カンピロバクター食中毒とは?症状や原因食品、潜伏期間を解説
カンピロバクター属菌とは
カンピロバクター属菌とは、鶏や牛といった家畜のようなさまざまな動物が保菌している細菌です。十数種の菌種が知られており、このうちの「カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)」「カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)」が厚生労働省により食中毒菌として指定されています。
引用元:内閣府 食品安全委員会「食中毒菌の電子顕微鏡写真」
カンピロバクター属菌は微好気性菌であり、酸素のない場所では増殖ができません。また、通常の大気下では死滅しやすいですが、酸素濃度が5%〜15%程度かつ、34度〜43度の温度域で活発に増殖をします。
カンピロバクター属菌の特徴として、乾燥や熱に弱く通常の加熱調理で死滅することが挙げられます。そのため、食材を十分に加熱することがカンピロバクター属菌による食中毒を予防する対策になります。
なお、「令和5年食中毒発生状況」では、令和5年の食中毒のうち20.7%はカンピロバクターが原因であるように、食中毒を引き起こす原因として特に注意するべき細菌の1つです。
数百個程度と比較的少ない菌量でヒトへの感染が成立し、季節を問わず1年通して食中毒が発生しているため注意が必要です。
カンピロバクター食中毒の症状
カンピロバクター属菌による食中毒の症状や潜伏期間などは、下記のとおりです。
生息場所 | 動物の腸内や飲料水、生野菜 など |
---|---|
潜伏期間 | 2日〜7日程度 |
発症期間 | 1週間程度 |
食中毒の主な症状 | 発熱、下痢、吐き気、腹痛、頭痛、悪寒、倦怠感 など ※まれにギラン・バレー症候群を引き起こす可能性がある |
食中毒の原因になりやすい食品例 | 鶏肉の生食や加熱が不十分の鶏肉関連食品 など |
カンピロバクター属菌による食中毒の潜伏期間は、2日〜7日程度とほかの食中毒菌よりも長いです。食中毒が発症すると、発熱、下痢、吐き気、腹痛、頭痛、悪寒、倦怠感といった症状がみられます。
通常は1週間程度で症状が回復しますが、まれに手足や顔面の神経麻痺、呼吸困難などを引き起こす「ギラン・バレー症候群」を発症することがあります。
ギラン・バレー症候群とは、感染症などをきっかけに免疫のシステムが異常を起こし、末梢神経を障害してしまう病気のことです。カンピロバクター属菌による食中毒においては、手足や顔面神経の麻痺、呼吸困難などがみられる可能性があります。
カンピロバクター食中毒の事例
カンピロバクター属菌による食中毒は、夏場冬場を問わずに通年発生しています。厚生労働省が公表しているデータを参考にすると、令和元年〜令和5年のカンピロバクター属菌による食中毒の患者数と死者数は下記のとおりです。
患者数 | 死者数 | |
---|---|---|
令和5年 | 2,089人 | 0人 |
令和4年 | 822人 | 0人 |
令和3年 | 764人 | 0人 |
令和2年 | 901人 | 0人 |
令和元年 | 1,937人 | 0人 |
参照元:厚生労働省「食中毒統計資料」
カンピロバクター属菌による食中毒は少ない菌量でも発症するリスクがあり、令和元年〜令和5年の統計をみてもわかるように、毎年数百〜数千もの人が発症をしています。
ここからは、実際に起きたカンピロバクター属菌による食中毒の事例を2つ紹介していきます。
沖縄県の飲食店で提供された牛ステーキや鶏レバーなどが原因の食中毒事例
2024年12月20日、沖縄県宜野湾市の飲食店で食事をした20〜50歳代の10人が下痢や発熱、腹痛などの症状を訴えました。症状がみられた人たちは、この飲食店で提供された鶏レバーや牛ステーキなどを食べていたとのことです。
検査の結果、7人の便からカンピロバクターが検出されたとのことです。患者は全員回復しており、当該飲食店は1月2日から6日まで5日間、営業停止処分となっています。
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宮城県の飲食店で提供された鶏レバーなどが原因の食中毒事例
