ビタミンEの効能と摂取量

前回のコラムでは、ビタミンEの構造や栄養成分としての扱い方について紹介をしました。今回は、ビタミンEの効能と摂取量について紹介したいと思います。
 

ビタミンEの効能

抗酸化作用

ビタミンEは強い抗酸化作用があり、活性酸素による細胞傷害から体を守る働きをします。生体膜を構成する不飽和脂肪酸が酸化して過酸化脂質に代わるのを防ぐなど、細胞や血管の健康維持、老化予防に効果期待されています。A)また、血中のLDLコレステロールの酸化を防ぐ働きにより、心疾患による死亡率を下げる結果がでています。B)このように、老化予防やさまざまな生活習慣病に効果が出ることが期待されています。
抗酸化作用を有することから、食品添加物の酸化防止剤としても使用されています。

ホルモンバランス調整

ビタミンEは下垂体や副腎系に作用してホルモン分泌の調節に関与するとされています。そのため、更年期などによるホルモンバランスの乱れからくる肩・首すじのこり、冷え、手足のしびれ、のぼせ、月経不順の症状の緩和に効果があるとされています。C) また、最近の研究では、ビタミンEの異性体であるγ-トコフェロールがPMS(月経前症候群)の症状軽減に有効であることが示唆されました。D)

ビタミンEが不足すると E)

ビタミンEは脂溶性ビタミンのため、体内に吸収されるには脂肪が必要です。そのため、ビタミンE欠乏症の場合、脂肪が適切に消化もしくは吸収されない(クローン病や嚢胞性線維症、あるいは無βリポタンパク血症やビタミンE欠損を伴う失調症(AVED))疾患を疑います。
ビタミンE不足の症状としては、抗酸化作用の低下による肌へのダメージや、血液中のコレステロールも酸化しやすくなるため動脈硬化のリスクが高まります。ホルモンバランスの調整も難しくなるため、生理不順や頭痛、肩こりなどの症状もでることが考えられます。
 

ビタミンEの摂取量

ビタミンEの摂取目安量は日本人の食事摂取基準に示されています。F)
 
ビタミンEの食事摂取基準
 
国民の身体の状況、栄養素等摂取量及び生活習慣の状況を調査した「国民健康・栄養調査」の令和元年の結果では、20歳以上のビタミンEの1日あたりの平均摂取量は男性で7.2mg/日、女性で6.6mg/日でした。日本人の食事摂取基準による目安量を超える結果となっています。この結果から、平均的に日本人の一般的な食事ではビタミンEの欠乏症や過剰症は起こりにくいと考えられています。G)

ビタミンEの過剰摂取による問題

上述したように、ビタミンEの過剰症は起こりにくいですが、サプリメントなどによる故意的な過剰摂取による副作用の可能性はゼロではありません。
過剰症の例としては、血が止まりにくくなることや男性ホルモンの分泌を促す作用があるためニキビの悪化などが知られています。また、妊婦が過剰摂取した場合、早期の破水や腹痛のリスクが高まることが指摘されています。また、骨量を減らし、骨粗鬆症のリスクを高める可能性が示唆され、注目されていますH)。
何事も「過ぎたるは猶及ばざるが如し」ですね。とはいえ、バランスのよい食事や栄養摂取を考えることは大切ですが、ビタミンEに関しては、あまり気にせず楽しい食事を心がけていれば、多寡の心配はなさそうです。
 
【引用】
A) Traber MG. Vitamin E. In: Shils ME, Shike M, Ross AC, Caballero B, Cousins RJ, eds. Modern Nutrition in Health and Disease. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkiins; 2006:396-411
B) Lee IM, Cook NR, Gaziano JM, et al. Vitamin E in the primary prevention of cardiovascular disease and cancer: the Women’s Health Study: a randomized controlled trial. JAMA.
C) >>ⅩⅢ 滋養強壮保健薬はこちらから
D) 月経前症候群(PMS)軽減に有用な成分についての研究成果を発表 (大塚製薬)
E) >>厚生労働省eJIM | ビタミンE | サプリメント・ビタミン・ミネラル | 一般の方へ | 「統合医療」情報発信サイトはこちらから
F) >>e-ヘルスネット(厚生労働省)はこちらから
G) >>国民健康・栄養調査|厚生労働省はこちらから
H) >>ビタミンEは骨を減らす? 竹田 秀(腎臓・内分泌・代謝内科) (慶応義塾大学)はこちらから

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