食品衛生法(HACCPの制度化)と罰則
食品衛生法の改正でHACCPの制度化が開始しますが、ネット上では、HACCPの制度化について誤解がある印象があります。様々なサイトで、HACCP制度化に対応できていない=即罰則(罰金、懲役)と結びつくように不安をあおるかのような印象を受けるものが見受けられます。しかし、実際には、罰則規定はこれまでと同様にあるものの、罰則規定の適用について、これまでの制度から変更はありません。厚生労働省が示している解説資料(参照1)では、以下のような文言があります。
罰則の適用については、これまでの制度から変更はありません。通常は、以下のような流れになります。
• 衛生管理の実施状況に不備がある場合、まずは口頭や書面での改善指導が行われます。
• 改善が図られない場合、営業の禁停止等の行政処分が下されることがあります。
• 行政処分に従わず営業したときは、懲役又は罰金に処される可能性があります。
つまり、まずは改善指導があり、それに対して少しも改善が図られず、人の健康被害につながる可能性が高いと判断された場合のみ、罰則規定が適用されるということです。
ただ、食品衛生法の施行にあたり、各都道府県でそれぞれ要件や罰則規定等を定めることができるため、そちらに関しては、各都道府県の保健所などにご相談いただければ思います。
食品衛生法の改正は、決して食品事業者に対して不利益をもたらすためのものではありません。日本の基準を国際基準に適合させて、国際的な競争力を図ることが大きな目的です。保健所や様々な外部機関の指導をよく聞き、自分の施設の状況を見直して、自信を持って安全な食品を提供できるようにしていきましょう。
※以下は参考ですが、食品衛生法の罰則の一部を抜粋してみました(食品衛生法第十一章の第七十一条から第七十九条に罰則規定が書かれています)。
第十一章 罰則
第七十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、これを三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
一 第六条(第六十二条第一項及び第二項において準用する場合を含む。)、第九条第一項又は第十条(第六十二条第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
二 第七条第一項から第三項までの規定による禁止に違反した者
三 第五十四条第一項(第六十二条第一項及び第三項において準用する場合を含む。)の規定による厚生労働大臣若しくは都道府県知事(第六十六条の規定により読み替えられる場合は、市長又は区長。以下この号において同じ。)の命令若しくは第五十四条第二項(第六十二条第一項及び第三項において準用する場合を含む。)の規定による内閣総理大臣若しくは都道府県知事の命令に従わない営業者(第六十二条第三項に規定する食品を供与する者を含む。)又は第五十五条(第六十二条第一項及び第三項において準用する場合を含む。)の規定による処分に違反して営業を行つた者
○2 前項の罪を犯した者には、情状により懲役及び罰金を併科することができる。
以上の文章だけではわかりづらいと思いますが、具体的に解説をすると以下のようになります。
第七十一条
一 人の健康を損なう可能性がある食品又は添加物を販売などする行為(乳幼児用おもちゃやそれに使う添加物、食品の洗浄に使う薬剤を含む)や疾病が認められる家畜等を使用する行為、承認されていない食品添加物(おもちゃに使う添加物も含む)を使用する行為をした場合
二 新たに販売される食品で安全性が確認できていないものや、一般的に販売されている食品であって問題が発見されたもの等に対して厚生労働省等が判断し販売禁止にすることがあるが、それを破って販売した場合
三 危険性や問題がある食品の廃棄などの命令を守らなかった場合、そして、食品、添加物、器具又は容器包装に関しては、公衆衛生に危害を及ぼすおそれがある虚偽の又は誇大な表示又は広告をしていた場合にそれらの除去のための指示を守らなかった場合、営業禁停止処分を守らずに営業した場合
以上の罪を犯した者に刑事手続きに基づき、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処することができる。
他の条文も理不尽なことが書いてあるわけではなく、明らかに問題である行為について罰則規定が設けられています。食品衛生法の条文(参照2)ではもっと詳しく書かれているため、法律を正しく理解するためにも、ぜひ一読をお勧めいたします。
・参照1
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000595368.pdf
・参照2
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000233#95
『食品コンサルティング』については、こちらをご確認ください。
→