被害日齢によってワクチンの利用日齢(接種プログラム)が異なる。※要相談。
  • (4) Appのワクチン接種を不用意に中止した農場は要注意。
  • (5) 全体ワクチンプログラムの再チェック。App以外のワクチンプログラムの接種時期や組合せなどによっては発生が助長される場合がある。
  • (6) 種豚群のチェック。雄豚、母豚へのApp感染率が高まっている場合がある。母子感染の防止がカギ。
  • (7) 空間密度(空気密度)と接触回数。子豚舎・肥育舎でのApp被害は、一群の飼養頭数×接触回数×空気密度×洗浄・消毒効果で表されます。

< 初出:ピッグジャーナル 菊池雄一 >

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