DNAウイルスとRNAウイルスの違いを解説|その1:DNAウイルスとは

DNAウイルスとは

遺伝物質の違い
遺伝物質がデオキシリボ核酸(DNA)でできています。DNAは二重らせん構造を持つことが多く、安定性が比較的高い傾向にあります。
複製方法の違い
宿主細胞の核内で複製を行います。DNAウイルスは宿主のDNAポリメラーゼを利用して自らのDNAを複製します。
 

DNAウイルスの増殖方法

 
ウイルスの増殖
 
【付着】
ウイルスは宿主細胞表面に存在する特定の受容体に結合します。
 
【侵入】
受容体と結合したウイルスが宿主細胞内に侵入します。この際、エンベロープを持つウイルスは膜融合によって、エンベロープを持たないウイルスはエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれます。
 
【脱殻】
ウイルスのカプシドが分解され、ウイルスゲノムが宿主細胞の核に輸送されます。ここで、ウイルスDNAが自由になります。
 
【複製・転写と翻訳】
宿主細胞のDNAポリメラーゼを利用してウイルスDNAが複製されます。また、ウイルスゲノムからmRNAが転写され、これが宿主のリボソームに翻訳されてウイルスのタンパク質(カプシドやその他の構造タンパク質)が合成されます。
 
【組み立て、成熟】
新たに合成されたウイルスゲノムとタンパク質が集まり、新しいウイルス粒子が形成されます。
 
【放出】
完成した新しいウイルス粒子が宿主細胞から放出されます。
 
 

ゲノムの形状と種類

直鎖状DNAウイルス

直鎖状のDNAを持ち、ゲノムサイズは数千塩基から数万塩基になります。
主に1本鎖(ss)DNAウイルスと2本鎖(ds)DNAウイルスに分類され、2本鎖DNAウイルスの方がゲノムサイズが大きい傾向にあります。
 

1本鎖(ss)DNAウイルス

複製の過程
複製時に2本鎖の中間体が形成され、そこから新しい1本鎖DNAが合成されます。
校正機能
宿主細胞のDNA依存性DNAポリメラーゼの校正機能を利用すします。
が、一度中間体を挟んでからの複製が開始されるため、2本鎖DNAウイルスと比べ複製エラーは発生しやすい傾向にあります。
 
ウイルス例
パルボウイルス
 
 

2本鎖(ds)DNAウイルス

複製の過程
複製時にはウイルスの持つ2本鎖から直接複製(細胞の遺伝子複製と似ている)が開始されます。
校正機能
宿主細胞のDNA依存性DNAポリメラーゼの校正機能を利用します。
 
ウイルス例
アデノウイルス、ポックスウイルス
 

逆転写DNAウイルス

逆転写酵素を持つウイルスで、一度自らのゲノムをRNAに転写し、それを鋳型にしてから増幅する特徴を持ちます。
RNAへの転写を挟むことにより、高いエラーレートを持ち、突然変異率が上昇します。
結果、宿主の免疫などに対する高い耐性獲得率を持つという生存戦略がとれるようになります。
ウイルスの例としてはB型肝炎ウイルスがあげられます。
 
 

環状DNAウイルス

環状のDNAを持つウイルスで、ゲノムサイズは直鎖状よりも比較的小さく、数千塩基程度です。
直鎖状と同様に1本鎖と2本鎖分類され、直鎖DNAよりも構造的に安定しており、分解されにくい事が特徴です。また、末端が存在しないため、※末端複製問題も発生しないというメリットがあります。
 
末端複製問題とは
DNAポリメラーゼによって5‘から3’方向へ進行するDNAの複製において、リーディング鎖は連続して複製されるもののラギング鎖は岡崎フラグメントとして不連続に複製されます。これにより、線状のゲノムDNAの末端部分が正常に複製されない可能性があることを末端複製問題といいます。
 

環状1本鎖と環状2本鎖DNAウイルス

複製の過程と校正機能
環状DNAウイルスの複製方法は、バクテリアの染色体複製と似たシータ型とプラスミドの複製にみられるローリングサイクル型に分かれます。
校正機能については直鎖状DNAの特徴とほぼ同じです。
 
ウイルスの例としては環状1本鎖DNAウイルスの場合はサーコウイルス、環状2本鎖DNAウイルスはパピローマウイルス、ポリオーマウイルスがあげられます。
 
ウイルスそのものについてはこちら
>>DNAウイルスとRNAウイルス ―その0:ウイルスとは―
 
RNAウイルスについてはこちら↓
>>DNAウイルスとRNAウイルス ―その2:RNAウイルスとは―
 
 

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