管理プログラムの変更(特にワクチンについて)

 寒い季節から春へと季節が変化するとき、管理プログラムの変更を行う農場が見られます。変更の目的は、農場で発生する疾病の変化やコストへの対応など多岐にわたります。今回はその管理プログラムの中でも疾病対策には欠かせないワクチンについて、注意点や特性について考えたいと思います。

 

何故ワクチンを使用するのか

 

①大切な豚が病気にならないための予防。

②ポジティブリスト、トレーサビリティー、ハセップ(HACCP)などにより、抗生物質に対する考え方が変わり、以前のようには薬剤を使えなく(使わなく)なった。

③養鶏場なみの多頭飼育が余儀なくされ、治療では追いつけない疾病の多様化が促進。

④ウイルス性疾病の増加

 

本当の目的とは

 

①ワクチンを使うこと自体が目的になっている農場は多い。でも、それが正解でしょうか?

②実際は使用後の成果(生産性、収益性)が重要。

③”費用対効果”が重要。

④不必要且つ間違ったワクチン接種が新たな問題を生むこともある。

 

ワクチンの注意点

 

ワクチンプログラムは多彩で農場毎に多種多様化しています。それぞれの現場に

合ったワクチンプログラムの選択が重要になります。

 

①大小はあるがワクチンには副反応が存在する。特に疾病感染中や体調不良時の接種は注意すること。

②使用(採用)するワクチンの特徴と使用(採用)目的を良く理解する。

③同時期や近い日齢で接種される他のワクチンや抗生物質を確認、検討する。

④ワクチン接種の前後期間で行う管理作業について確認、検討する。

⑤未経産豚(交配前)へのワクチン接種を忘れない。(必要最低限)

⑥♂豚へのワクチン接種を忘れない。(必要最低限)

⑦分娩前の母豚にワクチン接種が集中し過ぎないプランも必要。

集中しやすいもの:AR・Pmワクチン、SEワクチン、大腸菌ワクチン、Appワクチン、SEPワクチン、PCV2ワクチン、PRRSワクチン、ADワクチン、TGEワクチン、PEDワクチン、駆虫薬など。

   

生ワクチンの特徴

 

①生きたウイルス及び細菌を弱毒化し製品化。

②豚丹毒生ワクチンは薬剤との併用が出来ない。

③接種針や接種時の消毒(アルコール、逆性石鹸、ヨード系、塩素系など)にも注意が必要。

④免疫応答(抗体上昇)が早い。

⑤移行抗体の影響を受けやすい。

⑥生ワクチンの使用が効果的な疾病がある。日本脳炎(JE)、豚パルボ(PPV)など。

⑧ワクチンによっては株の変異、副反応も出現。

 

不活化ワクチンの特徴

 

①ウイルス及び細菌、マイコプラズマを不活化(死菌化)して製品化。

②薬剤との併用が可能である。

③接種針や接種時の消毒(アルコール、逆性石鹸、ヨード系、塩素系など)の影響を受けづらい。

④移行抗体の影響を受けにくい。

⑤生ワクチンと組み合わせる接種方法。L-K方式など。免疫の強化(高く、持続性の良い免疫の付与)が可能。

⑦ワクチン株の変異などの心配はない。

⑧使用しているアジュバントの性能がカギ。

⑨オイル系アジュバント:効果の持続が長い。しかし、局所反応や副反応は強く表れることがある。

⑩水性アジュバント:オイル系アジュバントと違い、局所反応、副反応などは少ない。しかし、免疫の上昇と持続性はオイル系アジュバントと比べると短い。

⑪多種類を混合したワクチン、毒素を含んだものなど、今まで不可能だったワクチンの開発が可能。

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