定量分析の実際②|機械にかけるだけで分析値が得られる訳じゃない。

はじめに

みなさまが食品や生体試料中の特定の成分の濃度を知りたいとき、弊社のような検査機関は定量分析を行い、含まれる濃度を決定して検査結果としてお届けします。
「分析」と聞くと、機械のボタンを押せば自動的に結果が得られるようなイメージを持たれるかもしれません。ですが、より正確な分析値をお届けするためには、意外と多くの地道な過程があります。いつもみなさまご利用いただいている定量分析がどのように成り立っているのか、4つのテーマでご紹介いたします。
 
第2回は、分析値を決定するしくみについてです。
 
弊社の定量分析は、基本的に以下の過程で行われます。
1.標準物質という純粋な用意して、それらを再現性良く測定可能な状態にする。
2.標準溶液と呼ばれる濃度基準となる溶液を測定して、検量線を作成する。
3.検体から得られた溶液を測定して、結果を検量線に当てはめて、濃度を算出する。
 

①標準物質を測定可能に

定量分析の測定機器は、特定の物質をはじめから測定できる訳ではありません。まず、目的とする化合物を測定可能な状態に開発することから始めます。標準物質という高純度の目的化合物を用意して、測定機器において、その化合物に最適な条件を設定することで、はじめて検出することが可能になります。
弊社で広く使用される高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の測定原理では、測定する溶液中の化合物の量が、電気的な信号へ変換されます。信号の集合によって下図のようなピークが描画され、その面積が大きいほど検出された化合物の量が多いことを表します。うまく条件設定することで、同時に複数の化合物を測定することもできます。
 
標準物質を測定可能に
 

②標準溶液を測定して検量線を作成

測定機器の条件を構築できました。次は、「検量線」についてです。
①で登場した標準物質は純度が証明されています。これを水や有機溶媒に任意の濃度で溶解させることで既知濃度の溶液(=標準溶液)を調製することができます。これを数点調製して、それぞれを測定すると、濃度ごとのピーク面積を知ることができます。例えば、濃度が1のときピーク面積が約5,000であれば、濃度が10のときピーク面積は約50,00といった具合で、基本的には濃度とピーク面積は比例関係になります。
横軸に標準溶液の濃度、縦軸にピーク面積をとったときに、グラフは直線になります。この直線を「検量線」といい、定量分析において、濃度の基準となる”ものさし”のような役割を持ちます。
 
標準溶液を測定して検量線を作成
 

③検体を測定して分析値を決定

検量線を作成したら、いよいよ検体の測定に入ります。検体は血漿や組織といった生体試料や、生鮮食品、加工食品など多岐にわたります。これらの検体試料から目的化合物を抽出、余計な成分は排除することで、②で測定した標準溶液と同じような状態を作り出し、得られた溶液を測定してピーク面積を求めます。検体試料由来のピーク面積を検量線に当てはめることで検体の濃度を決定することができます。これが私たちが皆さまにお届けしている分析値の正体です。
 
検体を測定して分析値を決定
 

おわりに

定量分析において分析値を決定するしくみを解説いたしました。検量線を濃度の基準として扱い、検体を決定するという過程は毎回正確に行われる必要があります。第3回では、検体から目的化合物を抽出して、標準溶液に近い状態の溶液を作製する方法についてご紹介いたします。
 
 

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