ミロサマイシン・タイロシン (みつばちの腐蛆病を予防する抗生物質)
ミロサマイシン・タイロシンは、みつばちの「腐蛆病(ふそびょう)」を予防する目的として主に用いられている抗生物質です。
~みつばちの腐蛆病とは?~
腐蛆病はみつばちの幼虫や蛹が細菌感染によって侵される疾病です。この病気にはアメリカ腐蛆病とヨーロッパ腐蛆病という二つの病気が含まれます。人への感染はありませんが、どちらも家畜の法定伝染病(※)として定められています。
〇アメリカ腐蛆病
原因菌:グラム陽性の有芽胞桿菌であるアメリカ腐蛆病菌(Paenibacillus larvae)
アメリカ腐蛆病原菌が1~日齢の幼虫に経口感染することによって起こり、敗血症死を引き起こします。発症までに時間がかかり、蛹になるために幼虫の部屋(巣房)にふたがされた後に死亡することが多いです。3齢幼虫以降に病原菌を摂取しても発症することはありませんが、幼虫や蛹が存在する期間はいつでも発生する危険性があります。
〇ヨーロッパ腐蛆病
原因菌:グラム陽性槍先状レンサ球菌のヨーロッパ腐蛆病菌(Melissococcus plutonius)
ヨーロッパ腐蛆病は、ヨーロッパ腐蛆病原菌に汚染されたミツ・花粉などがミツバチの幼虫に給餌されることで感染します。発症はアメリカ腐蛆病より早く、巣房にふたが掛けられる前に死亡することが多いです。
※法定伝染病:家畜の伝染性疾病の発生の予防やまん延の防止のため、家畜伝染病予防法において具体的に定められている伝染性疾病のこと。感染を確認したら近くの家畜保健衛生所に届け出る必要があります。
~予防策~
腐蛆病対策として最も有効なのは、春先にミロサマイシンやタイロシン等の抗生物質を使用することです。使用の際には、はちみつに抗生物質が残留しないように用法・用量・貯蜜を除去等、使用方法を守って使用する必要があります。
※ミロサマイシンは従来品の「アピテン」に含まれていましたが、現在は製造販売が中止されており、代替品としてタイロシンが含まれている「タイラン水溶散」が販売されています。
~ミロサマイシン・タイロシン検査のご紹介~
弊社では、はちみつのミロサマイシン・タイロシン検査を行っております。
はちみつの残留基準値はミロサマイシンが0.05ppm、タイロシンが0.2ppmとなっております。養蜂を行っている方は、使用した抗生物質に合わせてぜひご活用下さい。
また、はちみつを取り扱っている業者の方もぜひご検討ください。
~参考文献~
1.ミツバチにおける病気の種類と管理方法:一般社団法人
日本養蜂協会
2. 家畜の監視伝染病 腐蛆病:農研機構 動物衛生研究部門