冬季の分娩管理の注意点
昨年は猛暑や寒暖差など気候的に厳しい状態が続き、母豚や雄豚の疲労感が重なり、全国的に繁殖成績の悪化が増加しています。特に8月~10月に交配された繁殖豚について、その分娩成績の不安定さが懸念されています。
昨年の8~10月の交配は12月~2月の分娩予定になる群です。この時期の分娩は、昨年の猛暑環境と冬季の寒冷の影響が重なり、繁殖成績の悪化や大きな事故に繋がる危険性があります。
言うまでもなく12月~2月の分娩は6月~8月の出荷に繋がる大変重要なポイントになる時期です。この時期の出荷豚を少しでも多く出せるように分娩舎管理の注意点について考えて見たいと思います。
起こりうる問題点
①食欲の異常。疾病、乳房炎、無乳症(MMA)、環境変化等。
②発熱。疾病、MMA、熱射病、ワクチン副作用等。
③乳房の異常。疾病、乳房炎、減乳症、MMA等。
④子宮、膣の異常。疾病、子宮内膜炎、膣炎等。
⑤糞便の異常。疾病、下痢、便秘、 発熱性、飲水不足、繊維不足等。
⑥尿の異常。細菌性尿路疾患(血尿、石灰尿)、膀胱炎、腎炎、飲水不足等。
⑦異常産。白子、黒子、ミイラ、ウイルス性、細菌性、寄生虫性、秋季流産症候群等。
⑧皮膚、体表異常。腫瘍、皮膚炎(外部寄生虫、細菌性)、発疹(ウイルス性、細菌性)
⑨その他。脱肛、脱膣、子宮脱等。
異常産の原因
①陣痛微弱。 老齢、運動不足、疾病、ストレス、栄養不良等。
②産道狭窄、骨盤狭窄。 先天性:初産に集中、外生殖器の発育不全、膣や陰門の狭窄等。 後天性:早期破水等による産道乾燥、膀胱麻痺による膣前庭部の圧迫等。
③過大胎子。 飼料コントロールの不備等。
④その他。 子宮頚管開大不全、子宮捻転、子宮脱等。
分娩舎の注意点
①分娩直後の低温感作。
②陣痛不足による難産。
③初産、常乳の摂取不足。
④下痢、スス病、浮腫病、連鎖球菌病の関与。
⑤ワクチンストレスは寒冷時に受けやすい。
分娩舎管理のポイント
①母豚と子豚が唯一接触する重要な場所。
②丈夫な子豚を多く生んで、多く育てる事が求められる。
③分娩舎への導入は予定日の1週間前には行う。 事前の慣れが重要。
④犬座姿勢のチェック。発見したらなるべく立たせる。座りっぱなしの姿勢は肢の弱化、子宮筋肉の劣化を招く。
⑤分娩の総時間や分娩間隔(癖)のチェック。分娩の総時間や間隔の延長は、白子の発生、胎児の窒息、羊水の誤燕、分娩時の仮死状態、脳神経障害、母豚の熱発、乳房炎、泌乳力の低下等が起こりやすくなる。 ※種豚系統や成績毎による農場毎のデータ蓄積が重要。
⑥体温の計測(朝一番)。健康状態の体温把握が重要。
⑦食下量のチェック。飲水状態、飼槽、こぼし餌、残餌等。
⑧飲水のチェック。新鮮な飲水の給与と飲水量の確保。
⑨飽食量の確保。系統能力、体型、子豚の数、子豚の大きさ等により判断が重要。
1日10kg以上の飼料を食い込む母豚も存在する。
⑩初乳と常乳の重要性。母豚から産生される初乳と常乳は市販のワクチンとは比べものにならないほどの免疫群が集約されている。
⑪2つの温湿度管理。母豚側、子豚側両方の適温管理が求められる。保育ボックスの存在は夏季、冬季とも有効。
⑫分娩時の看護管理。(ドライパウダー、布生地、分娩シートなどの利用による体表面の拭き取り、分割授乳の実践、里子技術の利用など)