豚赤痢の症状と原因を徹底解説!早期発見・早期治療で被害を最小限に抑える

「豚赤痢」は、家畜伝染病予防法における豚やイノシシの届出伝染病に指定されている疾病の一つである。品種・性別に関係なく、離乳後の肥育豚での発生が多い。病原体を保因する豚の導入をきっかけに、集団的に発生することが多く、一度常在化すると根絶は難しいとされている。死亡率は5%程度と高くはないが、発育遅延および飼料効率の低下をもたらすため、その経済的損失は大きい。
 
病原体については、Brachyspira hyodysenteriae [B.hyodysenteriae] で、長さ7~10μmのグラム陰性らせん状菌で、嫌気条件下でのみ発育をし、活発な運動性も示す。感染様式は、発症豚および保因豚が排泄した糞便を直接・間接的に摂取する経口感染があげられている。潜伏期間は1~2週間で、発症率は高い。
 
主な臨床症状として、感染すると元気消失、食欲減退から始まり脱水、体重減少、発育遅延を起こし、死亡することもある。発症極期には、豚赤痢の特徴である粘血下痢便を排泄する。便の性状は、初期には灰黄色の軟便から泥状便、その後粘液・血液・剥離した粘膜上皮が混じった下痢便へ変化していく。被毛は汚れ光沢がなくなり、発育はほとんど停止する。
病変は盲腸、結腸および直腸に限局しており、腸間膜リンパ節は腫脹する。大腸壁と腸間膜は充血や水腫が見られる。粘膜面では暗赤色を呈し出血が認められ、粘膜の表面には血液が混じった粘液の増量がみられる。
組織病変については、最初に粘膜が肥厚し、表層上皮が壊死・剥離する。大腸粘膜面での強い充出血のほかに、粘膜への滲出液・粘液の付着が認められる。また小潰瘍や偽膜の形成がみられることもある。陰窩では消費細胞の過形成、陰窩腔の拡張と杯細胞から分泌された粘液の充満がみられる。上皮細胞のWarthin-Starry(ワーチン・スターリー)染色では、B.hyodysenteriaeが粘膜表面や陰窩腔、杯細胞などの上皮細胞に確認される。固有層では白血球浸潤を伴い肥厚がみられる。
 
診断としては、主に以下の3点によって判断されている。
(1) 新鮮便または大腸粘膜乳剤を用いて血液寒天培養をする
(2) 37℃で4~6日間嫌気培養を行い、β溶血を認める。
(3) 直接暗視野にて観察し、スピロへータを確認する。
β溶血の確認については、赤痢症状を呈するサルモネラ症や壊死性腸炎疾病との類症鑑別において重要とされている。
原因菌の分離については、発症豚の糞便や病変部大腸粘膜を材料とし、血液寒天培地に抗生物質を添加した選択培地(BJ培地またはCVS培地)を用い、37℃で4~6日間嫌気培養を行う。分離菌は純培養後、溶血性の強弱の観察、インドール産生試験や酵素基質などによる生化学的性状試験。PCRを行ない、菌種の同定を行う。
 
予防・治療については、(1)感受性抗生物質による治療、(2)部外者の立ち入り禁止、(3)資材の持ち込み時は消毒の徹底などがあげられている。
予防については、導入豚の隔離飼育と有効薬剤の投与、オールイン・オールアウト方式による飼養環境の清浄化が有効であり、常在化防止に役立つとされている。
治療では、チアムリン、バルネムリン、リンコマイシン、タイロシンが治療薬として国内で認可されている。しかし、全ての薬剤で耐性菌分離率の上昇が確認されているため、治療前に感受性試験を実施する必要がある。
 
 

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