家畜の産褥熱の原因~ゼンメルワイスの教え~

産褥熱とは、分娩の際産道に傷がつき、そこから細菌に感染することで起こる熱性疾患です。産褥熱と聞いて手洗いの先駆者・ゼンメルワイス先生を思い浮かべる方もいるでしょう。そう、あの産褥熱です。
発生の直接的な原因はまず、産道に傷がつくことです。難産、多産、死産であったり、牽引器を使って助産をしたりするとどうしても産道損傷のリスクになり、感染を助長してしまいます。牛においては後産停滞も重要な発生原因のひとつですね。
そして何より、不衛生な環境での分娩・不衛生な助産は言うまでもありません。家畜においてもヒトと同じで、ゼンメルワイス先生の教えを守りましょう。
 
繁殖成績や産まれた子供の成育にも関わってくる疾病ですが、発生機序はまだまだ分かっていない点も多く、完全に予防する事は難しい疾病でもあります。ですので分娩後、経時的に体温を測定したり、陰部の腫れや悪露の状態、エサ食い等をこまめに観察し早期発見・早期治療してあげるのが重要になってきます。ずっと発熱していたら牛だって豚だって苦しいのです。
 
様々な菌が産褥熱の原因となり得ますが、牛や豚においてよく上げられるのがFusobacterium necrophorum、Trueperella pyogenes、Escherichia coliなどです。常在菌なので健康な家畜からも分離されますが、病性鑑定の際の原因菌となる場合はたくさんのコロニーが培地上で発育します。
 
Fusobacterium necrophorum
 
早期治療が母体にとってベストですので、検査結果が出るまでに完治しているケースもあると思いますが、弊社の病性鑑定検査でも上記細菌は分離可能です。併せてディスク法による薬剤感受性試験も実施しておりますので、もし原因菌や抗生剤にお悩みでしたら検討してみてはいかがでしょうか。
 

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