乳酸菌検査における培地の選び方:BCP加プレートカウント寒天培地とMRS寒天培地の違い
目次
乳酸菌の検査はなぜ重要?
乳酸菌はヨーグルトや発酵食品に欠かせない有用菌ですが、その数を正確に把握することは品質管理の基本です。適切な乳酸菌数は、製品の風味や保存性に直結します。一方で、乳酸菌は食品の変敗原因菌として問題になることもあります。たとえば、清涼飲料や惣菜など本来発酵を必要としない食品に混入すると、酸を生成してpHを低下させ、膨張や異臭を引き起こします。こうしたトラブルを防ぐためにも、乳酸菌の検査は欠かせません。
ここで重要になるのが、どの培地を使ってカウントするかという選択です。代表的なのがBCP加プレートカウント寒天培地とMRS寒天培地。両者は似ているようで、目的と結果が大きく異なります。
BCP加プレートカウント寒天培地とは?
BCP(ブロモクレゾールパープル)を加えたプレートカウント寒天培地を用いると、一般生菌数の中にどれくらい酸生成菌が存在するのかを知ることができます。BCPはpH指示薬で、酸を産生する菌はコロニー周囲を黄変させます。そのため、酸を作る菌=乳酸菌を推定できるという利点がありますが、厳密には乳酸菌専用ではありません。他の酸生成菌(酵母や一部の芽胞菌)も黄変するため、あくまで「酸生成菌の目安」として使います。
MRS寒天培地とは?
MRS(de Man, Rogosa, Sharpe)寒天培地は、乳酸菌の分離・計数に特化した培地です。糖源やビタミン、酵母エキスが豊富に含まれ、乳酸菌の増殖を促進します。また、pHが低めに調整されており、他の雑菌が増えにくいのが特徴です。好気条件でもある程度増えますが、嫌気培養を組み合わせることで、より乳酸菌特異的なカウントが可能になります。
使い分けのポイント
BCP加プレートカウント寒天培地 (好気培養)
- 発酵乳や乳酸菌飲料など、乳酸菌以外の菌がほぼ存在しない場合
- 一般食品における乳酸菌スクリーニングを目的とする場合(精度は低め)
MRS寒天培地 (好気培養または嫌気培養)
- 夾雑菌が存在すると思われる一般食品において、乳酸菌数を正確に評価したい場合
- 嫌気性の乳酸菌数を評価したい場合
最後に
乳酸菌検査では、目的に応じて適切な培地を選ぶことが重要です。今回ご紹介したBCP加プレートカウント寒天培地やMRS寒天培地は代表的な培地ですが、「乳酸菌だけを選択的に生育させる万能培地」は存在しません。そのため、必要に応じて確認試験や菌種同定を組み合わせることが、正確な評価につながります。
弊社では、乳酸菌の定量試験から菌種同定まで幅広く対応しておりますので、検査や品質管理でお困りの際はお気軽にご相談ください。
乳酸菌数の検査のご依頼はこちらから
検査項目 | 乳酸菌数 |
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分析方法 | BCP加プレートカウント寒天培地(発酵乳など) MRS寒天培地(一般食品) |
分析期間 | 3-6 営業日 |
検体必要量 | 25g以上 |
料金(税込) | 2,750 円 |
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検査項目 | 菌種同定 |
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分析方法 | 生化学的性状による菌種同定キット |
分析期間 | 15 営業日 |
料金(税込) | 11,000円/1菌種 |
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