2024年12月29日、宮城県仙台市の飲食店で食事をした男女3人が発熱や下痢の症状を訴えました。検査の結果、患者の便からカンピロバクターが検出されたことで食中毒と断定されました。
市は当該飲食店で提供された鶏レバーのニラ炒めなどが原因となった可能性があるとしています。飲食店は1月7日から3日間の営業停止処分となっています。
カンピロバクター食中毒の発生時期
カンピロバクター属菌による食中毒は、年間を通じて発生しています。厚生労働省が公表している統計を参考にしたところ、カンピロバクター属菌による食中毒の発生時期について下記のような結果となりました。
参照元:厚生労働省「食中毒統計資料」
厚生労働省が公表している令和5年のデータでは、6月と7月にカンピロバクター食中毒が多く発生していることがわかります。
とはいえ、通年発生するリスクがあり、夏場だけでなく冬場もカンピロバクター属菌による食中毒が起こる可能性があるため注意が必要です。
カンピロバクター食中毒の原因食品や発生場所
カンピロバクター属菌による食中毒は、主に鶏肉の生食や加熱が不十分の鶏肉関連食品が原因食品となります。そして、多くは飲食店が発生場所になりやすいですが、ほかの場所でもカンピロバクター属菌による食中毒が起きる可能性はあります。
厚生労働省が公表している令和5年の統計データを参考にすると、カンピロバクター属菌による食中毒の発生場所には下記がありました。
- 飲食店
- 保育所や事業所などの給食施設
- 老人ホーム
- 旅館
カンピロバクター属菌は、鶏や牛といった家畜のようなさまざまな動物が保菌している細菌であるため、家庭でも起きる可能性は否定できません。予防法を実施して食中毒にかかるリスクを抑えるように心がけましょう。
カンピロバクター食中毒の予防法
カンピロバクター属菌による食中毒の予防法には、下記が挙げられます。
- 鶏肉や豚肉などの食肉を調理する際は十分に加熱する
- 食肉を触った後は必ず手を洗う
- 食肉を扱かった調理器具や食器はよく洗浄して乾燥させる
カンピロバクター属菌による食中毒は、主に食肉が原因食品になります。そのため、食中毒を予防するためには、食肉の取り扱いに十分な注意が必要です。
なお、弊社ではカンピロバクター・ジェジュニ/コリの検査を取り扱っております。
検査をご希望の方や、お悩みのある方はお気軽にお問い合わせ下さい。
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鶏肉や豚肉などの食肉を調理する際は十分に加熱する
カンピロバクター属菌は加熱に弱い特性があります。そのため、原因食品になりやすい鶏肉や豚肉、牛肉などの食肉を調理する際は、十分に加熱をしておきましょう。
目安としては中心温度が75度で、1分以上加熱することでカンピロバクター属菌を死滅させられます。
食肉を触った後は必ず手を洗う
カンピロバクター属菌による食中毒を予防するためには、二次汚染を防止することも大切です。
原因食品になりやすい食肉を触った際には必ず手を洗い、ほかの食材や食器などに汚染が拡がらないようにしましょう。
食肉を扱かった調理器具や食器はよく洗浄して乾燥させる
カンピロバクター属菌による食中毒の二次汚染を防ぐためにも、食肉を扱った調理器具や食器の取り扱いにも注意が必要です。
使用した調理器具や食器はすみやかに洗浄し、十分に乾燥させておきましょう。
まとめ
カンピロバクター属菌はさまざまな動物が保菌しており、主に鶏肉や豚肉といった食肉が原因食品になります。通年で食中毒が起きており、食中毒が起きた場合には「発熱」「下痢」「吐き気」「腹痛」「頭痛」「悪寒」「倦怠感 」といった症状がみられます。
まれではありますが、手足や顔面の神経麻痺、呼吸困難などを引き起こす「ギラン・バレー症候群」を発症することもあるため、カンピロバクター属菌による食中毒には十分な注意が必要です。
加熱や乾燥に弱い特性があるため、カンピロバクター属菌による食中毒の予防法として食肉を調理する際には十分に加熱することが有効です。また、「食肉を扱った後は手洗いを徹底する」「調理器具や食器はよく洗浄して乾燥させる」といった予防法も実施するようにしましょう。