微生物検査におけるオートクレーブ滅菌

微生物検査には欠かせないオートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)ですが、正しく使用しないと滅菌不良を引き起こしてしまいます。今回は滅菌不良を防止するための基本的な対策を簡単にご紹介いたします。
 

①オートクレーブ本体のスペックを知る

オートクレーブの取扱説明書を読んだことはありますか?何年も使っているけど一度も読んだことがない、という方は結構多いのではないでしょうか?本体缶内の水位を確認して、被滅菌物を入れて蓋をして、滅菌条件を設定してSTARTボタンを押す、ほとんどの場合はこれで済んでしまうので、初めて見るオートクレーブでも日常的にオートクレーブ滅菌をしている人であれば取扱説明書を読まなくても簡単に扱えてしまうのです。しかし、取扱説明書には意外と知られていない重要事項が書かれているので、読んだことがない人はぜひ一度読んでみてください。
取扱説明書に書かれている内容の中で最も重要なのは本体のスペック、即ちその機械が一度に滅菌できる被滅菌物の体積および水分量です。機種ごとに定められた上限を超えて被滅菌物を入れてしまうと滅菌効率が低下してしまうのです。いつもと同じ滅菌条件なのに滅菌不良が起きてしまったときは、まず被滅菌物を入れすぎていないかどうかを確認してみてください。被滅菌物が多量の水分のときは、被滅菌物自体の温度上昇が遅れるため、滅菌時間を延長するなどの対応が必要になります。また、液量は容器体積の8割程度にとどめ、密栓しないようにしましょう。
 

②滅菌インジケーターを使用する

【物理的インジケーター】

設定した滅菌条件(温度、時間、圧力)が全て達成されたかどうかをオートクレーブ本体に附属する計器(物理的インジケーター)でモニタリングして記録します。

【化学的インジケーター】

設定した温度まで到達したかどうかを色の変化などで見ることができる滅菌テープが最もよく使われています。経験的に滅菌不良がほぼ起きないことが分かっているときは、安価で使いやすい滅菌テープを被滅菌物に貼るのがお勧めです。「STARTボタンを押し忘れてしまった」、「昇温途中に誤って電源を落としてそのままにしてしまった」、といったようなヒューマンエラーにも対応できます。滅菌テープという名前でも、オートクレーブ用と乾熱滅菌用があるので購入するときは注意してください。また、「〇℃で△分加熱されると色が変化する」といった製品情報などもよく調べて、目的に合った最適なものを選ぶようにしましょう。

【生物的インジケーター】

Geobacillus stearothermophilus (ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス)のような耐熱性細菌の芽胞が入った小さなバイアルがよく使われています。被滅菌物と共にオートクレーブ滅菌した後、バイアルの中の芽胞懸濁液を採取して培養し、その生死を確認することによって正常に滅菌されたかどうかを判断します。「大容量容器に培地を入れてオートクレーブ滅菌したいけど、中心部まで熱がしっかり行き渡るか心配…」、といった場合には、生物的インジケーターを紐で吊るすなどして滅菌する液体の中心部にセットしてオートクレーブ滅菌します。容器や液量の変更に伴い被滅菌物の熱伝導率の低下が予想される状況においては、生物的インジケーターを使用することをお勧めします。特に、粘性の高い液体は滅菌不良が起きやすいので、生物的インジケーターを使用しながら、適切な滅菌容器の選定、滅菌条件の検討を行いましょう。
 
オートクレーブ滅菌については他にも、安全面で注意すべきこと、定期的なメンテナンスの実施、など知っておくべきことがたくさんあります。高度な技術は必要としませんが、微生物検査においては最も重要な工程のひとつですので、オートクレーブ滅菌についてより深く学び、快適な滅菌ライフを送ってみてはいかがですか?
 
オートクレーブの導入・運用方法、培地の滅菌方法などに関して不安を抱えている方は、お気軽に弊社までご相談ください。また、弊社では、食品製造における品質管理検査室の立ち上げのサポートも実施致しております。ご興味がある方はぜひお問い合わせください。
 
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